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ご家族間での話し合い、情報共有は重要
このように、被相続人である親も、相続人である子も高齢である相続を、一般に老老相続と呼ぶことがあります。
老老相続は、法律上の正式な用語ではありません。
しかし、高齢化が進む中で、相続手続を行う相続人自身が認知症や要介護状態になっていたり、体力的に手続を進めることが難しかったりするケースが増えています。
相続人が高齢の場合、これらの手続が大きな負担となり、相続財産が放置されたり、親族間の話し合いが進まなかったりすることがあります。
老老相続とは、被相続人である高齢の親と、相続人である子どもの双方が高齢になっている相続を指す言葉です。
たとえば、90代の親が亡くなり、相続人である子どもがすでに70代になっているようなケースです。
かつては、親が亡くなる時点で子どもが40代から60代であることも多く、相続手続を進める体力や判断力が比較的十分にある場合が多かったといえます。
しかし、平均寿命が延びたことにより、相続が発生する年齢も高くなっています。
内閣府の高齢社会白書では、日本の平均寿命は令和5年現在で男性81.09年、女性87.14年となっており、今後も平均寿命は延びると見込まれています。
このような社会状況の中で、相続人自身も高齢になり、相続手続を進める負担が重くなるケースが増えています。
老老相続が増えている背景には、日本社会全体の高齢化があります。
親が長生きすること自体は喜ばしいことです。
しかし、親が90代まで長生きすると、子ども世代も60代後半から70代、場合によっては80代に近づいていることがあります。
子ども世代もすでに退職していたり、年金生活に入っていたり、持病を抱えていたりすることがあります。
そのような状況で相続が発生すると、役所や金融機関、法務局、税務署などでの手続が大きな負担になります。
また、高齢の親を高齢の子が介護する「老老介護」が長く続いた後に相続が発生することもあります。
介護で心身ともに疲れている状態で相続手続を始めるため、冷静な判断や親族間の話し合いが難しくなることがあります。
老老相続では、生前にどれだけ準備していたかによって、相続開始後の負担が大きく変わります。
財産の内容が整理されておらず、どの銀行に口座があるのか、どこに不動産があるのか、保険契約があるのか分からない状態だと、高齢の相続人が一から調査しなければなりません。
また、遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
相続人の中に高齢者や認知症の方がいると、協議自体が進まなくなることもあります。
一方で、生前に財産目録を作成し、遺言書を準備し、家族で希望を共有しておけば、相続開始後の混乱を大きく減らすことができます。
老老相続では、相続開始後に頑張るよりも、生前の準備が何より重要です。
老老相続で特に問題になりやすいのが、相続人の一人が認知症になっているケースです。
遺産分割協議は、相続人全員が内容を理解し、自分の意思で合意する必要があります。
そのため、判断能力が十分でない相続人がいる場合、そのまま遺産分割協議を成立させることは難しくなります。
認知症の程度によっては、成年後見制度の利用を検討する必要があります。
裁判所は、後見等の申立てから審判まではおおむね1か月から2か月程度かかること、候補者として記載した人が必ず後見人等に選任されるわけではないこと、専門職が選任される場合もあることを案内しています。
また、成年後見制度は、遺産分割や預貯金解約などの目的が終わったからといって、家族の希望だけで自由に終了できる制度ではありません。裁判所も、後見等が開始されると、申立てのきっかけとなった事柄が解決した後も、本人の能力が回復するか本人が亡くなるまで手続は続くと説明しています。
そのため、「相続手続のためだけに一時的に後見人を立てる」という感覚で考えると、想定外の負担が生じることがあります。
老老相続では、相続人全員が高齢であるため、遺産分割協議が進みにくくなることがあります。
たとえば、相続人が遠方に住んでいて移動が難しい、体調不良で話し合いに参加できない、書類の内容を理解するのに時間がかかる、といった事情です。
また、兄弟姉妹全員が高齢になっていると、それぞれの配偶者や子どもが話し合いに関与し、意見が複雑になることもあります。
特に不動産や預貯金が生活資金に関わる場合、手続が進まないことが相続人の生活に直接影響することがあります。
被相続人が亡くなると、金融機関が死亡を把握した時点で、預貯金口座が凍結されることがあります。
口座が凍結されると、原則として相続手続が終わるまで自由に引き出すことができません。
葬儀費用、医療費、施設費、公共料金、固定資産税などの支払いが必要であっても、相続人がすぐに預金を使えないことがあります。
老老相続では、相続人自身も年金生活であることが多く、立替えが難しい場合もあります。
そのため、生前から、どの費用をどの口座から支払うのか、葬儀費用や当面の生活費をどう確保するのかを考えておくことが重要です。
老老相続の対策として、まず重要なのが財産の棚卸しです。
どの銀行に口座があるのか、どの証券会社に有価証券があるのか、どこに不動産があるのか、保険契約はあるのか、借金はあるのかを整理しておきます。
財産の内容が分からないと、相続開始後に高齢の相続人が一から調査しなければなりません。
これは大きな負担になります。
財産目録には、次のような内容を整理しておくとよいでしょう。
預貯金口座
証券口座
不動産の所在地
固定資産税通知書
生命保険
年金関係
借入金
クレジットカード
デジタル資産
貸金庫
重要書類の保管場所
財産目録は、遺言書と一緒に作成しておくと、相続手続がスムーズになります。
老老相続では、遺言書の作成が非常に有効です。
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
しかし、相続人が高齢であったり、認知症になっていたり、遠方に住んでいたりすると、全員で協議することが難しくなります。
遺言書で誰にどの財産を承継させるかを明確にしておけば、遺産分割協議が必要になる場面を減らすことができます。
特に、次のような場合には遺言書の作成をおすすめします。
相続人が高齢である
相続人の中に認知症の不安がある
不動産がある
子どもがいない
前婚の子がいる
相続人同士が疎遠である
介護してくれた子に多く残したい
内縁の配偶者に財産を残したい
二次相続まで考えて財産分配したい
老老相続では、公正証書遺言で作成することも有効です。
公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言書であり、原本が公証役場に保管されます。
そのため、遺言書の紛失や改ざんのリスクを減らしやすく、相続開始後に遺言書を探す負担も軽くなります。
自筆証書遺言の場合でも、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法があります。法務省は、自筆証書遺言書保管制度について、遺言書の保管、相続人等の手続、証明書、通知などの仕組みを案内しています。
なお、自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、家庭裁判所で検認が必要になる場合があります。
裁判所は、遺言書の保管者または発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求しなければならないと案内しています。一方で、公正証書遺言や法務局で保管されている自筆証書遺言に関して交付される遺言書情報証明書は、検認の必要がありません。
高齢の相続人の負担を減らすという意味でも、遺言書の保管方法まで考えておくことが大切です。
老老相続では、遺言執行者の指定も重要です。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために必要な手続を行う人です。
遺言執行者を指定しておくことで、相続開始後の手続を進めやすくなります。
特に、相続人が高齢で手続が難しい場合や、相続人同士が疎遠な場合には、専門家を遺言執行者に指定しておくことも検討できます。
遺言執行者がいれば、金融機関手続、不動産手続の準備、受遺者への財産引渡しなどを進めやすくなります。
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