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相続では、よく「法定相続分」と「遺留分」という言葉が出てきます。
どちらも相続人が取得できる財産の割合に関係する制度ですが、意味や使われる場面は大きく異なります。
簡単にいうと、法定相続分は、遺産を分けるときの基本的な目安です。
一方、遺留分は、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分です。
ご家族間での話し合い、情報共有は重要
民法900条では、相続人の組み合わせに応じて、配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹の相続分が定められています。たとえば、配偶者と子が相続人である場合、配偶者と子の相続分は各2分の1とされています。
法定相続分は、遺言書がない場合や、相続人同士で遺産分割協議をするときの基本的な目安になります。
ただし、法定相続分どおりに分けなければならないわけではありません。
相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる内容で遺産分割をすることもできます。
たとえば、相続人が長男と長女の2人で、法定相続分が2分の1ずつであっても、長男が自宅不動産を取得し、長女が預貯金を取得するなど、実際の財産内容に合わせて自由に分けることができます。
法定相続分は、相続人間で遺産を分ける際の基準になります。
しかし、相続人全員が納得している場合には、法定相続分と異なる割合で分けても問題ありません。
たとえば、次のような分け方も可能です。
配偶者がすべての財産を取得する
長男が不動産を取得し、長女が預貯金を取得する
介護をしていた相続人に多めに分ける
事業を承継する相続人に会社関係の財産を集中させる
相続人の一人が取得分をゼロにすることに同意する
このように、法定相続分はあくまでも遺産分割の基準であり、相続人全員の合意があれば柔軟に変更できます。
一方で、相続人同士の話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停や審判を利用することがあります。裁判所は、遺産分割について話し合いがつかない場合、家庭裁判所の遺産分割調停または審判を利用できると案内しています。
被相続人は、遺言書によって財産を自由に処分できます。
しかし、その結果、配偶者や子など一定の相続人がまったく財産を取得できなくなると、生活や相続への期待が大きく害されることがあります。
そこで、民法は兄弟姉妹以外の一定の相続人に対し、最低限の取り分である遺留分を認めています。民法1042条では、直系尊属のみが相続人である場合は被相続人の財産の3分の1、それ以外の場合は2分の1が遺留分の割合とされています。
たとえば、父が「全財産を長男に相続させる」という遺言書を残した場合でも、他の子に遺留分がある場合には、その子は長男に対して遺留分侵害額請求をすることができます。
現在の民法では、遺留分を侵害された人は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することになります。法務省も、相続法改正により、遺留分に関する権利の行使によって金銭債権が生じる仕組みになったと説明しています。
つまり、遺留分は「遺産そのものを当然にもらえる権利」ではなく、遺留分を侵害された場合に、金銭で不足分を請求できる権利です。
法定相続分は、遺産分割の目安です。
遺留分は、一定の相続人に保障された最低限の取り分です。
法定相続分は、相続人全員の合意があれば変更できます。
遺留分は、遺言書でゼロにしても、権利者が請求すれば金銭請求の問題になります。
法定相続分は、兄弟姉妹にも認められます。
遺留分は、兄弟姉妹には認められません。
法定相続分は、主に遺産分割で使われます。
遺留分は、遺言や生前贈与によって最低限の取り分が侵害された場合に問題になります。
法定相続分が認められるのは、法定相続人です。
法定相続人には、配偶者と血族相続人がいます。
配偶者は常に相続人になります。
血族相続人には順位があります。
第1順位は子です。
子がすでに亡くなっている場合には、孫などが代襲相続人になることがあります。
第2順位は父母などの直系尊属です。
第1順位の相続人がいない場合に相続人になります。
第3順位は兄弟姉妹です。
第1順位、第2順位の相続人がいない場合に相続人になります。
兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、甥や姪が代襲相続人になることがあります。
遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の相続人です。
具体的には、次の人です。
配偶者
子
孫などの代襲相続人
父母
祖父母などの直系尊属
一方で、兄弟姉妹には遺留分がありません。
甥や姪にも遺留分はありません。
そのため、相続人が兄弟姉妹や甥・姪だけの場合には、遺言書で第三者に全財産を遺贈しても、兄弟姉妹や甥・姪は遺留分侵害額請求をすることができません。
この点は、子どもがいない方や、兄弟姉妹が相続人になる方が遺言書を作成する際に非常に重要です。
法定相続分が使われる代表的な場面は、遺産分割です。
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を取得するかを決めます。
このとき、法定相続分は話し合いの目安になります。
たとえば、相続人が配偶者と子2人の場合、配偶者の法定相続分は2分の1、子2人はそれぞれ4分の1です。
ただし、実際の遺産分割では、不動産、預貯金、株式、車、家財など財産の種類がさまざまです。
そのため、法定相続分どおりにきっちり分けることが難しい場合もあります。
このような場合には、相続人全員の合意により、財産の内容に応じた分け方を決めます。
遺留分が問題になるのは、主に遺言書や生前贈与によって、一定の相続人の最低限の取り分が侵害された場合です。
たとえば、次のようなケースです。
遺言書で長男に全財産を相続させた
配偶者以外の第三者に大部分の財産を遺贈した
内縁の配偶者に全財産を遺贈した
相続人の一人に生前贈与を集中させた
事業承継のために一人の子へ自社株式を集中させた
前婚の子にまったく財産を残さない遺言書を作成した
このような場合、遺留分を有する相続人は、財産を多く取得した人に対して、遺留分侵害額請求を行うことがあります。
遺留分は、遺産分割の話し合いとは別に、個別に請求する権利です。
他の相続人が請求しなくても、自分だけが遺留分侵害額請求をすることもできます。
法定相続分と遺留分は、割合も異なります。
たとえば、相続人が配偶者と子2人の場合を考えます。
法定相続分は、配偶者が2分の1、子2人がそれぞれ4分の1です。
一方、遺留分は、全体で2分の1です。
各相続人の遺留分は、法定相続分に全体の遺留分割合を掛けて計算します。
そのため、配偶者の遺留分は、2分の1 × 2分の1 = 4分の1です。
子2人の遺留分は、それぞれ4分の1 × 2分の1 = 8分の1です。
このように、遺留分は通常、法定相続分よりも少ない割合になります。
法定相続分と遺留分では、権利行使の方法も異なります。
法定相続分は、主に遺産分割協議、遺産分割調停、遺産分割審判の中で問題になります。
相続人全員で話し合い、誰がどの財産を取得するかを決めます。
一方、遺留分は、遺留分侵害額請求によって行使します。
遺留分を侵害された人が、財産を多く取得した人に対して、金銭の支払いを求める手続です。
話し合いでまとまらない場合には、家庭裁判所の調停や、最終的には訴訟で解決を図ることになります。
裁判所は、遺産分割について話し合いがつかない場合には家庭裁判所の遺産分割調停または審判を利用できると説明しており、調停が不成立となった場合には審判手続が開始されます。
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