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特別方式遺言について

はじめに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

遺言書というと、多くの方は自筆証書遺言や公正証書遺言を思い浮かべるのではないでしょうか。

実際に、一般的な相続対策として利用される遺言書の多くは、自筆証書遺言または公正証書遺言です。

しかし、民法では、通常の遺言方式とは別に、特殊な状況で作成する遺言方式も定められています。

これを特別方式遺言といいます。

特別方式遺言とは、病気やけがで死亡の危急が迫っている場合、船舶や飛行機の遭難により命の危険がある場合、伝染病による隔離や船舶内で陸地から離れている場合など、普通方式の遺言書を作成することが難しい状況で利用される遺言です。

もっとも、特別方式遺言は、日常的に利用されるものではありません。実務上も、特別方式遺言を使って相続手続きを進めるケースは非常にまれです。

通常は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という普通方式遺言で作成するのが原則です。

特別方式遺言とは

特殊な状況で作成する遺言

特別方式遺言とは、通常の方法で遺言書を作成することが難しい特殊な状況で認められる遺言方式です。

遺言書は、法律で定められた方式に従って作成しなければ効力が認められません。

通常であれば、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言のいずれかで作成します。

しかし、死亡の危急が迫っている場合や、一般社会から隔絶された場所にいる場合など、普通方式で遺言書を作成する時間や環境がないことがあります。

そのような非常時に、例外的に認められているのが特別方式遺言です。

利用される場面は非常に限られる

特別方式遺言は、法律上は認められている制度です。

しかし、実際に利用される場面は非常に限られます。

多くの方が遺言書を作成する場合は、公正証書遺言や自筆証書遺言を選択します。

特別方式遺言は、あくまで普通方式遺言を作成できない緊急時や特殊な状況での例外的な制度です。

そのため、相続対策として遺言書を作成したい場合は、できる限り元気なうちに普通方式遺言で作成しておくことが重要です。

普通方式遺言と特別方式遺言の違い

普通方式遺言とは

普通方式遺言とは、通常の場面で作成される遺言方式です。

普通方式遺言には、次の3種類があります。

自筆証書遺言

公正証書遺言

秘密証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者本人が自書して作成する遺言書です。

公正証書遺言は、公証役場で公証人が関与して作成する遺言書です。秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま公証人に遺言書の存在を証明してもらう方式です。

普通方式遺言は、遺言内容をじっくり検討し、必要書類を準備しながら作成できます。

特別方式遺言とは

特別方式遺言は、普通方式遺言を作成することが困難な場面で利用される遺言です。

大きく分けると、次の2種類があります。

危急時遺言

隔絶地遺言

危急時遺言は、死亡の危急が迫っている場合などに作成される遺言です。

隔絶地遺言は、伝染病による隔離や船舶内など、一般社会や陸地から隔絶された状態で作成される遺言です。

特別方式遺言は6か月で効力を失うことがある

特別方式遺言には、普通方式遺言にはない重要な特徴があります。

それは、遺言者が普通方式によって遺言できる状態になってから6か月間生存した場合、特別方式遺言は効力を失うという点です。

特別方式遺言は、あくまで緊急時や特殊状況での例外的な遺言です。

そのため、危機的な状況を脱し、通常の方法で遺言書を作成できる状態になった場合には、改めて普通方式遺言を作成することが予定されています。

特別方式遺言の種類

特別方式遺言は、大きく分けると次の2つです。

危急時遺言

隔絶地遺言

さらに、それぞれ次のように分類されます。

危急時遺言

一般危急時遺言

難船危急時遺言

隔絶地遺言

一般隔絶地遺言

船舶隔絶地遺言

一般危急時遺言

病気やけがで死亡の危急が迫っている場合

一般危急時遺言とは、病気やけがなどにより、遺言者に死亡の危急が迫っている場合に作成する遺言です。

たとえば、重い病気で危篤状態にある場合、事故により命の危険がある場合などが想定されます。

このような状況では、遺言者が自分で遺言書を書くことができなかったり、公証役場で公正証書遺言を作成する時間がなかったりすることがあります。

そのため、証人の立会いのもとで、口頭で遺言内容を伝える方法が認められています。

一般危急時遺言の作成方法

一般危急時遺言を作成するには、証人3人以上の立会いが必要です。作成の流れは、一般的に次のようになります。

遺言者が証人の一人に遺言の趣旨を口授する

口授を受けた証人が内容を筆記する

筆記した内容を遺言者と他の証人に読み聞かせる、または閲覧させる

各証人が内容に間違いないことを確認する

証人が署名押印する

一般危急時遺言では、遺言者本人が署名押印する必要はありません。

これは、遺言者が死亡の危急に迫っている状態であることが前提とされているためです。

家庭裁判所の確認が必要

一般危急時遺言は、作成後に家庭裁判所の確認を受ける必要があります。

家庭裁判所の確認は、遺言が遺言者の真意に基づくものかを確認するための手続きです。

一般危急時遺言では、遺言の日から20日以内に、証人の一人または利害関係人から家庭裁判所へ確認の請求をする必要があります。

この確認を受けなければ、遺言としての効力が問題になります。

難船危急時遺言

船舶や飛行機の遭難などで命の危険がある場合

難船危急時遺言とは、船舶や飛行機が遭難した場合など、生命の危険が迫っている場面で作成する遺言です。

一般危急時遺言よりもさらに緊急性が高い状況が想定されています。

たとえば、船舶が遭難した場合、飛行機事故で生命の危険がある場合などです。

難船危急時遺言の作成方法

難船危急時遺言では、証人2人以上の立会いが必要です。

一般危急時遺言では証人3人以上が必要ですが、難船危急時遺言では、緊急性が高いため証人2人以上で足ります。

遺言者が口頭で遺言内容を伝え、証人が内容を筆記し、証人が署名押印します。

遺言者本人の署名押印は必要ありません。

速やかに家庭裁判所の確認を受ける

難船危急時遺言も、家庭裁判所の確認が必要です。

一般危急時遺言と異なり、20日以内という日数制限はありません。

ただし、危難が去った後、速やかに家庭裁判所へ確認の請求を行う必要があります。

一般隔絶地遺言

伝染病による隔離などの場合

一般隔絶地遺言とは、伝染病による隔離などにより、一般社会から隔絶された状態にある人が作成する遺言です。

伝染病による隔離のほか、一定の事情により通常の遺言方式を利用しにくい状況が想定されています。

危急時遺言と異なり、死亡の危急が迫っている必要はありません。

一般隔絶地遺言の作成方法

一般隔絶地遺言では、警察官1人と証人1人以上の立会いが必要です。

遺言者本人が遺言書を作成し、遺言者、筆者、立会人、証人が署名押印します。

危急時遺言と異なり、遺言者本人が作成する方式です。

そのため、家庭裁判所の確認手続きは不要です。

ただし、公正証書遺言ではないため、相続開始後には検認が必要になることがあります。

船舶隔絶地遺言

船舶内で陸地から離れている場合

船舶隔絶地遺言とは、船舶内にいる人が、陸地から離れているため普通方式遺言を作成しにくい場合に作成する遺言です。

長期間の航海中などが想定されています。

飛行機については、通常、搭乗時間が短いため、船舶隔絶地遺言の対象とはされていません。

船舶隔絶地遺言の作成方法

船舶隔絶地遺言では、船長または事務員1人と、証人2人以上の立会いが必要です。

遺言者本人が遺言書を作成し、遺言者、筆者、立会人、証人が署名押印します。

こちらも、危急時遺言とは異なり、遺言者本人が作成する方式です。

そのため、家庭裁判所の確認手続きは不要です。

ただし、相続開始後には検認が必要になることがあります。

家庭裁判所の確認と検認の違い

確認とは

特別方式遺言のうち、危急時遺言では家庭裁判所の確認が必要です。

確認とは、その遺言が遺言者の真意に基づいて作成されたものかを家庭裁判所が確認する手続きです。

一般危急時遺言や難船危急時遺言は、緊急状態で口頭によって作成されるため、後から家庭裁判所による確認が求められます。

検認とは

検認とは、相続開始後に家庭裁判所で遺言書の状態や内容を確認し、偽造や変造を防止するための手続きです。

検認は、遺言書の有効・無効を判断する手続きではありません。

公正証書遺言や、法務局に保管された自筆証書遺言に関する遺言書情報証明書を除き、遺言書を発見した相続人などは、遅滞なく家庭裁判所に検認を請求する必要があります。

確認を受けても検認が不要になるとは限らない

危急時遺言について家庭裁判所の確認を受けたとしても、それだけで検認が不要になるとは限りません。

確認は、遺言者の真意に基づくかを確認する手続きです。

検認は、相続開始後に遺言書の状態を明確にする手続きです。

両者は目的が異なります。

そのため、特別方式遺言を利用した場合には、確認と検認の両方が問題になる可能性があります。

特別方式遺言が利用される具体的な場面

病院で危篤状態にある場合

病気やけがにより、遺言者が危篤状態にある場合、一般危急時遺言が問題になることがあります。

ただし、実務上は、可能であれば公証人に病院へ出張してもらい、公正証書遺言を作成することが多いです。

一般危急時遺言は、あくまで公正証書遺言の作成が間に合わないような緊急場面で検討されるものです。

船舶や航空機の遭難時

船舶や航空機の遭難により、生命の危険が迫っている場合は、難船危急時遺言が問題になります。

ただし、このような場面は非常に特殊です。

現実に制度を利用する機会はかなり限られます。

伝染病などで隔離されている場合

伝染病による隔離などで、一般社会から隔絶された状態にある場合は、一般隔絶地遺言が問題になることがあります。

ただし、現在では通信手段や公証人の出張対応などもあるため、実際に特別方式遺言を利用するかどうかは慎重に判断する必要があります。

長期間の航海中

長期間の航海中で、陸地から離れている場合は、船舶隔絶地遺言が問題になることがあります。

船長または事務員、証人の立会いが必要です。

こちらも、現代では利用される場面は多くありません。

特別方式遺言の注意点

普通方式遺言が可能なら普通方式を選ぶ

特別方式遺言は、あくまで非常時の例外です。

普通方式遺言を作成できる状況であれば、特別方式遺言ではなく、普通方式遺言を選ぶべきです。

特に、公正証書遺言であれば、公証人が関与し、方式不備や遺言能力をめぐる争いを防ぎやすくなります。

方式が複雑で無効リスクがある

特別方式遺言は、証人や立会人、家庭裁判所の確認など、特殊な要件があります。

要件を満たしていないと、遺言としての効力が認められない可能性があります。

非常時に正確な方式を守ることは簡単ではありません。

そのため、特別方式遺言は実務上のリスクが高い遺言方式といえます。

6か月生存すると失効する場合がある

特別方式遺言は、遺言者が普通方式で遺言できる状態になってから6か月間生存した場合、効力を失います。

危機を脱した場合や、隔絶状態が解消された場合には、改めて普通方式遺言を作成する必要があります。

特別方式遺言を作成したからといって、ずっと有効に残るわけではない点に注意しましょう。

相続開始後に確認・検認が問題になる

特別方式遺言では、家庭裁判所の確認や検認が問題になることがあります。

特に危急時遺言では、家庭裁判所の確認手続きが重要です。

また、検認が必要になる場合もあるため、相続開始後の手続きが複雑になる可能性があります。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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