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相続した賃貸不動産の家賃収入も遺産分割が必要?

初めに

相続開始後に賃貸不動産から発生した家賃収入は、原則として遺産分割の対象ではありません。

最高裁は、相続開始から遺産分割までの間に、遺産である賃貸不動産から生じた賃料債権は、遺産とは別個の財産であり、各共同相続人が相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得すると判断しています。

つまり、遺産分割によって最終的にその不動産を取得した相続人が、相続開始時にさかのぼって家賃をすべて取得するわけではありません。

ただし、実務上は、相続人全員が合意すれば、相続開始後の家賃収入も遺産分割協議の中でまとめて清算することがあります。

相続開始後の家賃収入は原則として遺産分割の対象ではない

相続開始後に賃貸不動産から発生する家賃収入は、原則として遺産分割の対象ではありません。

遺産分割の対象になるのは、基本的に、被相続人が死亡時に有していた財産です。

一方、相続開始後の家賃収入は、被相続人が死亡した後に発生した収益です。

そのため、相続開始時点で被相続人が所有していた財産そのものではなく、相続開始後に遺産から生じた別個の財産として扱われます。

たとえば、父が亡くなった時点で賃貸アパートを所有していた場合、そのアパート自体は遺産分割の対象になります。

しかし、父の死亡後、遺産分割が終わるまでの間に発生した家賃収入は、アパート本体とは別に扱われます。

家賃収入は各相続人が法定相続分に応じて取得する

遺産分割が終わるまでの間、賃貸不動産は共同相続人の共有状態になります。

民法898条も、相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属すると定めています。

そのため、賃貸不動産から発生する家賃収入も、原則として各相続人が相続分に応じて取得します。

たとえば、父が亡くなり、相続人が長男、長女、二男の3人で、それぞれ法定相続分が3分の1ずつの場合です。

父の死亡後、遺産分割が終わるまでに賃貸アパートから毎月30万円の家賃収入が発生した場合、原則として、各相続人は月10万円ずつ取得することになります。

家賃を実際に誰の口座で管理しているかにかかわらず、法律上の帰属は相続分に応じて考えます。

遺産分割で不動産を取得した人が過去の家賃を全部もらえるわけではない

遺産分割協議の結果、長男が賃貸アパートを取得することになった場合でも、相続開始後から遺産分割成立までの家賃収入を長男がすべて取得するわけではありません。

たとえば、父が亡くなってから2年後に遺産分割協議が成立し、長男が賃貸アパートを取得したとします。

この場合、遺産分割成立後の家賃収入は、賃貸アパートを取得した長男に帰属します。

一方、父の死亡後から遺産分割成立までの2年間に発生した家賃収入は、原則として相続人全員が相続分に応じて取得します。

後で不動産を取得した人が、過去の家賃収入まで独占できるわけではありません。

相続開始前に発生していた未収家賃は遺産分割の対象になる

相続開始後の家賃収入と区別すべきものに、相続開始前にすでに発生していた未収家賃があります。

たとえば、被相続人が亡くなる前の月までに発生していた家賃で、賃借人がまだ支払っていなかったものです。

これは、被相続人が死亡時に有していた賃料債権です。

したがって、相続開始時に存在していた未収家賃債権は、相続財産として遺産分割の対象になる可能性があります。

一方、相続開始後に発生した家賃は、被相続人が死亡時に有していた債権ではありません。

この違いを整理することが重要です。

相続開始後の家賃を遺産分割協議でまとめて処理することはできる

法律上、相続開始後の家賃収入は遺産とは別個の財産です。

しかし、実務上は、相続人全員が合意すれば、遺産分割協議の中で家賃収入もまとめて清算することができます。

たとえば、次のような処理です。

相続開始後の家賃収入を一覧表にする

管理費、修繕費、固定資産税などを控除する

残額を相続分に応じて分配する

賃貸不動産を取得する相続人が、他の相続人に代償金として支払う

他の遺産の取得額と調整する

遺産分割協議書に清算条項を入れる

相続人全員が合意しているのであれば、家賃収入を別途請求するよりも、遺産分割協議の中で一括処理した方が実務上スムーズなことがあります。

被相続人名義の預貯金口座に家賃が入金されていた場合

相続開始後の家賃が、被相続人名義の預貯金口座にそのまま入金され続けることがあります。

たとえば、賃借人に振込口座変更を伝えておらず、亡くなった父名義の口座に家賃が入り続けていた場合です。

この場合、口座残高としては、相続開始時に存在していた預貯金と、相続開始後に入金された家賃が混在します。

預貯金債権については、最高裁大法廷平成28年12月19日決定により、共同相続された普通預金・通常貯金・定期貯金は相続開始と同時に当然分割されるのではなく、遺産分割の対象になるとされています。

そのため、相続開始後の家賃が被相続人名義口座に入金されている場合には、預貯金口座残高として一体的に遺産分割協議で処理するか、相続開始時残高と相続開始後の家賃収入を分けて清算するかを、相続人間で整理する必要があります。

遺産分割成立後の家賃収入は不動産取得者に帰属する

遺産分割協議が成立し、賃貸不動産を取得する相続人が決まった後は、その不動産から発生する家賃収入は、原則として取得者に帰属します。

たとえば、遺産分割協議により長男がアパートを取得した場合、協議成立後の家賃収入は長男のものになります。

ただし、協議成立日、所有権移転登記日、賃借人への通知日、家賃振込先変更日がずれることがあります。

そのため、遺産分割協議書では、「いつ以降の家賃を取得者が取得するのか」「いつまでの家賃を相続人全員で清算するのか」を明確にしておくと安心です。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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