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相続手続きは遠方にいてもできる

初めに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

相続手続き先の多くは、被相続人の本籍地、最後の住所地、不動産所在地などによって決まります。しかし、手続き先が遠方にあるからといって、相続人が毎回その地域まで出向かなければならないわけではありません。

現在は、郵送、オンライン、電話、Webフォーム、専門家への委任などを利用できる手続きが増えています。

ただし、すべての相続手続きを完全に非対面で行えるとは限りません。

金融機関の取引内容、家庭裁判所の審理、貸金庫、本人確認などによっては、来店・出頭を求められることがあります。

遠方でも相続手続きはできるが、手続きごとの確認が必要

戸籍や住民票などを郵送で請求する

最寄りの市区町村窓口で戸籍の広域交付を受ける

法定相続情報一覧図を郵送で申し出る

銀行へWeb・電話で死亡を連絡し、書類を郵送する

相続登記を郵送またはオンラインで申請する

相続放棄の申述書を家庭裁判所へ郵送する

相続税をe-Taxで申告する

遺産分割協議書を相続人間で郵送する

行政書士、司法書士、税理士、弁護士などへ依頼する

ただし、郵送できるかどうかは、手続きの種類と提出先によって異なります。

「以前、別の銀行では郵送でできた」「同じ市役所の別の手続きはオンラインでできた」という経験だけで判断せず、提出先へ個別に確認する必要があります。

遠方の手続きで最初に確認すべき期限

相続放棄

相続放棄は、原則として、自分のために相続が開始したことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。

財産調査が終わらず、相続するか放棄するか判断できない場合は、期間内に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てる方法があります。

相続税申告

相続税の申告が必要な場合は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税します。

相続人が遠方にいることや、遺産分割協議書を郵送で回していることを理由に、申告期限が自動的に延長されるわけではありません。

相続登記

不動産を相続したことを知った相続人は、原則として、そのことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

遺産分割によって不動産を取得した場合には、遺産分割成立後にも期限があります。直ちに正式な相続登記をすることが難しい場合には、相続人申告登記によって義務を履行する方法もあります。

遠方で手続きを進めるときは、「後でまとめて行う」のではなく、期限の短い手続きから先に着手しましょう。

戸籍は本籍地の市区町村へ郵送請求できる

相続人を確定するためには、一般に次のような戸籍を収集します。

被相続人の出生から死亡までの戸籍

除籍謄本

改製原戸籍

相続人の現在戸籍

代襲相続や数次相続を証明する戸籍

本籍地が遠方にある場合でも、戸籍証明書は本籍地の市区町村へ郵送で請求できます。

自治体によって細かな取扱いは異なりますが、一般的には次のものを送付します。

戸籍証明書の交付請求書

本人確認書類の写し

手数料

返信用封筒

返信用切手

親族関係を確認するための戸籍

代理人が請求する場合の委任状

大阪市でも、戸籍、除籍、住民票などの証明書を郵送で請求できる制度を設けています。

最寄りの市区町村で戸籍を取れる広域交付

2024年3月1日から、本人、配偶者、父母・祖父母などの直系尊属、子・孫などの直系卑属は、本籍地以外の市区町村窓口でも一定の戸籍・除籍証明書を取得できるようになりました。

複数の市区町村にまたがる戸籍を、最寄りの市区町村窓口でまとめて請求できる可能性があるため、相続の戸籍収集に便利です。

ただし、広域交付には重要な制限があります。

市区町村の窓口へ本人が行く必要がある

郵送では請求できない

代理人による請求はできない

兄弟姉妹の戸籍など、請求できない関係がある

一部の戸籍は広域交付の対象外となることがある

顔写真付き本人確認書類が必要となる

法務省も、広域交付について郵送や代理人による請求はできないと案内しています。

つまり、遠方の本籍地へ出向く必要はなくなりましたが、最寄りの市区町村窓口へ行く必要はあります。

窓口へ行くこと自体が難しい場合は、本籍地への郵送請求または専門家への依頼を検討します。

住民票・戸籍の附票・税証明も郵送請求できる場合がある

相続手続きでは、戸籍以外にも次の証明書が必要になることがあります。

被相続人の住民票の除票

被相続人の戸籍の附票

相続人の住民票

固定資産評価証明書

名寄帳

納税証明書

これらも、自治体によっては郵送請求が可能です。

例えば大阪市では、住民票の除票、戸籍の附票、固定資産に関する税証明書などについて郵送請求の案内を設けています。

ただし、請求先は書類ごとに異なることがあります。

戸籍は本籍地、住民票の除票は最後の住所地、固定資産評価証明書は不動産所在地の自治体というように、必要書類と管轄を整理して請求しましょう。

法定相続情報一覧図も郵送で取得できる

戸籍の束を何度も銀行や法務局へ送る負担を減らしたい場合は、法定相続情報証明制度を利用できます。

法定相続情報証明制度では、戸籍一式と自分で作成した法定相続情報一覧図を法務局へ提出し、登記官の認証文が付いた一覧図の写しを無料で取得します。

一覧図の写しは、相続登記、銀行預金の払戻し、相続税申告、年金など、複数の手続きで戸籍の代わりとして利用できます。

法定相続情報一覧図の保管・交付の申出は郵送でも行うことができ、一覧図の写しや返却される戸籍も郵送で受け取れます。

銀行の相続手続きは郵送で完了する場合がある

銀行の相続手続きは、Webフォームまたは電話で死亡を連絡し、その後、銀行から送られてくる案内に従って書類を郵送する方法が増えています。

三井住友銀行では、Webフォームから死亡を連絡した場合、原則として来店せず、少なくとも2回の郵送によって相続手続きを完了する流れを案内しています。

三菱UFJ銀行も、Web・電話などで死亡を連絡した後、相続手続きに必要な書類を郵送する流れを案内しています。

みずほ銀行では、取引内容によって、郵送だけで完了する場合と、取引店などへの来店が必要になる場合があると案内しています。

相続放棄は家庭裁判所へ郵送できる

相続放棄の申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

相続人が遠方に住んでいる場合でも、申述書、戸籍、収入印紙、郵便切手などを管轄家庭裁判所へ郵送できます。

裁判所が公表している案内にも、郵送提出先や必要書類が記載されています。

郵送すれば必ず出頭不要とは限らない

相続放棄の申述書を郵送した後、家庭裁判所から次のような対応を求められることがあります。

照会書への回答

追加戸籍の提出

財産処分の有無についての説明

相続開始を知った日を示す資料の提出

裁判官や参与員による事情確認

必要に応じた出頭

裁判所は、書面照会だけでなく、事情を直接尋ねる場合があると案内しています。

特に3か月の期限が迫っている場合は、郵送にかかる日数を考慮し、早めに管轄裁判所へ提出方法を確認しましょう。

遺産分割協議書を郵送で完成させる方法

相続人と財産を確定する

戸籍を収集し、法定相続人全員を確認します。

預貯金、不動産、有価証券、債務などを調査し、財産目録を作成します。

分割案を全員で確認する

遺産分割協議書を郵送する前に、電話、メール、オンライン会議などで分割内容を確認します。

合意が固まる前に原本を郵送すると、修正のたびに作り直しと再送付が必要になります。

協議書案をPDFなどで共有する

正式な原本を作成する前に、PDFや画像で全員へ送付し、次の点を確認します。

被相続人の氏名・死亡日

不動産の地番・家屋番号

銀行名・支店名・口座番号

財産を取得する人

代償金の金額・期限

後から見つかった財産の取扱い

相続人の氏名・住所

完成した原本を郵送する

内容が確定したら、協議書原本を相続人へ送ります。

相続登記や銀行手続きに使用する場合は、相続人全員が署名または記名し、実印を押し、印鑑登録証明書を添付する方法が一般的です。

法務局の相続登記ハンドブックも、遺産分割協議書に相続人全員が印鑑証明書と同じ実印を押す方法を案内しています。なお、相続登記で使用する印鑑証明書には、作成後3か月以内という一律の制限はありません。

全員分を取りまとめる

一つの協議書を順番に回して署名・押印する方法があります。

ただし、相続人が多い場合は、郵送の途中で紛失したり、一人の押印ミスによって全員分をやり直したりする可能性があります。

状況に応じて、同一内容の書類を複数作成してそれぞれ署名・押印してもらう方法や、各相続人が合意内容を証明する書面を作成する方法もあります。実際に使用できる形式は、銀行、法務局、手続き内容によって確認しましょう。

遠方で協議書を郵送するときの注意点

コピーや画像だけでは手続きできないことがある

メールで送ったPDFや、実印を押した書類のコピーだけでは、銀行や相続登記の手続きに使用できないことがあります。

最終的には、原本と印鑑証明書の提出を求められるのが一般的です。

消えるペンを使用しない

協議書は、黒色のボールペンなど、消えない筆記具で署名します。

鉛筆や消せるボールペンは使用しないようにしましょう。

押印前に印鑑証明書と照合する

実印の取り違え、かすれ、二重押しなどがあると、再提出を求められる可能性があります。

郵送前に、印鑑証明書の印影と実印が一致しているかを確認します。

送付前にすべてコピーする

原本を郵送する前に、完成した書類一式をスキャンまたはコピーして保管します。

誰へ何を送ったかを記録し、到着後に受領連絡をしてもらうと安心です。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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