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遺言書を破棄、偽造、変造、隠匿する行為は、非常に重大な問題です。
民事上は、相続欠格により相続権を失う可能性があります。
また、刑事上も、私用文書等毀棄罪や有印私文書偽造罪などの犯罪が成立する可能性があります。
ただし、実際に「誰が遺言書を破棄したのか」「本当に偽造なのか」を証明することは簡単ではありません。
遺言書の破棄とは、遺言書の効用を失わせる行為をいいます。
たとえば、次のような行為です。
遺言書を破る
遺言書を燃やす
遺言書を捨てる
遺言書を水で濡らして読めなくする
遺言書を裁断する
遺言書の重要部分を消す
遺言書を破棄されると、遺言者の意思を実現できなくなる可能性があります。そのため、遺言書の破棄は、相続上きわめて重大な行為です。
偽造とは、作成権限のない人が、他人名義の文書を作成することをいいます。
遺言書の場面では、たとえば次のような行為が考えられます。
相続人が遺言者の名前を使って遺言書を作る
遺言者の筆跡をまねて遺言書を書く
遺言者の押印を勝手に使って遺言書を作る
自分に有利な内容の遺言書を勝手に作成する
遺言書は、遺言者本人の意思に基づいて作成されるものです。
本人が作成していない遺言書は、有効な遺言書とはいえません。
変造とは、真正に成立した文書に対して、権限のない人が手を加え、内容を変更することをいいます。
遺言書の場面では、たとえば次のような行為です。
遺言書の金額を書き換える
財産を取得する人の名前を書き換える
遺言書の一部を消して別の内容にする
追記して自分に有利な内容に変更する
日付を書き換える
もともと遺言者本人が作成した遺言書であっても、後から第三者が勝手に書き換えれば、変造の問題が生じます。
隠匿とは、遺言書を隠して、他の相続人や関係者が発見できないようにする行為です。
たとえば、次のような行為です。
見つけた遺言書を自分だけで保管し続ける
遺言書の存在を知っているのに他の相続人に知らせない
遺言書を金庫や引き出しに隠す
不利な内容の遺言書を発見されないようにする
遺言書を破らなくても、隠して使えない状態にする行為は、遺言者の意思を妨げる重大な行為です。
相続人が遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した場合、その相続人は相続欠格となる可能性があります。
相続欠格とは、法律上当然に相続人となる資格を失う制度です。
相続欠格になると、その人は被相続人の相続人として財産を取得できません。
民法では、相続に関する被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した者は、相続人となることができないとされています。
つまり、遺言書を自分に不利だからといって破棄したり、自分に有利な内容に偽造したりした相続人は、相続権を失う可能性があります。
相続欠格は、法律上は当然に発生するものです。
しかし、相続欠格者であることが、戸籍に自動的に記載されるわけではありません。
そのため、実務上は、相続欠格者を除いて相続手続きを進めるために、相続欠格を証明する資料が必要になることがあります。
相続欠格者本人が認める場合と、認めない場合で対応が異なります。
他人の遺言書を破棄した場合、私用文書等毀棄罪が成立する可能性があります。
私用文書等毀棄罪とは、権利義務や事実証明に関する他人の文書を毀棄した場合に問題となる犯罪です。
遺言書は、相続に関する重要な文書です。
そのため、他人が勝手に破棄すれば、刑事上の問題にもなり得ます。
遺言者の名前や印鑑を使って、勝手に遺言書を作成した場合、有印私文書偽造罪が成立する可能性があります。
遺言書は、遺言者本人が作成するべき文書です。
相続人が本人になりすまして作成した遺言書は、民事上無効になるだけでなく、刑事責任を問われる可能性があります。
遺言書が偽造・変造された疑いがある場合は、遺言書の有効性を争うことになります。
たとえば、遺言無効確認請求訴訟を検討します。
遺言無効確認請求とは、裁判所に対して、その遺言書が無効であることの確認を求める手続きです。
遺言書が無効と判断されれば、その遺言書は存在しなかったものとして扱われます。
偽造が疑われる場合は、筆跡や作成状況を確認します。たとえば、次のような点です。
筆跡が本人のものか
署名が本人のものか
押印が本人のものか
文字の震えや筆圧に不自然な点がないか
遺言書の内容が本人の意思と合っているか
遺言書作成時に本人が文字を書ける状態だったか
認知症や病気の状況はどうだったか
遺言書の保管状況に不自然な点がないか
筆跡鑑定が行われることもあります。
ただし、筆跡鑑定だけで必ず偽造が明らかになるとは限りません。
医療記録、介護記録、日記、メール、過去の筆跡、関係者の証言など、複数の資料を組み合わせて判断することが重要です。
遺言者本人が自分の遺言書を破棄することは可能です。
遺言は、遺言者本人の最終意思を尊重する制度です。
そのため、遺言者は、いつでも遺言の全部または一部を撤回することができます。
自分で作成した自筆証書遺言を破棄することは、遺言撤回の一つとして問題になることがあります。
遺言を撤回したい場合は、単に古い遺言書を破棄するだけでなく、新しい遺言書を作成する方法もあります。
前の遺言書と後の遺言書の内容が抵触する場合、その抵触する部分については、後の遺言書で前の遺言書を撤回したものとみなされます。
遺言内容を変更したい場合は、古い遺言書を破棄するよりも、新しい遺言書を作成して内容を明確にする方が安全です。
遺言書の破棄や偽造を防ぐ有効な方法は、公正証書遺言を作成することです。
公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言書です。
原本は公証役場で保管されるため、相続人が勝手に破棄したり、内容を書き換えたりすることは困難です。
また、公証人が関与するため、方式不備や偽造をめぐる争いを防ぎやすくなります。
相続人間で争いが予想される場合や、遺言内容を確実に残したい場合は、公正証書遺言をおすすめします。
自筆証書遺言を作成したい場合は、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法があります。
この制度を利用すると、自筆証書遺言の原本が法務局で保管されます。
法務局で保管されるため、遺言書の紛失、破棄、隠匿、改ざんを防ぎやすくなります。
また、法務局で保管された自筆証書遺言については、相続開始後の家庭裁判所の検認が不要です。
ただし、法務局の保管制度は、遺言内容の有効性まで保証する制度ではありません。
遺言書の内容を確実に実現するためには、遺言執行者を指定しておくことも重要です。
遺言執行者は、相続開始後に遺言内容を実現するための手続きを行う人です。
遺言書を発見した後、遺言執行者が速やかに手続きを進めることで、相続人による隠匿や勝手な遺産分割を防ぎやすくなります。
相続人間で対立が予想される場合は、専門家を遺言執行者に指定する方法もあります。
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大山悠太
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