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夫婦で遺言書を作成する場合の注意点

初めに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

遺言書は、相続トラブルを防ぐための有効な手段です。

特に、夫婦で互いに財産の承継先を考えておくことは、残された配偶者の生活を守るうえでも大切です。

しかし、夫婦で遺言書を作成する場合には、注意すべき重要なルールがあります。

それは、夫婦が同じ1通の書面で共同して遺言書を作成することはできないという点です。

民法では、二人以上の者が同一の証書で遺言をすることを禁止しています。これを共同遺言の禁止といいます。

夫婦であっても、1通の遺言書に夫と妻の遺言内容を一緒に記載すると、遺言書が無効になる可能性があります。

夫婦で遺言書を作成することはできるのか

夫婦それぞれが遺言書を作成することはできる

夫婦で遺言書を作成すること自体は可能です。

たとえば、夫が自分の財産について遺言書を作成し、妻も自分の財産について別の遺言書を作成することは問題ありません。

実務上も、夫婦が同じ時期に公正証書遺言を作成するケースは多くあります。

特に、夫婦のどちらかが先に亡くなった場合に、残された配偶者が自宅や預貯金を承継できるようにしておくことは重要です。

ただし、夫婦で作成する場合でも、遺言書は夫用と妻用で別々に作る必要があります。

同じ紙に夫婦で書く遺言書は避けるべき

夫婦が同じ紙に、それぞれの財産の分け方を書いて署名押印するような遺言書は、共同遺言として無効になる可能性があります。

たとえば、1通の書面に次のような内容を書く場合です。

「夫は、自己の財産を妻に相続させる。妻は、自己の財産を夫に相続させる。」

このように、夫婦二人の遺言が同じ書面に記載されている場合、共同遺言の禁止に抵触するおそれがあります。

夫婦で同じ内容を希望している場合でも、必ず夫婦それぞれが別々の遺言書を作成しましょう。

共同遺言とは

二人以上が同じ証書でする遺言

共同遺言とは、二人以上の人が、同じ一つの証書で遺言をすることです。

夫婦だけでなく、親子、兄弟姉妹、共同経営者などであっても、同じ書面で一緒に遺言をすることは認められていません。

民法は、遺言は二人以上の者が同一の証書ですることができないと定めています。

そのため、夫婦が同じ用紙に連名で遺言内容を書いた場合、その遺言書全体の有効性が問題になる可能性があります。

夫婦の遺言内容が別々でも注意が必要

夫婦それぞれの遺言内容が別々に書かれていたとしても、同じ一つの証書にまとめられている場合は注意が必要です。

たとえば、1枚目に夫の遺言、2枚目に妻の遺言が書かれていて、1冊の遺言書として綴じられている場合などです。

遺言内容が完全に独立していて、容易に切り離せるような場合には、共同遺言に当たらないと判断される可能性もあります。

しかし、その有効性を相続開始後に争うことになれば、残された家族に大きな負担がかかります。

そのようなリスクを避けるためにも、夫婦の遺言書は最初から完全に別々の書面として作成するべきです。

共同遺言が禁止されている理由

遺言は自由に撤回できなければならない

遺言書は、遺言者本人の最終意思を残すためのものです。

そのため、遺言者はいつでも遺言を撤回したり、変更したりできます。

もし夫婦が同じ書面で共同の遺言書を作成してしまうと、片方だけが後から内容を撤回したい場合に問題が生じます。

たとえば、夫は撤回したいが、妻は撤回したくないという場合です。

共同の書面になっていると、一方の自由な撤回や変更がしにくくなる可能性があります。

遺言者の自由な意思を守るため、共同遺言は禁止されています。

一方の遺言が無効になると他方にも影響するおそれがある

共同遺言では、一方の遺言に形式不備があった場合、もう一方の遺言の有効性にも影響する可能性があります。

たとえば、夫の遺言部分に日付や押印の不備があった場合、妻の遺言部分までどう扱うべきか問題になることがあります。

また、夫婦の遺言内容が互いに条件のような関係になっている場合、一方が無効になると、もう一方の遺言内容にも矛盾が生じることがあります。

このような不安定な状態を避けるためにも、夫婦の遺言は別々に作成する必要があります。

夫婦で遺言書を作成する正しい方法

夫と妻がそれぞれ別の遺言書を作成する

夫婦で遺言書を作成する場合は、夫と妻がそれぞれ別々の遺言書を作成します。たとえば、次のような形です。

夫の遺言書:夫の財産について、誰に相続させるかを記載する

妻の遺言書:妻の財産について、誰に相続させるかを記載する

同じ日に作成しても構いません。同じ公証役場で作成しても構いません。同じ専門家に相談して作成しても問題ありません。

ただし、遺言書自体は、必ず夫用と妻用で分けて作成します。

夫婦で話し合って内容を整理する

夫婦で遺言書を作成する場合、事前に次のような内容を話し合っておくとよいでしょう。

自宅を誰に残すか

どちらが先に亡くなった場合、残された配偶者の生活をどう守るか

子どもたちにどのように財産を残すか

子どもがいない場合、最終的にどちらの親族へ財産を残すか

お墓や葬儀についてどう考えるか

遺言執行者を誰にするか

エンディングノートも作成するか

夫婦で話し合うことで、お互いの考えを確認でき、相続開始後の不安を減らしやすくなります。

条件付きのような書き方は慎重にする

夫婦で遺言書を作成する場合、「夫が先に死亡したら妻に相続させる」「妻が先に死亡したら夫に相続させる」といった内容を考えることがあります。

このような内容自体は検討できますが、互いの遺言が複雑に条件付けられていると、後日解釈が難しくなることがあります。

特に自筆証書遺言で複雑な条件を記載すると、相続開始後に手続きが進まなくなる可能性があります。

夫婦で互いに財産を残し合う内容にする場合は、公正証書遺言で作成し、専門家と相談しながら文言を整理することをおすすめします。

夫婦で公正証書遺言を作成するメリット

形式不備による無効リスクを減らせる

公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言書です。

自筆証書遺言と比べて、形式不備による無効リスクを減らしやすいというメリットがあります。

夫婦で遺言書を作成する場合、共同遺言にならないように、夫婦それぞれ別の公正証書遺言として作成します。

公証人が内容を確認しながら作成するため、共同遺言の問題や形式面の不備を避けやすくなります。

高齢の夫婦でも作成しやすい

自筆証書遺言は、原則として本文、日付、氏名を本人が自書する必要があります。

高齢の方にとって、長文を手書きすることは大きな負担になることがあります。

公正証書遺言であれば、公証人が遺言書を作成するため、本人が長い文章を手書きする必要はありません。

また、公証役場へ行くことが難しい場合は、公証人に自宅、病院、施設などへ出張してもらえることがあります。

相続開始後の手続きが進めやすい

公正証書遺言は、家庭裁判所の検認が不要です。

相続開始後、残された配偶者や子どもは、公正証書遺言の正本または謄本を使って、預貯金の解約、不動産の相続登記、証券口座の手続きなどを進めやすくなります。

夫婦で遺言書を作成する目的が、残された家族の負担を減らすことであるなら、公正証書遺言は有効な選択肢です。

夫婦で互いに財産を残す遺言

残された配偶者の生活を守るための遺言

夫婦で遺言書を作成する場合、よくある内容が、互いに財産を残し合う遺言です。たとえば、次のような内容です。

夫の遺言書:夫の財産を妻に相続させる

妻の遺言書:妻の財産を夫に相続させる

このようにしておくことで、夫婦のどちらが先に亡くなっても、残された配偶者が自宅や預貯金を承継しやすくなります。

特に、自宅が夫婦どちらか一方の名義になっている場合や、預貯金の多くが一方の名義になっている場合は、遺言書を作成しておく意味があります。

子どもがいる夫婦の場合

子どもがいる夫婦の場合、最終的には夫婦の財産を子どもへ承継させたいと考えることが多いです。

この場合、一次相続では残された配偶者の生活を守り、二次相続では子どもへ財産を承継させるという設計を検討します。

ただし、一次相続で配偶者にすべて相続させると、二次相続で相続税や遺産分割の問題が生じることがあります。

財産額が大きい場合や不動産がある場合は、税理士や専門家と連携して検討することをおすすめします。

子どもがいない夫婦の注意点

死亡の順番で財産の行き先が変わる

子どもがいない夫婦が互いに財産を残し合う遺言を作成する場合、特に注意が必要です。

子どもがいない夫婦では、夫婦のどちらが先に亡くなるかによって、最終的な財産の行き先が変わることがあります。

たとえば、夫が先に亡くなり、妻が夫の財産を相続した後に妻が亡くなった場合、夫婦の財産は妻側の親族へ承継される可能性があります。

一方、妻が先に亡くなり、夫が妻の財産を相続した後に夫が亡くなった場合、夫婦の財産は夫側の親族へ承継される可能性があります。

このように、子どもがいない夫婦では、死亡の順番によって財産の最終的な行き先が大きく変わることがあります。

夫側・妻側どちらに財産を残したいか考える

子どもがいない夫婦の場合、最終的に財産をどちらの親族へ承継させたいのかを考えておくことが重要です。

たとえば、次のような希望が考えられます。

最後に亡くなった配偶者側の親族に残したい

夫側の甥や姪に残したい

妻側の兄弟姉妹に残したい

双方の親族に一定割合で分けたい

お世話になった人や団体に遺贈したい

夫婦で選んだ団体へ寄付したい

このような希望がある場合は、夫婦それぞれの遺言書で内容を整理する必要があります。

予備的遺言も検討する

子どもがいない夫婦の場合、予備的遺言を検討することがあります。

予備的遺言とは、予定していた相続人や受遺者が先に亡くなった場合に備えて、次の承継先をあらかじめ定めておく遺言内容です。

たとえば、次のような考え方です。

「妻が遺言者より先に死亡している場合は、遺言者の財産を甥〇〇に相続させる。」

このように記載しておくことで、予定していた相手が先に亡くなっていた場合にも、財産の行き先を明確にできます。

夫婦で遺言書を作成する場合は、どちらが先に亡くなるか分からないため、予備的な内容を入れておくことが重要です。

注意点

1通の書面にまとめない

夫婦で遺言書を作成する場合、最も重要なのは、1通の書面にまとめないことです。

夫婦で相談して同じ内容を決めたとしても、遺言書は夫と妻で別々に作成します。

自筆証書遺言の場合も、公正証書遺言の場合も、それぞれの遺言書を独立した書類として作成しましょう。

互いの遺言内容を矛盾させない

夫婦でそれぞれ遺言書を作成する場合、内容が矛盾しないように注意が必要です。

たとえば、共有不動産について、夫と妻の持分をそれぞれ別の人に承継させる内容にすると、相続開始後に管理や売却が難しくなることがあります。

夫婦で財産の全体像を確認しながら、矛盾のない内容にすることが大切です。

遺留分に注意する

夫婦で遺言書を作成する場合でも、遺留分に注意が必要です。

たとえば、夫が全財産を妻に相続させる内容にしていても、子どもに遺留分がある場合があります。

遺留分を侵害する内容が直ちに無効になるわけではありませんが、相続開始後に遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

特定の相続人に財産を集中させたい場合は、遺留分も確認しておきましょう。

二次相続まで考える

夫婦で遺言書を作成する場合は、最初の相続だけでなく、二次相続まで考えることが大切です。

一次相続とは、夫婦の一方が亡くなったときの相続です。

二次相続とは、その後に残された配偶者が亡くなったときの相続です。

一次相続で配偶者にすべて相続させる内容にすると、残された配偶者の生活は守りやすくなります。

しかし、二次相続で子どもたちが揉めたり、相続税の負担が大きくなったりすることがあります。

夫婦で遺言書を作成する場合は、二段階の相続を見据えて設計しましょう。

遺言執行者を指定する

夫婦で遺言書を作成する場合は、遺言執行者も検討しましょう。

遺言執行者を指定しておくことで、相続開始後の預貯金解約、不動産手続き、受遺者への財産引渡しなどを進めやすくなります。

特に、子どもがいない夫婦、相続人が兄弟姉妹になる可能性がある夫婦、相続人同士が疎遠な場合は、専門家を遺言執行者に指定しておくと安心です。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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