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また、公証人が関与して作成するため、自筆証書遺言よりも方式不備で無効になるリスクを抑えやすく、原本も公証役場等で保管されます。
ただし、全財産を一人に集中させる遺言は、他の相続人の遺留分、遺言執行者、受遺者の表現などに注意が必要です。
結論からいうと、公正証書遺言で全財産を特定の人物に承継させることは可能です。
たとえば、次のような内容です。
「遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻〇〇に相続させる。」
「遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、長男〇〇に相続させる。」
このように、特定の相続人にすべての財産を相続させる内容の遺言を作成できます。
ただし、財産を受け取る人が相続人かどうかによって、使う言葉が変わります。
配偶者、子、親などの相続人に財産を渡す場合は、「相続させる」と書くことが一般的です。
一方、内縁の配偶者、友人、お世話になった人、法人、団体など、相続人ではない人に財産を渡す場合は、「遺贈する」と書きます。
相続人以外の人に「相続させる」と書くと、手続や解釈で問題になることがあるため注意しましょう。
全財産を特定の人物に承継させたい場合は、自筆証書遺言よりも公正証書遺言をおすすめします。
理由は、全財産を一人に集中させる遺言は、他の相続人から不満が出やすいからです。
公正証書遺言であれば、公証人が本人の意思を確認し、証人2名の立会いのもとで作成されます。
そのため、自筆証書遺言よりも、方式不備や紛失、改ざんのリスクを減らしやすくなります。
特定の人物に全財産を残したい場合ほど、公正証書遺言で明確に作成しておくことが重要です。
全財産を特定の人物に相続させる公正証書遺言には、次のようなメリットがあります。
遺産分割協議を避けやすい
相続手続の方針が明確になる
誰が財産を取得するか迷わない
不動産や預貯金の手続を進めやすい
相続人同士の話し合いの負担を減らせる
遺言者の意思を残しやすい
介護してくれた人や配偶者を保護しやすい
事業用財産を分散させずに承継しやすい
特に、配偶者に生活資金を残したい場合や、同居して介護してくれた子に自宅を残したい場合、事業を引き継ぐ子に事業用財産を集中させたい場合には、有効な方法です。
ただし、メリットがある一方で、他の相続人の遺留分や感情面への配慮も必要になります。
全財産を特定の人物に相続させる遺言には、注意点もあります。
特に重要なのは、次の点です。
遺留分を侵害する可能性がある
遺言内容に不満を持つ相続人が出やすい
不動産だけを取得すると現金が不足することがある
遺言執行者を指定しないと手続が進みにくいことがある
財産の書き方が曖昧だと手続で困る
受け取る人が先に亡くなった場合の備えが必要である
相続人以外に渡す場合は「遺贈」の表現が必要である
「全財産を〇〇に相続させる」とだけ書けば十分に見えるかもしれません。
全財産を特定の人物に相続させる場合、最も注意すべきなのが遺留分です。
遺留分とは、一定の相続人に法律上保障されている最低限の取り分です。
遺留分を有する相続人には、配偶者、子、直系尊属などが含まれます。
兄弟姉妹には遺留分はありません。
たとえば、遺言書で長男に全財産を相続させた場合、配偶者や他の子の遺留分を侵害する可能性があります。
この場合、遺言書が当然に無効になるわけではありません。
ただし、遺留分を侵害された相続人が遺留分侵害額請求をした場合、長男は金銭を支払わなければならない可能性があります。
「遺留分を侵害する遺言は無効になる」と誤解されることがありますが、現在の制度では、遺留分侵害額に相当する金銭の請求が問題になります。
配偶者に全財産を相続させる遺言は、よくある内容です。
残された配偶者の生活を守るためには有効な方法です。
ただし、子どもがいる場合、子どもの遺留分を侵害する可能性があります。
子どもが遺留分侵害額請求をした場合、配偶者が金銭を支払う必要が生じることがあります。
また、配偶者が高齢の場合、配偶者がすべての財産を取得した後にすぐ亡くなると、二次相続が発生します。
子どもの一人に全財産を相続させる遺言もあります。
たとえば、同居して介護してくれた長女に財産を残したい場合、家業を継ぐ長男に事業用財産を残したい場合などです。
この場合、他の子の遺留分に注意が必要です。
兄弟姉妹間では、感情的な対立が起こりやすくなります。
子どもの一人に全財産を相続させる場合は、付言事項で理由を説明し、遺留分に対応する現金や保険金を準備しておくことを検討しましょう。
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