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後継者がいない会社を廃業せずに存続させたい

初めに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

中小企業の後継者がいないからといって、直ちに廃業を選ばなければならないわけではありません。

親族に後継者がいない場合でも、主に次の方法によって会社や事業を存続させられる可能性があります。

役員や従業員へ承継する
第三者へ会社または事業を譲渡する
後継者人材バンクなどで外部の経営者候補を探す
時間をかけて社内・親族内の候補者を育成する

事業承継・引継ぎ支援センターでは、親族内承継、従業員承継、第三者承継、後継者人材バンクを含む相談に対応しています。全国47都道府県に公的な相談窓口が設置され、相談、事業承継計画の策定、譲受候補の紹介などを原則無料で支援しています。

重要なのは、現在の社長が引退できる状態と、会社が社長不在でも動ける状態を、早い段階からつくっておくことです。

後継者がいなくても会社を残せる可能性はある

中小企業では経営者の高齢化が進み、後継者の確保が重要な課題になっています。

2025年版中小企業白書によると、後継者不在率には改善傾向が見られる一方、中小企業経営者の年齢は依然として高く、60歳以上の経営者が過半数を占めています。

以前は、経営者の子や親族が会社を継ぐ「親族内承継」が中心でした。

現在は、親族が継ぐことを希望しないケースも多く、次のような方法が一般的な選択肢になっています。

承継方法 主な後継者 特徴
親族内承継 子、配偶者、甥・姪など 経営者の考えや家族の財産承継と結び付きやすい
従業員承継 役員、幹部社員、一般従業員 会社や業務を理解している人へ引き継げる
第三者承継 他社、投資会社、個人の起業希望者 親族や社内に候補がいなくても承継できる
廃業・清算 後継者なし 法人や事業を終了させる

後継者不在の会社が検討できる4つの方法

役員・従業員へ承継する

社内に会社を理解している役員や従業員がいる場合は、その人へ経営を引き継ぐ方法があります。

役員や従業員による承継は、一般に「従業員承継」や、経営陣が株式を取得する場合には「MBO」と呼ばれることがあります。

従業員承継のメリット

事業内容や社内事情を理解している

従業員や取引先から受け入れられやすい

経営理念や企業文化を残しやすい

引継ぎ期間中に実務を経験させられる

外部への情報流出を抑えながら準備できる

取引先との関係を維持しやすい

本人が後継者になる意思を持っているか確認する

経営者が「この社員なら継いでくれるだろう」と考えていても、本人は希望していないことがあります。

後継者になると、次の責任を負う可能性があります。

従業員の雇用

借入金の返済

取引先への責任

株式取得資金の返済

経営者保証

会社の法的・税務上の管理

業績悪化時の対応

候補者を一方的に決めず、本人の意思、家族の理解、資金、経営能力を確認しながら進めることが重要です。

第三者へ会社を譲渡する

親族にも社内にも後継者がいない場合は、第三者への承継、いわゆるM&Aを検討できます。

小規模企業であっても、顧客、技術、設備、許認可、人材、立地、販売ルートなどに価値があれば、買い手が見つかる可能性があります。

事業承継・引継ぎ支援センターの第三者承継支援では、相談から譲受候補の紹介、専門家との連携まで行われており、成約した譲渡企業の約7割が小規模事業者と案内されています。

M&Aのメリット

親族や従業員に後継者がいなくても承継できる

従業員の雇用を維持できる可能性がある

取引先との関係を継続しやすい

技術、設備、顧客基盤を残せる

経営者が株式や事業の譲渡対価を受け取れる

買い手企業の資金、人材、販路を活用できる

会社の成長につながる可能性がある

注意点

希望条件に合う買い手が見つからないことがある

従業員の雇用が必ず維持されるとは限らない

会社名や経営方針が変わる可能性がある

財務・法務・労務上の問題が価格へ影響する

仲介会社などへの費用が発生する

交渉内容が外部へ漏れると取引に影響する

個人保証が自動的に解除されるとは限らない

成約後の組織統合がうまくいかない可能性がある

後継者人材バンクを利用する

会社を買収したい企業だけでなく、起業を希望する個人へ事業を引き継ぐ方法もあります。

「後継者人材バンク」は、創業を希望する人と、後継者不在の会社・個人事業主を引き合わせる制度です。

既存の顧客、店舗、設備、技術、取引先を引き継いで起業できるため、ゼロから創業する場合より事業基盤を確保しやすいという特徴があります。

時間をかけて社内の候補者を育てる

現時点で完成された後継者がいなくても、将来の候補者を育成できる場合があります。

例えば、優秀な従業員に次の業務を段階的に任せます。

主要顧客との商談

採用や人事評価

資金繰りの管理

金融機関との交渉

事業計画の策定

取締役会や株主総会への参加

設備投資の判断

新規事業の責任者

利益管理

最初から社長業務のすべてを任せるのではなく、部門責任者、役員、代表取締役というように段階を踏んで育成します。

外部から経営経験者を採用し、既存従業員と組み合わせる方法も考えられます。

経営者に万一のことが起きる前の緊急対策

代表者不在時の社内体制を決める

次の事項を社内で決めておきます。

社長不在時に業務を統括する人

銀行・税理士・取引先へ連絡する人

支払いを承認する人

会社印、銀行印、通帳の保管方法

インターネットバンキングの管理

給与支払いの担当者

重要契約の保管場所

システム管理者

主要取引先の連絡先

パスワードを紙に書いて誰でも見られる状態にするのではなく、権限管理と緊急時の開示方法を整備します。

株式について遺言書を作成する

経営者が会社株式を所有している場合、遺言書がなければ、株式が相続人間で分散する可能性があります。

例えば、会社を継ぐ予定がない子どもが複数いる場合でも、法定相続によって株式を共有することがあります。

遺言書では、次のような事項を定めます。

自社株式を誰へ相続させるか

その人が先に死亡していた場合の取得者

株式以外の財産を誰へ残すか

遺言執行者を誰にするか

遺留分侵害額を支払うための資金

ただし、後継者が決まっていない状態で、無理に一人へ全株式を残す遺言を作成すると、その人が経営を希望しない可能性があります。

暫定的な遺言を作成し、後継者決定後に内容を見直す方法もあります。

任意後見・財産管理も検討する

経営者が認知症などによって判断能力を失うと、新しい遺言書、株式譲渡契約、M&A契約などを有効に締結できない可能性があります。

将来の財産管理については、任意後見契約、財産管理等委任契約、信託などを検討できる場合があります。

ただし、任意後見人が当然に会社の代表者になるわけではなく、本人に代わって自由に経営判断できる制度でもありません。

個人財産の管理と会社の経営体制を分けて設計する必要があります。

M&Aを進める一般的な流れ

譲渡目的と希望条件を決める

従業員の雇用を守りたい

会社名を残したい

現在の事業所を維持したい

取引先との関係を継続したい

一定期間は経営に残りたい

個人保証を解除したい

希望する譲渡価格

会社資料を整理する

決算書

税務申告書

試算表

借入金一覧

株主名簿

登記事項証明書

定款

契約書

許認可資料

従業員一覧

不動産・設備一覧

事業計画

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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