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家族仲が良くても遺言書を備えるべき理由
ご家族間での話し合い、情報共有は重要
家族仲が良い家庭であっても、相続が始まると、手続きの負担、財産の分け方、介護への貢献、将来の生活不安などをきっかけに、思わぬ行き違いが生じることがあります。
特に、ご家族に障害のある方がいる場合は、将来の生活費、住まい、財産管理、支援する家族への配慮などを、より丁寧に考えておく必要があります。
遺言書を作成しておけば、誰にどの財産を承継させるのかを明確にできます。
遺言書というと、相続争いが予想される家庭や、多くの財産がある家庭だけが作成するものだと思われがちです。
しかし、遺言書は、家族に争いがある場合だけでなく、家族に負担をかけないための備えとしても有効です。
家族仲が良い場合でも、相続手続きでは相続人全員の協力が必要になることがあります。
遺産分割協議が必要な場合、相続人全員で、誰がどの財産を取得するかを話し合わなければなりません。
一人でも納得しない相続人がいると、協議は成立しません。
遺言書は、相続人同士の話し合いを減らし、手続きを進めやすくするための道しるべになります。
「財産が少ないから揉めない」と考える方もいます。
しかし、相続トラブルは高額資産家だけの問題ではありません。
遺産の中心が自宅不動産で、預貯金が少ない場合、かえって分け方が難しくなることがあります。
たとえば、相続人が複数いて、財産が自宅不動産しかない場合です。
一人が自宅を取得すると、他の相続人に代償金を支払う必要が生じることがあります。
しかし、代償金を支払う資金がなければ、話し合いがまとまりにくくなります。
財産額が大きくなくても、分けにくい財産がある場合は、相続トラブルになりやすいのです。
遺言書は、遺言能力があるうちに作成する必要があります。
遺言能力とは、遺言の内容とその結果を理解し、判断できる能力のことです。
認知症や病気が進行し、判断能力が低下した後では、遺言書を作成しても有効性を争われる可能性があります。
そのため、遺言書は「まだ早い」と考えるのではなく、「元気な今だからこそ作成できるもの」と考えることが大切です。
財産の内容、家族の状況、自分の気持ちを落ち着いて整理できる時期に作成しておくことで、将来の安心につながります。
遺言書がない場合、相続人が複数いれば、遺産分割協議が必要になることが一般的です。
遺産分割協議とは、相続人全員で、誰が、どの財産を、どのように取得するかを話し合う手続きです。
遺産分割協議を成立させるには、原則として相続人全員の合意が必要です。
たとえば、相続人が3人いる場合、2人が賛成しても、1人が反対すれば協議は成立しません。
家族仲が良くても、相続開始後には、それぞれの生活状況、配偶者の意見、経済的事情、過去の介護負担などが影響し、意見が分かれることがあります。
家族の中に、親の介護や生活支援を長年担ってきた人がいる場合があります。
その人は、相続の場面で「自分は長年負担を引き受けてきたのに、相続分が同じなのは納得しにくい」と感じることがあります。
一方で、他の相続人は「介護は家族として当然ではないか」と考えることもあります。
このような認識の違いが、遺産分割協議で対立を生むことがあります。
遺言書で、介護や支援をしてくれた人に多めに財産を残す理由を書いておけば、相続人の理解を得やすくなる場合があります。
相続の話し合いでは、相続人本人だけでなく、その配偶者や家族の意見が影響することがあります。
兄弟姉妹同士は納得していても、それぞれの配偶者が「もっともらうべきではないか」「不動産を手放すべきではない」と意見することがあります。
その結果、相続人本人の気持ちだけでは話し合いが進まなくなることがあります。
遺言書があれば、遺言者本人の意思が明確になるため、周囲の意見による混乱を減らしやすくなります。
障害のある子がいる場合、親亡き後の生活費をどう確保するかは大きな課題です。
障害年金、福祉サービス、生活支援、住まい、医療費、日常生活費など、長期的な視点で考える必要があります。
遺言書を作成しておけば、障害のある子に多めに財産を残す内容にすることができます。
ただし、他の相続人に遺留分がある場合は、その点にも配慮しながら設計する必要があります。
障害のある子の生活を、兄弟姉妹が将来支える可能性があります。
その場合、支援を担う兄弟姉妹に一定の財産を多めに残すことも考えられます。
たとえば、障害のある子と同居する子に自宅を承継させる、生活支援を担う子に預貯金を多めに残すなどです。
ただし、単に「面倒を見てほしい」と書くだけでは不十分です。
どのような支援を期待しているのか、財産配分の理由は何か、他の相続人への配慮をどうするかを整理する必要があります。
障害のある子に財産を残す場合、財産を渡すだけで十分とは限りません。
本人が財産管理をすることが難しい場合、成年後見制度、任意後見契約、家族信託、福祉型信託、日常生活自立支援事業など、財産管理や生活支援の仕組みを検討することがあります。
遺言書は財産の承継先を決めるものです。
しかし、財産を受け取った後に誰が管理するのか、どのように生活を支えるのかまでは、遺言書だけで十分に対応できない場合があります。
障害のある子の将来を考える場合は、遺言書だけでなく、福祉制度や財産管理制度を組み合わせて考えることが重要です。
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。
遺産分割協議では、預貯金、不動産、有価証券、動産などの財産について、誰が何を取得するかを決めます。
相続人全員の合意があれば、法定相続分とは異なる分け方もできます。
しかし、全員が合意しなければ、協議は成立しません。
遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所の遺産分割調停を利用することがあります。
調停では、家庭裁判所の調停委員会が関与し、相続人の話を聞きながら合意を目指します。
それでも話し合いがまとまらない場合は、遺産分割審判へ移行し、裁判官が判断することになります。
調停や審判になると、解決までに時間がかかり、精神的な負担も大きくなります。
遺言書がなく、遺産分割協議もまとまらない場合、相続手続きが進まないことがあります。
たとえば、次のような手続きです。
預貯金の解約
不動産の名義変更
証券口座の相続手続き
自宅の売却
施設費や生活費の確保
障害のある家族の生活費や住まいに関係する財産がある場合、手続きの遅れは生活に直接影響することがあります。
遺言書があれば、承継先が明確になり、手続きを進めやすくなります。
遺言書では、誰にどの財産を承継させるかを決めることができます。
たとえば、次のような内容です。
配偶者に自宅を相続させる
障害のある子に預貯金を多めに残す
介護をしてくれた子に多く残す
長男に事業用財産を承継させる
内縁の配偶者に財産を遺贈する
お世話になった人に財産を遺贈する
公益団体へ寄付する
遺言書がない場合、相続人以外の人は原則として財産を相続できません。
相続人以外に財産を渡したい場合は、遺言書が特に重要です。
遺言書で財産の承継先が明確に指定されていれば、遺産分割協議をしなくても手続きを進められる場合があります。
たとえば、自宅を配偶者に相続させる、預貯金を長女に相続させる、その他一切の財産を長男に相続させるなどです。
相続人全員で話し合う必要が減るため、手続きの負担や感情的な対立を減らせます。
遺言内容を確実に実現したい場合は、公正証書遺言が適しています。
公証人が関与し、原本が公証役場で保管され、家庭裁判所の検認が不要だからです。
特に、次のような場合は公正証書遺言を検討しましょう。
障害のある子がいる
相続人同士の関係が不安
再婚している
前婚の子がいる
子どもがいない
不動産がある
相続人以外へ遺贈したい
遺留分への配慮が必要
遺言執行者を指定したい
将来、遺言書の有効性を争われたくない
費用を抑えて早めに準備したい場合は、自筆証書遺言も選択肢になります。
ただし、自筆証書遺言は方式不備や内容の曖昧さに注意が必要です。
作成後は、法務局の保管制度を利用することで、紛失や発見されないリスクを減らせます。
まず自筆証書遺言で準備し、後に公正証書遺言へ作り直すことも可能です。
大切なのは、何も準備しないままにしないことです。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために、必要な手続きを行う人です。
たとえば、次のような手続きを行います。
預貯金の解約・払戻し
不動産の名義変更に必要な手続き
有価証券の相続手続き
受遺者への財産引渡し
相続人や受遺者への通知
遺言内容の実現に必要な財産管理
遺言執行者を指定しておくことで、相続開始後の手続きが進みやすくなります。
遺言執行者には、相続人を指定することもできます。
また、行政書士、弁護士、司法書士などの専門家や第三者を指定することも可能です。
ただし、未成年者や破産者は遺言執行者になることができません。
相続人同士の関係が良好で、手続きが単純な場合は、相続人を指定することもあります。
一方で、相続人間の対立が予想される場合、相続人以外への遺贈がある場合、障害のある子の生活支援に関わる財産承継がある場合は、専門家を指定することも検討しましょう。
専門家を遺言執行者に指定する場合は、報酬が発生します。
遺言書の中で遺言執行者報酬を定めることもあります。
財産内容、手続きの難易度、相続人の人数、遺贈の有無、不動産の有無などによって負担が変わります。
事前に報酬や業務範囲を確認しておきましょう。
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