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親の家業を無給で手伝っていた場合、寄与分は認められる?

初めに

親の家業を無給または著しく低い報酬で手伝っていた相続人は、事情によっては「家業従事型」の寄与分を主張できる可能性があります。

ただし、家業を手伝っていたという事実だけで、当然に寄与分が認められるわけではありません。

寄与分が認められるには、通常の親族間の助け合いを超える特別な労務提供であること、無償または著しく低い報酬であること、相当期間継続していること、相続人の労務によって被相続人の財産が維持または増加したことなどが必要です。

寄与分とは

寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加について特別に貢献した人がいる場合、その人の相続分を増やす制度です。

民法904条の2では、共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務提供、財産上の給付、療養看護その他の方法により、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした人がいる場合、その寄与分を考慮するとされています。

裁判所も、遺産分割にあたり、共同相続人のうち被相続人の財産の維持または増加について特別に寄与した人には、法定相続分のほかに寄与分が認められると説明しています。

家業従事型の寄与分とは

家業従事型の寄与分とは、相続人が被相続人の事業に労務を提供し、その結果として被相続人の財産の維持または増加に貢献した場合に問題になる寄与分です。

たとえば、次のようなケースです。

親が営む農業を長年手伝っていた

親の商店で接客、仕入れ、経理をしていた

親の飲食店で調理や接客をしていた

親の工場で製造作業をしていた

親の事務所で事務や顧客対応をしていた

親の個人事業を実質的に支えていた

本来であれば従業員を雇う必要があったところ、相続人が無給または著しく低い報酬で働いていたため、被相続人が人件費の支出を免れ、事業収益や財産を維持できたという場合に、寄与分として評価される可能性があります。

ただし、「家族だから手伝っていた」「忙しい時期だけ店番をしていた」という程度では、寄与分として認められにくいです。

家業従事型の寄与分が認められるための要件

特別の寄与であること

寄与分が認められるには、通常の親族間の助け合いを超える「特別の寄与」が必要です。

親子や夫婦、親族の間では、家業を多少手伝うことがあります。

たとえば、繁忙期に店番をした、週末だけ配達を手伝った、農繁期に数日だけ農作業をした、学生時代に夏休みだけ手伝ったという程度では、通常の家族間の協力と評価されやすいです。

一方で、相続人が日常的に家業の中心的業務を担い、第三者を雇えば相応の人件費が発生するような労務を長期間提供していた場合は、特別の寄与として評価される余地があります。

たとえば、親の商店で毎日働き、仕入れ、販売、経理、取引先対応まで行っていた場合です。

重要なのは、単なる手伝いではなく、事業の維持や収益に具体的に貢献する労務だったかどうかです。

配偶者が家業を手伝っていた場合

配偶者が被相続人の家業を手伝っていた場合は、寄与分のハードルが高くなりやすいです。

夫婦には、互いに協力し扶助する義務があります。民法でも、夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならないとされています。

そのため、配偶者が家業を手伝っていたとしても、通常の夫婦間の協力扶助の範囲内と評価されることがあります。

もちろん、配偶者の家業従事が常に寄与分にならないわけではありません。

しかし、通常の夫婦間で期待される協力を大きく超える労務であり、被相続人の財産の維持または増加に具体的につながったことを説明する必要があります。

無償または著しく低い報酬であること

家業従事型の寄与分では、無償性が非常に重要です。

相続人が家業を手伝っていたとしても、相応の給料や報酬を受け取っていた場合は、すでに労務の対価を得ていたと評価されます。

そのため、寄与分としてさらに相続分の上乗せを求めることは難しくなります。

一方、まったく無給だった場合や、世間一般の給与水準と比べて著しく低い金額しか受け取っていなかった場合は、無償またはこれに近い労務提供として評価される可能性があります。

たとえば、同じ仕事を第三者に依頼すれば月20万円程度の給与が必要だったにもかかわらず、相続人は月数万円程度しか受け取っていなかった場合です。

この場合、通常支払うべき給与と実際に受け取っていた金額との差額が、寄与分を考えるうえで問題になることがあります。

財産の維持または増加との因果関係

寄与分が認められるには、相続人の労務提供によって被相続人の財産が維持または増加したことが必要です。

たとえば、相続人が無給で働いたことで、人件費の支出を抑えられ、事業利益が残った場合です。

また、相続人の労務により、店舗や農業経営が継続し、被相続人の事業用財産や預貯金が維持された場合も考えられます。

一方で、家業を手伝っていたとしても、事業が赤字で財産の維持や増加につながっていなかった場合は、寄与分として認められにくくなります。

「自分は一生懸命働いた」というだけでは不十分です。

その労務によって、被相続人の財産にどのような経済的効果があったのかを説明する必要があります。

継続性があること

家業従事型の寄与分では、労務提供が相当期間継続していることも必要です。

一時的な手伝いや短期間の協力では、寄与分として認められにくいです。

たとえば、次のような場合は継続性が問題になります。

夏休みだけ農業を手伝っていた

年末年始だけ店を手伝っていた

親が入院した数か月だけ家業を手伝った

繁忙期だけ臨時で働いていた

学生時代に数週間だけ手伝っていた

これらは、通常の親族間の手助けと評価されやすく、寄与分としては認められにくいでしょう。

一方、数年にわたり継続して家業に従事していた場合は、寄与分として主張しやすくなります。

明確に「何年以上なら必ず認められる」という基準があるわけではありませんが、家業の内容、従事頻度、労務の重さ、事業への影響を総合的に判断します。

専従性があること

家業従事型の寄与分では、労務提供が片手間ではなく、相当な負担を伴うものであることも必要です。

これを専従性といいます。

専従性といっても、必ずしも家業だけに専念していなければならないという意味ではありません。

他の仕事をしていたとしても、家業への従事が相当な負担を伴い、事業の維持に重要な役割を果たしていた場合には、個別に検討される余地があります。

ただし、本業の合間に少し手伝っていた程度では、専従性は認められにくいです。

たとえば、平日は会社員として働き、週末だけ親の店を手伝っていた場合や、忙しい時期だけ短時間手伝っていた場合は、専従性を満たすのは難しいでしょう。

実際の勤務時間、担当業務、責任の重さ、代替従業員の必要性などが重要になります。

家業従事型の寄与分が認められやすいケース

家業従事型の寄与分が認められやすいのは、次のようなケースです。

親の個人事業を長年手伝っていた

無給または著しく低い報酬だった

第三者を雇えば給与が必要な業務を担当していた

家業への従事が数年以上継続していた

片手間ではなく相当な負担を伴う業務だった

相続人の労務により人件費を節約できた

事業収益や事業用財産が維持・増加した

勤務実態や収益への影響を示す資料がある

たとえば、親の飲食店で長年、毎日勤務し、無給で調理や接客、仕入れまで担当していた場合です。

このような場合、第三者を雇う場合と比べて人件費を節約でき、被相続人の財産維持に貢献したと説明しやすくなります。

家業従事型の寄与分が認められにくいケース

一方、次のような場合は、寄与分として認められにくいです。

繁忙期だけ手伝っていた

学生時代の休みに手伝っていた

週末だけ短時間手伝っていた

通常の給料を受け取っていた

生活費や住居費を親が負担していた

家業から相応の利益を受けていた

事業が赤字で財産の維持・増加につながっていない

手伝いの内容や期間を示す証拠がない

法人化された会社への労務提供にとどまる

配偶者として通常の協力扶助の範囲と評価される

「長年手伝っていた」という主張だけでは不十分です。

どの程度の労務を、どれくらいの期間、どのような報酬状況で行い、それが被相続人の財産にどのように影響したのかを整理する必要があります。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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