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遺言書で指定する分割方法とは?

初めに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

遺言書では、誰にどの財産を相続させるかを指定できます。

また、単に相続分の割合を決めるだけでなく、具体的な遺産の分け方を指定することもできます。

たとえば、「長男に自宅不動産を相続させる」「長女に預貯金を相続させる」「不動産を売却し、その売却代金を相続人で分ける」といった内容です。

相続財産が預貯金だけであれば、割合に応じて分けやすいかもしれません。

しかし、実際の相続では、不動産、自動車、貴金属、株式、事業用財産など、簡単に分けられない財産が含まれることが多くあります。

そのため、遺言書を作成するときは、誰にどの財産を残すかだけでなく、どのような方法で分けるのかまで考えておくことが大切です。

遺産の分け方には、主に現物分割、代償分割、換価分割という方法があります。

遺言書でできる指定は大きく2つある

相続分の指定

相続分の指定とは、相続人が遺産全体についてどの割合で相続するかを、遺言書で指定する方法です。

たとえば、次のような内容です。

「長男Aの相続分を3分の2、長女Bの相続分を3分の1とする。」

このように、法定相続分とは異なる割合を遺言書で指定できます。

相続分の指定をすると、相続人は遺言書で指定された割合に従って遺産を取得することになります。

ただし、相続分の指定は、あくまでも割合を決める方法です。

具体的に「どの財産を誰が取得するか」までは決まっていない場合、相続開始後に遺産分割協議が必要になることがあります。

遺産分割方法の指定

被相続人は遺言で遺産の分割の方法を定めることができるとされています。

遺産分割方法の指定をしておけば、相続開始後に相続人全員で具体的な財産の分け方を話し合う必要を減らせます。

特に、不動産や事業用財産など、分け方をめぐって争いになりやすい財産がある場合は、遺産分割方法を遺言書で明確にしておくことが重要です。

相続分の指定と遺産分割方法の指定の違い

相続分の指定は割合を決める方法

相続分の指定は、遺産全体について各相続人がどの割合で取得するかを決めるものです。

たとえば、「長男2分の1、長女2分の1」と指定した場合、長男と長女が同じ割合で相続することは分かります。

しかし、具体的にどの財産を長男が取得し、どの財産を長女が取得するかまでは決まりません。

そのため、遺産に不動産、預貯金、株式、自動車などがある場合は、相続開始後に相続人同士で具体的な分け方を話し合う必要があります。

つまり、相続分の指定だけでは、遺産分割協議が必要になる可能性があります。

遺産分割方法の指定は具体的な分け方を決める方法

遺産分割方法の指定は、具体的にどの財産を誰が取得するか、またはどのような方法で分けるかを決めるものです。

たとえば、「自宅不動産は妻に相続させる」「A銀行の預金は長男に相続させる」「B証券会社の株式は長女に相続させる」といった内容です。

このように、すべての財産について分け方が指定されていれば、相続開始後に遺産分割協議をする必要を大きく減らせます。

ただし、遺言書に記載されていない財産が後から見つかった場合や、遺言書作成後に財産内容が変わった場合は、その財産について別途協議が必要になることがあります。

遺産分割協議を避けたいなら具体的に書く

相続人同士の話し合いをできるだけ避けたい場合は、単に相続分の割合だけを書くのではなく、遺産分割方法の指定を具体的に書くことが大切です。

たとえば、次のような書き方です。

「長男Aの相続分を2分の1、長女Bの相続分を2分の1とする。」

この書き方では、割合は分かりますが、どの財産を誰が取得するかは分かりません。

遺産分割の主な方法

現物分割

現物分割とは、相続財産をそのままの形で各相続人が取得する方法です。

たとえば、次のような分け方です。

自宅不動産は長男が取得する

預貯金は長女が取得する

自動車は配偶者が取得する

株式は長男が取得する

貴金属は長女が取得する

財産を売却したり、代償金を支払ったりせず、財産そのものを相続人に分ける方法です。

現物分割は分かりやすく、遺言書でも指定しやすい方法です。

代償分割

代償分割とは、特定の相続人が財産を取得する代わりに、他の相続人へ金銭などを支払う方法です。

たとえば、長男が3,000万円相当の自宅不動産を取得し、その代わりに長女へ1,500万円の代償金を支払うような方法です。

相続財産の中心が不動産で、物理的に分けにくい場合によく使われます。

自宅を同居している長男に残したいが、他の子どもとの公平も保ちたい場合などに有効です。

換価分割

換価分割とは、相続財産を売却して現金化し、その売却代金を相続人で分ける方法です。

たとえば、相続財産である土地建物を売却し、売却代金から諸費用を差し引いた残額を、長男と長女で2分の1ずつ分けるような方法です。

不動産に誰も住む予定がない場合や、相続人全員が現金で分けることを希望している場合に使われます。

ただし、売却には時間がかかることがあり、売却価格も相場や買主によって変動します。

そのため、遺言書で換価分割を指定する場合は、誰が売却手続きを行うのか、売却代金から何を控除するのか、遺言執行者を指定するのかを考えておく必要があります。

現物分割のメリットと注意点

財産をそのまま承継できる

現物分割のメリットは、財産をそのまま承継できることです。

自宅、土地、自動車、株式、貴金属などを、特定の相続人にそのまま取得させることができます。

たとえば、配偶者が住み続ける自宅を配偶者に相続させる場合や、事業用財産を後継者に相続させる場合には、現物分割が適しています。

分け方が不公平になりやすい

一方で、現物分割は相続人間の公平を保つことが難しい場合があります。

たとえば、自宅不動産が3,000万円、預貯金が500万円しかない場合、長男に自宅不動産、長女に預貯金を相続させると、取得額に大きな差が出ます。

このような場合、遺留分侵害額請求の問題が起こる可能性があります。

現物分割を指定する場合は、財産の評価額、相続人の人数、遺留分、相続税、相続人の生活状況を踏まえて検討することが重要です。

共有にする場合は慎重に検討する

現物分割では、不動産を複数の相続人で共有にする方法もあります。

たとえば、「土地を長男と長女に2分の1ずつ相続させる」という内容です。

しかし、不動産の共有は、将来の売却、管理、修繕、固定資産税の負担、共有者の死亡による二次相続などで問題になりやすいです。

相続トラブルを防ぐためには、安易に共有にするのではなく、できるだけ単独取得、代償分割、換価分割などを検討した方がよい場合があります。

代償分割のメリットと注意点

不動産を残しながら公平を図りやすい

代償分割のメリットは、不動産などの分けにくい財産を特定の相続人に残しつつ、他の相続人との公平を図りやすいことです。

たとえば、長男が親と同居しており、相続開始後も自宅に住み続けたい場合、自宅を長男に相続させることがあります。

その場合、長男が他の相続人へ代償金を支払うことで、取得額の差を調整できます。

代償金を支払う資力が必要

代償分割で最も重要なのは、財産を取得する相続人に代償金を支払う資力があるかどうかです。

遺言書で「長男は長女に1,000万円を支払う」と指定しても、長男に支払能力がなければ実現が難しくなります。

代償金を支払えない場合、長女との間でトラブルになる可能性があります。

代償分割を指定する場合は、生命保険金の活用、預貯金の配分、支払期限、分割払いの可否なども検討しておきましょう。

代償金の額を明確にする

代償分割を遺言書に書く場合は、代償金の額や支払方法をできるだけ明確にすることが重要です。

たとえば、次のような内容です。

「長男Aは、前条の不動産を取得する代償として、長女Bに対し、金1,000万円を、遺言者の死亡後6か月以内に支払う。」

「長男Aは、代償金を長女B名義の指定口座に振り込む方法により支払う。」

このように、金額、支払期限、支払方法を明確にしておくと、相続開始後の争いを防ぎやすくなります。

換価分割のメリットと注意点

現金で公平に分けやすい

換価分割のメリットは、財産を売却して現金化することで、相続人間で公平に分けやすいことです。

不動産のように物理的に分けにくい財産でも、売却して現金にすれば、割合に応じて分配しやすくなります。

誰も住む予定のない空き家、遠方の土地、管理が難しい不動産などでは、換価分割が適している場合があります。

売却価格や売却時期が不確定

換価分割の注意点は、売却価格や売却時期が不確定であることです。

不動産は、希望価格ですぐに売れるとは限りません。

売却に時間がかかったり、想定より低い価格でしか売れなかったりすることもあります。

また、売却までの間、固定資産税、管理費、修繕費、火災保険料などが発生することがあります。

換価分割を指定する場合は、売却までの管理方法や費用負担も考えておく必要があります。

遺言執行者の指定が重要

換価分割を遺言書で指定する場合は、遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。

遺言執行者がいないと、相続人全員で売却手続きを進めなければならず、意見が合わない場合に手続きが止まる可能性があります。

遺言執行者を指定しておけば、遺言内容に従って売却手続きや代金分配を進めやすくなります。

遺言書で分割方法を指定するときの注意点

財産を正確に特定する

遺言書で分割方法を指定する場合は、財産を正確に特定することが重要です。

預貯金であれば、金融機関名、支店名、口座種別などを記載します。

不動産であれば、登記事項証明書の記載に基づいて、所在、地番、家屋番号などを記載します。

財産の特定が不十分だと、相続開始後に「どの財産を指しているのか」が争いになる可能性があります。

財産の評価額を確認する

分割方法を指定する前に、財産の評価額を確認しましょう。

特に不動産は、固定資産税評価額、路線価、時価などで金額が異なることがあります。

財産の価値を把握しないまま遺言書を作成すると、相続人間で大きな不公平が生じる可能性があります。

遺留分に配慮する

遺言書で分割方法を指定する場合でも、遺留分には注意が必要です。

配偶者、子、直系尊属には遺留分があります。

一部の相続人に多く財産を取得させる内容にすると、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

特に、不動産を一人に相続させる場合や、代償金を支払わせる場合は、遺留分への配慮が重要です。

代償分割では支払能力を確認する

代償分割を指定する場合は、代償金を支払う人に支払能力があるかを確認しましょう。

支払能力がないのに代償金を指定すると、相続開始後に実現できず、相続人間の争いになります。

生命保険金を代償金の原資にする方法や、預貯金の配分を調整する方法も検討できます。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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