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親の戸籍を抜けても子は相続人

初めに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

相続手続きでは戸籍を使用するため、「亡くなった親と同じ戸籍に入っていなければ相続できない」と誤解されることがあります。

しかし、相続人になるかどうかは、死亡時に同じ戸籍へ入っていたかではなく、亡くなった人との法律上の親族関係によって決まります。

結婚して新しい戸籍を作った場合や、両親の離婚によって一方の親の戸籍から抜けた場合でも、法律上の親子関係が続いていれば、子は原則として親の相続人です。

親の戸籍から抜けても親子関係はなくならない

民法では、被相続人の子を第一順位の相続人とし、被相続人の配偶者は原則として常に相続人になると定めています。

相続人になる条件として、「被相続人と同じ戸籍に入っていること」は定められていません。したがって、婚姻などによって親の戸籍から抜けても、それだけで相続権を失うことはありません。

例えば、父親が亡くなった時点で次の家族がいたとします。

父親の妻

結婚して別の戸籍に入っている長女

父親と同じ戸籍に残っている長男

この場合、長女も長男も父親の法律上の子であるため、原則として同じ順位の相続人です。

長女が結婚して姓や戸籍が変わっていることや、長男が父親と同居していることだけを理由に、相続権に差が生じるわけではありません。

戸籍から抜けることと親子関係の終了は別の問題

戸籍は、出生、婚姻、離婚、死亡、養子縁組などの身分関係を登録し、公証する制度です。

一つの戸籍に誰が記載されているかと、法律上どのような親族関係があるかは、関連していますが同じ問題ではありません。法務省も、戸籍は法律上の親子関係を公証するものと説明しています。

子が親の戸籍から抜ける代表的な場面には、次のようなものがあります。

結婚して夫婦の新しい戸籍を作った

両親の離婚後、母親または父親の戸籍へ入った

分籍によって自分の戸籍を作った

養子縁組によって養親の戸籍へ入った

転籍や戸籍の編製によって戸籍が変わった

これらの手続きによって戸籍の記載場所が変わっても、当然に実親との親子関係が消滅するわけではありません。

結婚して親の戸籍から抜けても相続できる

子が結婚すると、原則として夫婦を単位とする新しい戸籍が作られます。

その結果、子は親の戸籍から除籍されますが、これは戸籍の記載場所が変わったという意味です。父母との法律上の親子関係が終了したわけではありません。

したがって、結婚後に次のような状態になっていても、原則として親の相続人です。

親と姓が異なる

親と本籍地が異なる

親と住所が異なる

数十年間実家へ戻っていない

親の介護をしていない

ほかの都道府県や海外に住んでいる

結婚した長女と未婚の長男について、子としての相続順位に差はありません。

「嫁に出たから実家の相続権はない」という考え方は、現在の民法上の相続制度とは一致しません。

両親が離婚しても子の相続権はなくならない

両親が離婚すると、元夫婦の一方は他方の相続人ではなくなります。

一方、父親と子、母親と子の法律上の親子関係は、両親の離婚だけでは終了しません。

例えば、両親の離婚後に子が母親と生活し、母親の戸籍へ入った場合でも、法律上の父親が亡くなれば、その子は原則として父親の相続人です。

次のような事情があっても、通常は子の相続権に影響しません。

離婚後、一度も父親と会っていない

父親から養育費を受け取っていない

父親が再婚している

父親の再婚後の家族と交流がない

父親の戸籍や住所を知らない

父親が再婚して子どもをもうけていた場合、前婚の子と再婚後の子は、いずれも法律上の子として同じ順位の相続人になります。

普通養子縁組をしても実親の相続人になる

子が別の人と普通養子縁組をした場合、養親との間に新たな法律上の親子関係が生じます。

しかし、普通養子縁組では、原則として実親との親子関係も残ります。

そのため、普通養子となった子は、原則として次の両方の相続人になる可能性があります。

実父母の相続人

養父母の相続人

法務省も、普通養子縁組が成立しても実親と養子の親子関係は存続すると説明しています。

例えば、実父母の離婚後、母親の再婚相手と普通養子縁組をした場合でも、実父との法律上の親子関係は通常残ります。

したがって、養父と実父の双方について相続人になる可能性があります。

特別養子縁組では実親との親族関係が終了する

養子縁組の中でも、特別養子縁組は普通養子縁組と効果が異なります。

特別養子縁組が成立すると、原則として実父母およびその血族との法律上の親族関係が終了します。

そのため、特別養子となった子は、原則として実父母の相続人にはなりません。法務省も、普通養子縁組では実親子関係が存続する一方、特別養子縁組では実親子関係が終了すると案内しています。

単に別の戸籍へ移っただけなのか、普通養子縁組なのか、特別養子縁組なのかによって相続関係は異なります。

養子縁組歴がある場合は、現在戸籍だけで判断せず、縁組に関する記載を確認する必要があります。

親の戸籍から抜けた子が相続人にならないケース

相続放棄をした場合

家庭裁判所で相続放棄が受理されると、その相続について初めから相続人ではなかったものとして扱われます。

親族へ「遺産はいらない」と伝えただけでは、法律上の相続放棄にはなりません。家庭裁判所での手続きが必要です。

相続欠格に該当する場合

被相続人を故意に死亡させた場合や、遺言書を偽造・破棄した場合など、法律で定められた重大な行為があると、相続資格を失うことがあります。

推定相続人の廃除が認められた場合

被相続人に対する虐待、重大な侮辱、著しい非行などを理由に、家庭裁判所で廃除が認められると、相続権を失います。

単に親子仲が悪い、疎遠である、介護をしなかったというだけで、当然に廃除されるわけではありません。

特別養子縁組が成立している場合

特別養子縁組によって実親との親族関係が終了していれば、原則として実親の相続人にはなりません。

親より先に死亡している場合

子が親より先に亡くなっている場合、その子自身は相続人になりません。

ただし、亡くなった子に子どもがいれば、孫などが代襲相続人になる可能性があります。

実家に住んでいなくても相続権はある

父親名義の実家に長男が住み、長女は結婚して遠方で暮らしている場合を考えます。

長男が実家に住んでいるという事実だけで、長男が不動産の所有者になるわけではありません。

土地と建物が父親名義であれば、父親の死亡によってその不動産は相続の対象になります。

長女も法律上の子である以上、原則としてその不動産について相続上の権利を持ちます。

ただし、長女が実家の一部を当然に取得するという意味ではありません。

相続人が複数いる場合は、遺言書または遺産分割協議によって、例えば次のような分け方を決めます。

長男が実家を取得する

長男が実家を取得し、長女へ代償金を支払う

実家を売却し、代金を相続人で分ける

長男と長女の共有にする

長女が実家を取得する

実家に誰が居住しているかだけでなく、登記名義、遺言書、相続人、財産評価、ほかの遺産などを確認して判断します。

同居や介護をしていた子が優先されるとは限らない

親と同居していた子や介護を担当していた子が、当然にすべての遺産を取得できるわけではありません。

一方で、同居していた子が親の介護や財産維持に特別な貢献をしていた場合には、遺産分割で寄与分が問題になることがあります。

また、同居していた子が住宅の建築費や改修費を負担していた場合、その負担関係を別途確認する必要があります。

客観的な資料を確認したうえで、相続人全員による協議や家庭裁判所の手続きで判断します。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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