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ご家族間での話し合い、情報共有は重要
一方で、制度を開始すると、本人の財産を家族の判断だけで自由に使うことはできなくなります。家庭裁判所が希望した家族以外の専門職を後見人に選任することもあり、報酬や事務負担が長期間続く可能性もあります。
また、「成年後見制度を利用すると会社役員や医師、弁護士などになれない」という説明は、現在では正確ではありません。成年被後見人等であることだけを理由に一律に資格や職業から排除する欠格条項は、2019年の法改正によって広く見直されています。現在は、制度利用の有無だけでなく、職務遂行能力を個別に判断する仕組みが基本です。
成年後見制度は、本人の権利と財産を守るための重要な制度ですが、家族にとって便利な財産管理制度ではありません。
本人にどのような支援が必要なのか、制度を開始した後の費用や制約を受け入れられるかを確認してから利用を判断することが大切です。
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分になった人を法律面から支援する制度です。
本人の判断能力が低下すると、財産管理や契約手続を自分だけで行うことが難しくなる場合があります。
たとえば、次のような場面です。
預貯金を管理する
介護施設への入所契約をする
病院や施設の費用を支払う
不動産を売却する
遺産分割協議に参加する
福祉サービスの契約をする
悪質商法による契約を取り消す
本人の財産を守る
成年後見制度を利用すると、家庭裁判所が選任した成年後見人、保佐人、補助人などが、本人の判断能力に応じて財産管理や法律行為を支援します。
成年後見制度には、大きく分けて法定後見と任意後見があります。
法定後見とは、本人の判断能力がすでに低下している場合に、家庭裁判所へ申立てをして、後見人等を選任してもらう制度です。
法定後見は、本人の判断能力の程度に応じて、後見、保佐、補助の3つに分かれます。
一方、任意後見とは、本人に十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が低下したときに備えて、支援してくれる人と契約しておく制度です。
任意後見では、本人が自分で任意後見人となる人を選び、公正証書で任意後見契約を結びます。
本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、任意後見契約の効力が生じます。
成年後見制度の大きな利点は、判断能力が低下した本人の財産を、法律上の権限を持つ人が管理できることです。
例えば、次のような状況に対応できます。
認知症のため預金の出し入れができない
通帳やキャッシュカードを何度も紛失する
公共料金や施設費の支払いが滞っている
年金を親族が無断で使っている
所有している賃貸不動産を管理できない
税金や保険料の手続きができない
後見人等は本人の財産を把握し、財産目録や収支予定を作成したうえで、本人の生活や療養に必要な支出を行います。
家族が事実上預金を管理する場合と異なり、金融機関などに対して正式な代理権を証明して手続きを進められる点もメリットです。
判断能力が低下すると、訪問販売、投資勧誘、リフォーム契約などによる被害を受けやすくなります。
法定後見制度では、本人が行った法律行為を後見人等が取り消せる場合があります。
ただし、取消しができる範囲は後見・保佐・補助によって異なります。
成年後見の場合、本人が行った法律行為は原則として取り消すことができますが、食料品や日用品の購入など、日常生活に関する行為は取り消せません。保佐・補助では、家庭裁判所の審判によって定められた行為が主な対象になります。
また、任意後見人には法律上の取消権がないため、「任意後見契約を結んでおけば、本人がした契約をすべて取り消せる」というわけではありません。
成年後見人等は、本人の生活状況や希望を確認しながら、次のような手続きを行います。
介護サービスの利用契約
老人ホームなどへの入所契約
入院に関する手続き
賃貸住宅の契約
生活保護など行政手続き
本人に必要な福祉サービスの申請
単に財産を管理するだけでなく、本人が適切な医療・介護・福祉サービスを受けられるよう支援することも後見人等の重要な役割です。
後見人等は、自分や家族の都合ではなく、本人の意思、生活歴、価値観、心身の状態を踏まえて支援を行わなければなりません。
後見人等には、家庭裁判所の審判で認められた範囲内で代理権があります。
そのため、本人だけでは進められない次のような手続きに対応できる場合があります。
預貯金の解約や口座管理
保険金の請求
不動産の管理や売却
遺産分割協議への参加
賃貸借契約の締結・解約
各種費用の支払い
訴訟や債務整理に関する専門家への依頼
例えば、認知症の母親が相続人になった場合、母親を除いて遺産分割協議を進めることはできません。
適切な後見人等を選任し、必要に応じて特別代理人などの手続きを行うことで、母親の利益を守りながら遺産分割を進められます。
法定後見人等は、本人の財産や生活状況について家庭裁判所へ報告し、監督を受けます。
領収書、通帳、収支記録などを保存し、本人の財産が適切に使われていることを説明しなければなりません。
必要に応じて、成年後見監督人等が選任されることもあります。
この監督は後見人にとって事務負担になりますが、本人の財産を親族や第三者による使い込みから守るという点では大きなメリットです。
任意後見制度では、判断能力が十分なうちに、将来任せたい人を自分で選べます。
例えば、次のような希望を契約内容に反映できます。
長女に預貯金の管理を任せる
信頼する専門家に不動産管理を任せる
介護施設の契約を代理してもらう
定期的に自宅を訪問して生活状況を確認してもらう
病院や福祉施設との連絡を行ってもらう
法定後見では、最終的な後見人の選任を家庭裁判所が行います。
これに対し、任意後見では、自分が選んだ人と契約内容を決められる点が大きなメリットです。
ただし、契約を締結しただけでは支援は始まりません。本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて任意後見契約が発効します。
成年後見制度を利用すると、本人の財産は原則として本人のために使用しなければなりません。
家族が後見人になった場合でも、次のような支出を自由に行えるわけではありません。
子や孫への生前贈与
相続税対策を目的とした贈与
親族への貸付け
家族旅行の費用
家族名義の住宅ローン返済
本人が経営していた会社の債務返済
本人の利益にならない寄付
本人が元気だった頃に毎年孫へ贈与していたとしても、後見開始後に同じ贈与を続けられるとは限りません。
後見人は、本人の生活費、医療費、介護費などを将来にわたって確保しなければならず、本人の財産を減らす行為には慎重な判断が求められます。
法定後見の申立書には後見人候補者を記載できますが、候補者が必ず選任されるわけではありません。
家庭裁判所は、次のような事情を総合的に判断します。
本人の心身の状態
財産の種類と金額
親族間の対立
本人と候補者との関係
候補者による財産管理の適切性
不動産売却や遺産分割の予定
法律・福祉面での専門性
親族間に争いがある場合、多額の財産がある場合、複雑な相続や不動産処分が予定されている場合などには、専門職が選任される可能性があります。
申立人が「長男を後見人にしたい」と希望していても、専門職が選任されたことを理由として、申立てを簡単に撤回できるとは限りません。
弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が後見人等に選任された場合は、通常、報酬が問題になります。
報酬額を後見人自身が自由に決めるのではなく、後見人からの申立てを受けて、家庭裁判所が業務内容、本人の財産額、後見事務の難易度などを考慮して決定します。
報酬は原則として本人の財産から支払われます。
親族が後見人になった場合でも、家庭裁判所へ報酬付与の申立てを行い、報酬が認められることがあります。
さらに、次のような費用が発生する場合があります。
申立手数料
後見登記費用
郵便料
医師の診断書作成料
鑑定費用
後見監督人の報酬
専門職への申立支援費用
制度の利用が長期間続けば、本人の財産から継続的に報酬が支払われる可能性があります。
親族が後見人になった場合でも、一般的な家族の財産管理とは異なります。
後見人は、次のような事務を継続して行います。
財産目録の作成
収支予定の作成
預貯金の入出金管理
領収書や契約書の保存
本人の生活状況の確認
家庭裁判所への定期報告
財産状況が変化した場合の報告
重要な財産処分についての相談・許可申立て
帳簿や資料を適切に管理せず、家庭裁判所への報告を怠ると、後見人を解任される可能性があります。
家族だから簡単にできると考えず、長期間にわたって事務を続けられるかを検討する必要があります。
現行の法定後見制度では、本人の判断能力が回復し、家庭裁判所が開始の審判を取り消した場合などを除き、後見等は原則として本人が亡くなるまで続きます。
例えば、次の目的で申立てをしたとします。
定期預金を解約する
遺産分割協議をする
不動産を売却する
施設入所契約を締結する
これらの手続きが完了しても、本人の判断能力が制度の対象となる状態のままであれば、それだけを理由に後見を終了できるとは限りません。
後見人等は、その後も財産管理や家庭裁判所への報告を続ける必要があります。
この「必要な手続きが終わっても制度が続く」という点は、現在の成年後見制度の大きな課題の一つとされ、2026年の法改正につながりました。
後見人等は、本人に関するすべてのことを代行できるわけではありません。
原則として、次のような行為は後見人等の権限に含まれません。
本人の食事や入浴などの直接的な介護
手術など医療行為への一般的な同意
結婚や離婚
養子縁組や離縁
遺言書の作成
本人に代わる身元保証
本人の意思を無視した居住場所の決定
後見人の役割は、介護サービスや施設利用の契約を行い、必要な支援につなげることです。後見人自身が日常的な介護を行う制度ではありません。
また、後見人等には、原則として手術などの医療行為に同意する権限はありません。
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