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ご家族間での話し合い、情報共有は重要
どちらも同じ“お金”に見えますが、法律上の性質は少し異なります。特に遺言書を作成する場合、現金と預貯金を同じものとして曖昧に書いてしまうと、相続開始後に「これは誰が受け取るのか」「現金も含まれるのか」といった争いにつながることがあります。
ここでは、遺産相続における現金・預貯金の基本的な取扱いと、遺言書に記載する際の注意点をわかりやすく解説します。
相続が開始すると、亡くなった方が持っていた財産上の権利や義務は、原則として相続人に引き継がれます。ただし、本人だけに認められる性質の権利・義務、いわゆる一身専属的なものは相続の対象になりません。最高裁の決定でも、相続人が複数いる場合、相続財産は相続開始とともに共同相続人に属し、遺産分割によって整理されることが前提とされています。
相続財産には、たとえば次のようなものが含まれます。
自宅、土地、収益物件などの不動産
銀行口座、ゆうちょ口座などの預貯金
株式、投資信託、国債などの有価証券
自宅や金庫に保管している現金
車、貴金属、骨董品などの動産
借入金、未払金などのマイナス財産
この中でも、現金と預貯金は日常的には同じ「お金」として扱われますが、遺言書を書く場面では分けて考える必要があります。
現金は、手元に存在する紙幣や硬貨そのものです。自宅の金庫、財布、貸金庫などに保管されている現金は、相続財産の一部として扱われます。
一方、預貯金は、金融機関に預けているお金そのものではなく、法的には「金融機関に対して払戻しを求める権利」として考えられます。つまり、銀行口座に1,000万円ある場合、相続人が承継するのは「その金融機関から1,000万円の払戻しを受けることができる権利」です。
現在の相続実務では、現金も預貯金も遺産分割の対象として扱われます。
亡くなった方の現金は、誰か一人が自宅で保管していたとしても、その人のものになるわけではありません。遺産分割協議が成立するまでは、相続人全員に関係する財産として管理する必要があります。
そのため、現金を保管している相続人は、次のような点に注意が必要です。
勝手に使わない
金額を記録しておく
保管場所を明確にする
他の相続人に説明できる状態にしておく
葬儀費用などに使った場合は領収書を残す
たとえ家族であっても、相続財産である現金を個人的に使ってしまうと、後からトラブルになる可能性があります。特に、現金の存在を隠したり、実際より少なく申告したりすると、相続人間の争いだけでなく、税務上の問題につながることもあります。
以前は、預貯金について「相続開始と同時に法定相続分で当然に分かれる」と考えられていた時期がありました。そのため、理論上は各相続人が自分の法定相続分に応じて払戻しを求められるとされていました。
しかし、この考え方では不公平が生じることがありました。たとえば、相続人の一人が生前に多額の贈与を受けていた場合でも、預貯金だけは法定相続分で取得できるとなると、相続人間の実質的な公平が保ちにくくなります。
そこで最高裁は、預貯金は現金に近い財産であり、遺産分割の中で調整に使いやすい財産であることなどを理由に、預貯金も遺産分割の対象になると判断しました。
現在では、預貯金についても、原則として相続人全員で遺産分割協議を行い、「誰が、どの口座を、どの割合で取得するのか」を決めていく必要があります。
預貯金が遺産分割の対象になると、協議が終わるまで一切引き出せないのではないかと心配される方もいます。
実際、相続開始後は金融機関が口座を凍結することが多く、相続人の一人が自由に全額を引き出すことはできません。ただし、葬儀費用や当面の生活費など、急に資金が必要になる場面もあります。
そのため、現在は一定の範囲で、遺産分割前でも預貯金の払戻しを受けられる制度があります。法務省の資料でも、家庭裁判所の判断を経ずに一定額の払戻しを受けられる制度や、家庭裁判所の判断による仮払い制度が説明されています。金融機関ごとの上限は150万円とされています。
ただし、実際に払戻しを受けるには、戸籍資料や相続関係を証明する書類などが必要になります。金融機関によって手続きや必要書類が異なるため、事前確認が重要です。
遺言書を作成するときに特に注意したいのが、現金の書き漏れです。
たとえば、遺言書に次のように書いたとします。
「〇〇銀行〇〇支店の普通預金を〇〇に相続させる」
この場合、指定されているのはあくまでその銀行口座の預貯金です。自宅金庫の現金、財布の中の現金、貸金庫内の現金まで当然に含まれるとは限りません。
現金を特定の人に相続させたい場合は、預貯金とは別に、現金についても明確に記載することが大切です。
例:
「自宅金庫内に保管している現金は、長女〇〇に相続させる」
「相続開始時に遺言者が所有する現金は、すべて妻〇〇に相続させる」
このように、現金を含めるのか、含めないのかをはっきり書くことで、相続開始後の解釈の違いを防ぎやすくなります。
遺言書では、「金融資産を相続させる」という表現が使われることがあります。
一般的には、金融資産という言葉には、預貯金、有価証券、投資信託、国債などが含まれると考えられます。しかし、遺言書の文脈によっては、「金融資産」に現金が含まれるのかどうかが問題になる場合があります。
特に、次のような書き方は注意が必要です。
「預貯金、有価証券、投資信託その他の金融資産を長男に相続させる」
この場合、現金を含める趣旨なのか、預貯金や証券類だけを指しているのか、後から争いになる可能性があります。
現金も含めたい場合は、「現金、預貯金、有価証券、投資信託その他一切の金融資産」のように、現金を明記しておく方が安全です。反対に、現金を別の人に相続させたい場合は、現金を別項目として分けて書く必要があります。
遺言書では、個別の財産を指定するだけでなく、最後に「その他一切の財産」を誰に取得させるかを決めておくことが重要です。
たとえば、預貯金や不動産については細かく書いていても、現金について書き忘れていた場合、その現金は遺言書で指定されていない財産として、遺産分割協議の対象になる可能性があります。
そのため、遺言書には次のような条項を入れておくことがあります。
「本遺言に記載のないその他一切の財産は、妻〇〇に相続させる」
このような記載があると、書き漏れた財産が見つかった場合でも、誰が取得するのかを判断しやすくなります。
ただし、「その他一切の財産」には、想定していなかった財産や負担のある財産が含まれることもあります。財産の内容や家族関係に応じて、慎重に設計することが大切です。
金融機関名、支店名、預金種別、口座番号を記載します。残高は変動するため、遺言書本文では金額を固定せず、「相続開始時の残高」としておく方法もあります。
「自宅金庫内の現金」「貸金庫内の現金」「相続開始時に所有する現金すべて」など、どの現金を指すのかを明確にします。
「預貯金」とだけ書くと、手元現金が含まれない可能性があります。現金も対象にするなら、必ず「現金」と書きます。
自筆証書遺言では、財産目録についてはパソコン作成や通帳コピーの添付が認められています。ただし、財産目録の各ページには署名押印が必要です。法務省の資料でも、自筆証書遺言の方式緩和としてこの点が説明されています。
遺言書は、単に財産の分け方を書く書類ではありません。残されたご家族が迷わず手続きを進められるようにするための、大切な準備でもあります。法務省も、遺言は本人の最終意思を実現するだけでなく、相続をめぐる紛争を事前に防止する役割があると説明しています。
現金や預貯金は、相続財産の中でも特に身近で、分けやすいように見える財産です。しかし、実際には「現金が遺言書に書かれていない」「預貯金と金融資産の意味が曖昧」「誰が管理していた現金なのかわからない」といった理由で、相続人間の不信感につながることがあります。
遺言書を作成する際は、不動産や大きな財産だけでなく、現金・預貯金についても丁寧に整理しておくことが大切です。
出所:chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.moj.go.jp/content/001318284.pdf
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