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相続時の預貯金仮払い制度とは?

初めに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

人が亡くなると、その人名義の銀行口座やゆうちょ銀行の貯金口座は、金融機関が死亡を把握した時点で凍結されます。

口座が凍結されると、原則として、預金の引き出し、振込、口座振替などができなくなります。

しかし、相続開始後すぐにお金が必要になることは少なくありません。

たとえば、葬儀費用、医療費、施設費、家賃、公共料金、当面の生活費などです。

遺産分割協議がまとまるまで預貯金を一切引き出せないと、相続人が費用を立て替えなければならず、生活や手続に支障が出ることがあります。

このような場合に利用できるのが、預貯金の仮払い制度です。

預貯金の仮払い制度を利用すると、遺産分割が成立する前であっても、各相続人が単独で、一定額まで被相続人名義の預貯金を払い戻せる場合があります。

預貯金仮払い制度とは

預貯金仮払い制度とは、遺産分割前であっても、各相続人が一定額まで被相続人名義の預貯金を払い戻せる制度です。

正式には、遺産分割前の相続預金の払戻し制度などと呼ばれます。

相続人全員の合意がなくても、一定の範囲であれば、相続人の一人が単独で金融機関に請求できます。

この制度は、相続人の当面の資金需要に対応するために設けられました。

たとえば、葬儀費用や生活費を支払う必要があるのに、遺産分割協議がまだまとまっていない場合などに利用できます。

ただし、自由にいくらでも引き出せる制度ではありません。

払戻しを受けられる金額には上限があり、金融機関ごとに必要書類の提出も必要です。

預貯金仮払い制度が始まった理由

被相続人が亡くなると、金融機関は不正出金や相続人間のトラブルを防ぐため、被相続人名義の口座を凍結します。

従来は、遺産分割協議がまとまるまで、相続人が単独で預貯金を引き出すことは難しい状況でした。

しかし、相続開始直後には、すぐにお金が必要になることがあります。

たとえば、葬儀費用、入院費、介護施設費、未払いの家賃、公共料金などです。

また、被相続人の収入や預貯金で生活していた配偶者や同居家族が、口座凍結により生活費を確保できなくなることもあります。

そこで、民法改正により、遺産分割前でも一定額を払い戻せる制度が設けられました。

預貯金仮払い制度は、相続人の生活や必要な支払いを支えるための制度といえます。

預貯金仮払い制度の方法

預貯金仮払い制度は、2019年7月1日から施行されています。

この制度により、相続人は、家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関の窓口で一定額まで払戻しを受けられるようになりました。

また、より大きな金額が必要な場合には、家庭裁判所の判断を受けて払戻しを受ける方法もあります。

つまり、預貯金仮払い制度には、大きく分けて次の2つの方法があります。

1つ目は、家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関で単独で払戻しを受ける方法です。

2つ目は、家庭裁判所に申し立てて、審判により預貯金の全部または一部を仮に取得する方法です。

一般的に利用しやすいのは、金融機関で直接手続をする方法です。

金融機関で仮払いを受ける方法

金融機関で仮払いを受ける方法では、各相続人が単独で一定額まで払戻しを請求できます。

遺産分割協議がまとまっていなくても、他の相続人全員の同意がなくても、一定の範囲内であれば利用できます。

ただし、相続人であること、法定相続分、被相続人の死亡などを確認するため、戸籍などの書類が必要になります。

また、金融機関によって必要書類や手続の流れが異なることがあります。

そのため、利用する前に、口座のある金融機関へ確認することが大切です。

仮払いで引き出せる金額の上限

金融機関で仮払いを受けられる金額は、次の計算式で求めます。

相続開始時の預貯金額 × 3分の1 × 払戻しを受ける相続人の法定相続分

ただし、同一の金融機関から払い戻せる金額は、150万円が上限です。

この150万円の上限は、同じ金融機関ごとに判断されます。

同じ銀行に複数の支店や複数の口座がある場合でも、その金融機関全体で150万円が上限になります。

一方、別の金融機関にも預貯金がある場合には、それぞれの金融機関で計算することになります。

仮払いを受けたお金は遺産分割で調整される

預貯金仮払い制度で払い戻されたお金は、最終的な遺産分割で調整されます。

つまり、仮払いを受けた相続人が、その分を先に取得したものとして扱われることになります。

たとえば、相続人の一人が葬儀費用のために100万円の仮払いを受けた場合、その100万円をどう扱うかは、後日の遺産分割で確認する必要があります。

仮払いを受けた金額や使い道を記録していないと、他の相続人との間でトラブルになることがあります。

そのため、仮払いを受けた場合は、金額、日付、使途、領収書を必ず残しておきましょう。

預貯金仮払い制度を利用できる場面

預貯金仮払い制度は、次のような場面で利用が検討されます。

葬儀費用を支払う必要がある

入院費や医療費を支払う必要がある

介護施設費を支払う必要がある

被相続人の家賃を支払う必要がある

公共料金や未払金を支払う必要がある

被相続人に生活費を頼っていた相続人が困っている

遺産分割協議がすぐにまとまらない

相続人が遠方にいて協議に時間がかかる

相続人間で誰が費用を立て替えるか決まらない

ただし、制度を利用できるからといって、安易に引き出してよいわけではありません。

使い道によっては、相続放棄や他の相続人との関係で問題になることがあります。

仮払いの必要書類

預貯金仮払い制度を利用するには、金融機関に必要書類を提出します。

一般的には、次のような書類が必要です。

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等

相続人全員の戸籍謄本等

法定相続情報一覧図の写し

払戻しを希望する相続人の印鑑証明書

払戻しを希望する相続人の本人確認書類

金融機関所定の請求書

通帳やキャッシュカード

法定相続情報一覧図の写しを利用できる場合には、戸籍一式の提出を省略できることがあります。

ただし、金融機関によって必要書類や取扱いが異なります。

事前に口座のある金融機関へ確認しましょう。

家庭裁判所の判断により仮払いを受ける方法

金融機関での仮払い制度では、払戻額に上限があります。

そのため、必要な金額に足りない場合があります。

このような場合には、家庭裁判所の判断により、相続預金の全部または一部を仮に取得する方法があります。

これは、遺産分割の調停や審判が家庭裁判所に申し立てられている場合に、家庭裁判所へ申し立てて審判を得ることで、金融機関から単独で払戻しを受ける方法です。

ただし、利用できるのは、生活費の支弁、債務の弁済などの事情により、相続預金の仮払いの必要性があり、かつ他の共同相続人の利益を害しない場合に限られます。

金融機関窓口での仮払い制度よりも手続は重くなりますが、150万円の上限では足りない場合に検討されることがあります。

家庭裁判所を利用する方法の注意点

家庭裁判所を利用する方法は、単に「もっと多く引き出したい」という理由だけで認められるものではありません。

遺産分割の調停や審判が申し立てられていること、預貯金を払い戻す必要性があること、他の相続人の利益を害しないことなどが問題になります。

また、家庭裁判所への申立てには、資料の準備や手続の時間が必要です。

葬儀費用や生活費などで急いでいる場合でも、すぐに払戻しを受けられるとは限りません。

そのため、まずは金融機関での仮払い制度を確認し、それでも足りない場合に家庭裁判所の方法を検討する流れが一般的です。

家庭裁判所での手続が必要な場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

仮払いを受ける前に他の相続人へ連絡する

預貯金仮払い制度は、相続人の一人が単独で利用できる制度です。

しかし、単独で利用できるからといって、他の相続人に何も知らせずに引き出すと、後でトラブルになることがあります。

制度上は単独で請求できる場合でも、可能であれば事前に他の相続人へ連絡し、使い道を説明しておくことが望ましいです。

連絡が難しい場合でも、引き出した金額と使途を記録しておきましょう。

領収書や支払記録を必ず残す

仮払いを受けたお金を使った場合には、必ず領収書や支払記録を残しましょう。

後日の遺産分割協議で、仮払いを受けた金額や使い道が問題になることがあります。

特に、葬儀費用、医療費、施設費、家賃、公共料金などに使った場合は、次のような資料を保管しておきましょう。

葬儀社の請求書

葬儀費用の領収書

医療費の領収書

介護施設費の請求書

家賃や公共料金の支払明細

振込明細

通帳のコピー

いつ、いくら、何に使ったかのメモ

使途を説明できる資料があれば、他の相続人から使い込みを疑われるリスクを減らせます。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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