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遺言書と遺留分の関係は、単純に「どちらか一方が優先する」と考えると誤解が生じます。
有効な遺言書があれば、原則として、その内容に従って財産の承継手続きを進めます。
しかし、配偶者や子など一定の相続人には、最低限の取り分である遺留分が保障されています。遺言書によって遺留分が侵害されている場合、遺留分権利者は、財産を取得した人に対して、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。
重要なのは、遺留分を侵害する遺言書が当然に無効になるわけではないという点です。
遺留分権利者が請求しなければ、原則として遺言書どおりに財産が承継されます。請求が行われた場合も、遺言による財産の帰属を全面的に取り消すのではなく、侵害額に相当する金銭債権が発生します。
民法では、配偶者や子などの法定相続人と、それぞれの法定相続分が定められています。
しかし、被相続人は遺言書によって、法定相続分とは異なる財産の分け方を指定できます。
例えば、次のような遺言が考えられます。
「遺言者の有する一切の財産を長男Aに相続させる」
このような遺言書が有効であれば、原則として法定相続分より遺言の指定が優先されます。
例えば、相続人が長男と長女の2人であっても、「全財産を長男に相続させる」という有効な遺言書があれば、いったん長男が遺言に基づいて財産を取得することになります。
長女が当然に財産の2分の1を取得するわけではありません。
ただし、長女には遺留分があるため、遺留分侵害額請求を行える可能性があります。
遺言者本人が作成する遺言書です。
原則として、遺言書の全文、作成日、氏名を遺言者本人が自書し、押印する必要があります。
ただし、財産目録については、一定の条件を満たせばパソコンで作成したものや、預金通帳・登記事項証明書の写しなどを利用できます。財産目録の各ページには、遺言者の署名と押印が必要です。
自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認が必要です。
法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合は、家庭裁判所の検認は不要です。ただし、法務局の確認は主に形式面に関するものであり、遺言能力や内容の有効性まで保証する制度ではありません。
公証人が法定の方式に従って作成する遺言書です。
原則として証人2人の立会いの下で作成され、公証役場に原本が保管されます。家庭裁判所の検認は必要ありません。
公証人が関与するため、形式不備や紛失、改ざんなどの危険を抑えやすい方法です。
遺言内容を秘密にしたまま、遺言書の存在を公証人と証人に証明してもらう方法です。
内容まで公証人が確認するわけではないため、方式や内容に不備が残る可能性があります。
遺留分とは、一定の法定相続人に保障された最低限の財産的利益です。
現在の遺留分制度では、遺留分を侵害された人が、贈与や遺贈を受けた人に対して、侵害額に相当する金銭の支払いを求めます。
以前の制度のように、不動産の持分そのものを当然に取り戻す仕組みではありません。2019年7月1日以後に開始した相続では、原則として金銭請求によって処理されます。
例えば、長男が遺言によって実家を取得し、長女の遺留分が1,000万円侵害されている場合、長女は原則として実家の共有持分を取得するのではなく、長男に対して1,000万円の支払いを求めます。
遺留分を持つ可能性があるのは、次の法定相続人です。
被相続人の配偶者
被相続人の子
子が先に死亡している場合の孫などの代襲相続人
子や代襲相続人がいない場合の父母、祖父母などの直系尊属
一方、次の人には遺留分がありません。
被相続人の兄弟姉妹
兄弟姉妹を代襲する甥・姪
内縁の配偶者
法律上の親子関係がない配偶者の連れ子
離婚した元配偶者
兄弟姉妹や甥・姪が法定相続人になる場合でも、遺留分侵害額請求はできません。
被相続人が「全財産を第三者へ遺贈する」という遺言書を作成していた場合、兄弟姉妹や甥・姪は、原則として遺留分を理由に金銭を請求できません。
遺留分を侵害しているだけでは、遺言書は無効になりません。
例えば、相続人が長男と長女の2人であるにもかかわらず、遺言書に「全財産を長男に相続させる」と書かれていたとします。
この場合でも、遺言書の方式や遺言能力などに問題がなければ、遺言書自体は有効です。
長女が遺留分侵害額請求をしなければ、原則として長男が全財産を取得します。
長女が請求した場合には、遺言書全体を無効にするのではなく、長男に対する金銭債権が発生します。裁判所も、遺留分を侵害する贈与や遺贈が法律上当然に無効となるわけではないと案内しています。
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