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父親の遺産を相続するための「認知」の方法

初めに

婚姻関係にない男女の間に生まれた子について、父との法律上の親子関係を成立させるために重要となるのが「認知」です。

民法では「嫡出でない子」という表現が使われていますが、父から認知を受けることで法律上の父子関係が成立し、父が亡くなった際には、その子も父の相続人となることができます。

認知には、父が自ら行う「任意認知」と、父が認知に応じない場合などに裁判手続きを利用する「裁判による認知」があります。

また、父は生前の届出だけでなく、遺言によって子を認知することもできます。

任意認知

届出によって認知する場合

生前に認知する場合には、市区町村へ認知届を提出します。

父が実際に子を養育していたり、周囲に「自分の子だ」と説明していたりするだけでは、通常、それだけで戸籍上の認知が成立するわけではありません。法律上の父子関係を明確にするためには、所定の認知手続きを行うことが重要です。

なお、一定の場合には、父母が提出した嫡出子出生届が認知届としての効力を持つことも戸籍法に定められています。

ただし、どのような出生届でも認知届の代わりになるわけではないため、「父として出生届を出せば必ず認知になる」と一般化しないよう注意が必要です。

また、認知される子がすでに成年に達している場合には、その子本人の承諾が必要です。胎児を認知する場合には母の承諾が必要とされています。

遺言によって認知する場合

父は、生前に認知届を提出するだけでなく、遺言によって子を認知することもできます。

ただし、すでに第三者が取得した権利を害することはできません。

遺言による認知では、死亡後に戸籍上の届出を行う必要があります。戸籍法第64条では、遺言執行者が就職した日から10日以内に、認知に関する遺言書の謄本などを添えて認知の届出をすることが定められています。

そのため、遺言で認知するのであれば、あらかじめ遺言執行者を指定しておくと手続きを進めやすくなります。ただし、遺言書で遺言執行者を指定していなければ認知そのものが当然に無効になるわけではありません。遺言執行者がいない場合には、利害関係人の申立てによって家庭裁判所が遺言執行者を選任することができます。

成年の子を遺言で認知する場合にも本人の承諾が必要であり、胎児認知の場合には母の承諾が必要です。

裁判による認知

父が任意に認知しない場合には、子などが裁判手続きを利用して法律上の父子関係を成立させる方法があります。

父が生存している場合には、原則としてまず家庭裁判所の認知調停を利用します。

調停で父子関係について合意ができ、家庭裁判所が必要な事実を調査したうえでその合意を相当と認めれば、合意に相当する審判によって認知が成立します。調停で合意できない場合には、認知の訴えによって父子関係を争うことになります。

子本人に意思能力があれば、自ら認知の訴えを提起することができ、法定代理人の同意を得なければ本人が訴えられないというものではありません。また、法定代理人も一定の場合には子を代理して手続きを行うことができます。

父が死亡した後でも認知を求められる

父が認知しないまま死亡した場合でも、一定期間内であれば「死後認知」を求めることができます。

父の死後に認知の訴えを提起する場合には、亡くなった父本人を被告にすることはできないため、手続上は検察官を被告として訴訟を進めることになります。父の生存中の認知請求とは手続きが異なるため、父が亡くなっている場合には3年の期間を特に意識する必要があります。

認知が裁判によって確定した場合にも、父子関係は原則として出生時にさかのぼって成立します。認知の確定判決は人事訴訟法上、当事者だけでなく第三者にも効力が及ぶため、ほかの相続人との関係でも、その父子関係を前提として相続関係を整理することになります。

父の死後に認知された場合、遺産分割をやり直すとは限らない

認知によって父との法律上の親子関係が成立すると、父の相続についても相続人となります。しかし、父の死亡後に認知された時点で、ほかの相続人がすでに遺産分割を終えている場合には注意が必要です。

民法第910条では、相続開始後の認知によって新たに相続人となった人がいる場合に、ほかの共同相続人がすでに遺産分割や財産の処分をしているときは、認知された人は原則として遺産分割そのもののやり直しを求めるのではなく、自分の相続分に相当する「価額」の支払いを請求することが定められています。

たとえば父の死亡後、長男と長女だけで遺産分割を終え、その後に別の子について死後認知が確定した場合、認知された子が当然に自宅不動産の共有持分を取得して、すでに終わった遺産分割を一からやり直すとは限りません。

すでに分割が行われている場合には、民法第910条に基づき、他の共同相続人へ相続分に相当する金銭の支払いを求めることになります。

そのため、父が認知しないまま亡くなった場合には、「3年以内なら認知を求めればよい」とだけ考えるのではなく、父の遺産分割が現在どこまで進んでいるのかも確認することが重要です。

どの認知方法を選ぶべきか

父が認知する意思を持っているのであれば、一般的には生前に認知届を提出しておく方法が最も分かりやすいでしょう。父子関係が生前から明確になるため、父が亡くなった後に認知の有無をめぐって相続人同士が争うリスクを減らすことができます。

また、生前に認知されれば、父は法律上の親として扶養義務を負うことになります。そのため、子が未成年である場合などには養育費の負担について協議や家庭裁判所の手続きを行うことも可能になります。

ただし、認知を受けたからといって一定額の養育費が自動的に支払われるわけではなく、具体的な金額や過去分の取扱いについては個別に決める必要があります。

父が生前には認知したくない事情があるものの、死亡後には法律上の子として扱いたいと考えている場合には、遺言による認知を検討できます。一方、父が認知そのものを拒んでいる場合には、子側から認知調停や認知の訴えを検討することになります。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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