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遺言書に記載のない財産の扱い

初めに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

遺言書に記載のない財産が見つかったとしても、通常は遺言書全体が無効になるわけではありません。

遺言書に記載されている財産については、原則として遺言書の内容に従って相続手続きを進めます。

一方で、遺言書に記載されていない財産については、遺言書で承継先が指定されていないため、相続人全員による遺産分割協議が必要になることがあります。

また、協議がまとまらない場合は、法定相続分を基準に考えることになります。

さらに注意が必要なのは、遺言書に記載されていない財産が、借金やローンなどのマイナス財産だった場合です。

遺言書に記載のない財産があると遺言書は無効になるのか

記載漏れがあっても遺言書全体が無効になるわけではない

遺言書に一部の財産が書かれていなかったとしても、それだけで遺言書全体が無効になるわけではありません。

たとえば、遺言書に自宅不動産とA銀行の預金について記載があり、B銀行の預金口座について記載がなかったとします。

この場合、自宅不動産とA銀行の預金については、遺言書の内容に従って相続手続きを進めます。

一方、B銀行の預金については、遺言書に承継先が書かれていないため、別途処理が必要になります。

つまり、記載されている財産については遺言書が有効に働き、記載されていない財産については遺言書では処理できない、という整理になります。

遺言書の方式不備がある場合は別問題

ただし、財産の記載漏れとは別に、遺言書そのものに方式不備がある場合は注意が必要です。

たとえば、自筆証書遺言では、原則として遺言者本人が全文、日付、氏名を自書し、押印する必要があります。

日付が「令和〇年〇月吉日」のように特定できない場合や、本人の自筆ではない場合などは、遺言書が無効になる可能性があります。

財産の一部が書かれていないことと、遺言書そのものが方式を満たしていないことは、別の問題です。

遺言書全体の有効性に不安がある場合は、専門家に確認しましょう。

遺言書に記載のないプラス財産はどう分けるのか

原則として相続人全員で遺産分割協議をする

遺言書に記載されていないプラス財産が見つかった場合、その財産については、相続人全員で遺産分割協議を行うのが基本です。

たとえば、遺言書に不動産と一部の預金口座だけが記載されており、後から別の預金口座や株式が見つかった場合です。

このような財産については、遺言書で承継先が指定されていないため、相続人全員で誰が取得するかを話し合います。

協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成し、その内容に従って手続きを進めます。

協議がまとまらなければ法定相続分が基準になる

相続人全員で話し合いがまとまらない場合は、法定相続分が一つの基準になります。

たとえば、相続人が配偶者と子2人の場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1です。

政府広報でも、法定相続分は遺産分割協議で合意できなかったときに適用される割合として、配偶者と子の場合は配偶者2分の1、子全体で2分の1と説明されています。

ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる分け方をすることも可能です。

たとえば、遺言書で多く財産を取得した相続人が、記載漏れ財産については取得しないと合意することもあります。

遺言書で優遇された相続人が当然に取得するわけではない

遺言書で特定の相続人が多く財産を取得する内容になっていたとしても、遺言書に記載されていない財産まで当然にその相続人が取得できるわけではありません。

たとえば、遺言書に「長男に自宅不動産を相続させる」とだけ書かれていた場合、後から見つかった預金口座についてまで、長男が当然に取得するとはいえません。

その預金口座については、遺言書で指定されていないため、相続人全員で協議する必要があります。

遺言者が「長男にすべての財産を残したい」と考えていた場合でも、遺言書にその意思が明確に書かれていなければ、手続き上問題になることがあります。

遺言書に「その他一切の財産」と書いてある場合

記載漏れ財産も指定された人が取得できる可能性がある

遺言書に「その他一切の財産」についての記載がある場合は、扱いが変わります。

たとえば、次のような文言です。

「遺言者は、本遺言に記載のないその他一切の財産を、長男〇〇に相続させる。」

このような条項があれば、遺言書に個別に記載されていない財産が後から見つかった場合でも、長男が取得するものとして手続きを進められる可能性があります。

財産の記載漏れを防ぐためには、この「その他一切の財産」の条項が非常に重要です。

遺言書作成後に取得した財産にも対応しやすい

遺言書を作成した後に、新しい財産を取得することがあります。

たとえば、新しい銀行口座を開設した、別の不動産を取得した、有価証券を購入した、退職金が入金されたなどです。

遺言書に個別財産だけを書いていると、遺言書作成後に取得した財産が記載漏れになる可能性があります。

しかし、「その他一切の財産」の承継先を指定しておけば、将来取得した財産についても対応しやすくなります。

誰に残すかは慎重に決める

「その他一切の財産」は便利な条項ですが、誰に取得させるかは慎重に決める必要があります。

この条項により、想定していなかった財産まで特定の相続人が取得することになる可能性があります。

相続人間の公平、遺留分、相続税、財産の種類を考慮して、誰に取得させるのが適切かを検討しましょう。

遺言書に記載のないマイナス財産はどうなるのか

借金などの債務は法定相続分で承継されるのが原則

遺言書に記載されていない財産が、借金、ローン、未払金などのマイナス財産だった場合は注意が必要です。

相続では、被相続人のプラス財産だけでなく、借金などの義務も承継されます。

民法上、相続人は相続開始時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとされています。

金銭債務のように分けることができる債務は、原則として法定相続分に応じて各相続人に承継されます。

そのため、遺言書で「長男に多く財産を相続させる」と書かれていても、債権者は各相続人に対して法定相続分に応じた請求をすることがあります。

相続人間で負担割合を決めることはできる

相続人同士の内部関係では、借金の負担割合を話し合って決めることは可能です。

たとえば、遺産を多く取得した長男が借金も多く負担する、という合意をすることがあります。

ただし、その合意は相続人間の内部的な取り決めです。

債権者がその合意に当然に拘束されるわけではありません。

債権者は、法定相続分に応じて各相続人へ請求できる可能性があります。

そのため、相続人間で負担割合を決めた場合でも、実際に債権者へ支払った後、相続人同士で精算する必要が生じることがあります。

記載漏れ財産が見つかった場合の対応方法

遺言書の内容を確認する

まず、遺言書全体を確認します。

個別財産の記載だけでなく、「その他一切の財産」や「本遺言に記載のない財産」についての条項があるかを確認しましょう。

この条項があれば、記載漏れ財産の承継先が決まっている可能性があります。

一方、そのような条項がなければ、相続人全員で協議する必要がある場合があります。

財産の内容と評価を確認する

次に、見つかった財産の内容を確認します。

預貯金であれば金融機関名、支店名、口座番号、残高を確認します。

借金であれば債権者、残高、返済期限、保証人の有無を確認します。

財産の内容によって、必要な手続きや相続人間の協議内容が変わります。

相続人全員で協議する

遺言書に承継先が書かれていない財産については、相続人全員で協議します。

一部の相続人だけで決めた協議は、後で問題になる可能性があります。

協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名押印します。

協議がまとまらない場合は調停を検討する

相続人全員で協議してもまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を検討することになります。

特に、記載漏れ財産の金額が大きい場合や、遺言書で一部の相続人が優遇されている場合は、感情的な対立が起こりやすいです。

遺言書に財産の記載漏れを防ぐ方法

財産目録を作成する

遺言書を作成する前に、財産目録を作成しましょう。

財産目録には、預貯金、不動産、有価証券、現金、生命保険、貸金庫、借入金、保証債務などを整理します。

財産目録を作成することで、遺言書に書くべき財産を把握しやすくなります。

また、公正証書遺言を作成する場合、公証人や専門家との打ち合わせもスムーズになります。

「その他一切の財産」の条項を入れる

記載漏れを完全に防ぐことは難しいため、遺言書には「その他一切の財産」の条項を入れることをおすすめします。

たとえば、次のような文言です。

「遺言者は、本遺言に記載のないその他一切の財産を、妻〇〇〇〇に相続させる。」

このような条項があれば、後から新しい財産が見つかった場合でも、遺言内容に従って手続きできる可能性があります。

財産内容が変わったら遺言書を見直す

遺言書作成後に財産内容が変わった場合は、遺言書を見直しましょう。

不動産を売却した、新しい不動産を購入した、預貯金が大きく増減した、借金をした、生命保険の受取人を変更したなどの場合です。

古い遺言書のままにしておくと、相続開始後に内容が現実と合わなくなることがあります。

公正証書遺言を検討する

遺言書の記載漏れや方式不備を防ぐためには、公正証書遺言を検討することも有効です。

公正証書遺言は、公証人が関与して作成するため、自筆証書遺言に比べて方式不備による無効リスクを減らせます。

また、公証役場で原本が保管されるため、紛失や改ざんのリスクも抑えられます。

ただし、公証人が遺言内容をすべて設計してくれるわけではありません。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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