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兄弟姉妹の相続放棄手続き

初めに

相続放棄とは、被相続人の権利や義務を一切受け継がないための家庭裁判所の手続です。裁判所も、相続人は単純承認、相続放棄、限定承認のいずれかを選択でき、相続放棄をするには家庭裁判所に申述しなければならないと説明しています。

ただし、「兄弟姉妹の相続放棄」といっても、亡くなった人の子として兄弟姉妹が放棄する場合と、亡くなった人の兄弟姉妹として第3順位で放棄する場合では、必要書類や注意点が異なります。

兄弟姉妹が相続放棄を考える主なケース

兄弟姉妹が相続放棄を考える場面は、大きく分けて次の3つです。

1つ目は、亡くなった親の子どもとして、兄弟姉妹が相続人になる場合です。

2つ目は、亡くなった人に子や親がいないため、被相続人の兄弟姉妹が第3順位の相続人になる場合です。

3つ目は、特定の相続人に遺産をまとめるために、他の兄弟姉妹が相続放棄を検討する場合です。

同じ「兄弟姉妹」でも、自分がどの立場で相続人になっているのかによって、手続の重さが変わります。

まずは、自分が第1順位の子として相続人なのか、第3順位の兄弟姉妹として相続人なのかを確認しましょう。

借金など引き継ぎたくない財産がある場合

相続放棄が最もよく検討されるのは、被相続人に借金などのマイナスの財産がある場合です。

たとえば、次のようなケースです。

消費者金融や銀行からの借入れがある

連帯保証債務がある

税金や社会保険料の滞納がある

事業上の負債がある

管理が難しい空き家や山林がある

売却困難な不動産がある

プラスの財産よりマイナスの財産が多い

相続放棄をすれば、借金などの債務を承継しないで済みます。

一方で、相続放棄をすると、預貯金、不動産、有価証券などのプラスの財産も一切受け取れません。

そのため、借金があるからといってすぐに放棄するのではなく、まず相続財産と債務を調査することが大切です。

特定の兄弟姉妹に遺産をまとめたい場合

兄弟姉妹のうち、特定の人に遺産をまとめたいという理由で、相続放棄が検討されることもあります。

たとえば、「実家を長男に継がせたい」「家業を継ぐ兄に事業用財産をまとめたい」「親の面倒を見ていた妹に多く渡したい」というケースです。

ただし、遺産を特定の人にまとめたいだけであれば、必ずしも相続放棄を使う必要はありません。

相続人全員で遺産分割協議を行い、特定の相続人が不動産や預貯金を取得する内容にすることもできます。

相続放棄は、一度受理されると原則として撤回できません。民法919条も、相続の承認および放棄は撤回できないと定めています。

そのため、単に「自分は何もいらない」という理由で放棄する場合でも、本当に相続放棄が必要か、遺産分割協議で足りるのかを慎重に検討しましょう。

被相続人の兄弟姉妹として相続人になった場合

亡くなった人に子や孫がおらず、父母や祖父母などの直系尊属もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。

この場合、兄弟姉妹は第3順位の相続人です。

国税庁も、配偶者以外の相続人について、第1順位は子、第2順位は父母や祖父母などの直系尊属、第3順位は兄弟姉妹であると説明しています。

第3順位の兄弟姉妹が相続放棄をする場合は、必要書類が多くなります。

なぜなら、被相続人に子や孫がいないこと、父母や祖父母が亡くなっていることを戸籍で証明する必要があるからです。

子として相続放棄する場合よりも、戸籍収集の負担が重くなりやすい点に注意しましょう。

相続放棄の期限は3か月

相続放棄は、いつでもできるわけではありません。

裁判所は、相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと案内しています。

ここで重要なのは、3か月の起算点が、必ずしも被相続人の死亡日とは限らないことです。

通常は、被相続人が亡くなり、自分が相続人であることを知った日から3か月です。

しかし、第3順位の兄弟姉妹の場合は、先順位の相続人がいないこと、または先順位の相続人全員が相続放棄したことを知って、初めて自分が相続人になったことを知る場合があります。

そのため、兄弟姉妹が第3順位で相続人になるケースでは、3か月の起算点を慎重に確認する必要があります。

3か月で判断できない場合は期間伸長を検討する

借金の有無や財産内容が分からない場合、3か月以内に放棄するかどうか判断できないことがあります。

そのような場合は、相続放棄の期間伸長を家庭裁判所に申し立てる方法があります。

裁判所も、3か月以内に相続財産の状況を調査しても、承認または放棄を判断する資料が得られない場合には、期間伸長の申立てにより家庭裁判所が期間を伸ばすことができると説明しています。

期限が迫っている場合や、すでに3か月を過ぎている可能性がある場合は、自己判断せず、早めに弁護士や司法書士へ相談しましょう。

兄弟姉妹の相続放棄手続きの流れ

相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述して行います。

基本的な流れは次のとおりです。

相続財産と債務を調査する

相続放棄をするか判断する

必要な戸籍などを集める

相続放棄申述書を作成する

家庭裁判所に申述する

家庭裁判所から照会書が届いた場合は回答する

相続放棄申述受理通知書を受け取る

必要に応じて相続放棄申述受理証明書を取得する

裁判所は、相続放棄の申述先を、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所と案内しています。また、費用として申述人1人につき収入印紙800円分と連絡用郵便切手が必要とされています。

郵送で申述できる場合もありますが、必要書類や郵便切手の金額は家庭裁判所によって異なることがあるため、事前に確認しましょう。

照会書には正確に回答する

相続放棄を申述すると、家庭裁判所から照会書が届くことがあります。

照会書では、次のような点を確認されます。

本当に自分の意思で相続放棄するのか

いつ被相続人が亡くなったことを知ったのか

いつ自分が相続人になったことを知ったのか

相続財産を処分していないか

被相続人の借金や財産をどの程度把握しているか

他人に強制されていないか

照会書は、家庭裁判所が相続放棄を受理するか判断するための重要な書類です。

事実と異なる回答をすると、後で問題になることがあります。

分からない点がある場合は、無理に書かず、専門家に確認しましょう。

兄弟姉妹でまとめて相続放棄できるか

兄弟姉妹が同じ順位の相続人であれば、まとめて相続放棄の申述をすることができます。

たとえば、亡くなった親の子どもである兄弟姉妹全員が相続放棄する場合です。

この場合、それぞれが第1順位の相続人です。

申述書は各人ごとに作成する必要がありますが、同じ被相続人について同時に家庭裁判所へ提出することは可能です。

裁判所の案内でも、標準的な添付書類について「同じ書類は1通で足ります」とされています。

そのため、兄弟姉妹でまとめて手続を進めると、戸籍などの共通書類を1通にまとめられる場合があり、手間や費用を抑えやすくなります。

兄弟姉妹の相続放棄に必要な共通書類

相続放棄に必要な書類は、誰が申述人になるかによって異なります。

裁判所の案内では、共通して必要な標準的添付書類として、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本が挙げられています。

基本的には、次のような書類を準備します。

相続放棄申述書

被相続人の住民票除票または戸籍附票

申述人の戸籍謄本

被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本等

収入印紙

連絡用郵便切手

同じ被相続人について複数人が同時に申述する場合、共通書類は1通で足りることがあります。

ただし、家庭裁判所から追加書類を求められることもあるため、提出先の家庭裁判所に確認しましょう。

兄弟姉妹が相続放棄するとどうなるか

相続放棄をすると、その人は、その相続について初めから相続人でなかったものとみなされます。

民法939条も、相続放棄をした者は、その相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなすと定めています。国税庁も同様に、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされると説明しています。

そのため、兄弟姉妹の一人が相続放棄すると、その人は相続財産を取得しません。

プラスの財産も、借金などのマイナスの財産も承継しません。

ただし、放棄した人の相続分がどうなるかは、誰が放棄したか、他に相続人がいるかによって変わります。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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