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自筆証書遺言を自宅保管するメリット・デメリット

初めに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

自筆証書遺言を作成した後、遺言書をどこで保管するのがよいのだろと迷う方もいるでしょう。

自筆証書遺言は、自宅で保管することもできます。

自宅保管には、費用がかからず、手元で管理しやすいというメリットがあります。

一方で、紛失する、死亡後に発見されないといったデメリットもあります。

自筆証書遺言は自宅で保管してもよい

自筆証書遺言について、どこか公的な機関へ預けなければ有効にならないというルールはありません。

法律上の方式を満たした自筆証書遺言であれば、自宅で保管することもできます。

ただし、自宅保管する通常の自筆証書遺言については、遺言者が亡くなった後、遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人が、遅滞なく家庭裁判所へ提出して「検認」を請求する必要があります。

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合には、この検認は不要です。

そのため、自宅保管か法務局保管かを考えるときには、単純な保管場所だけでなく、死亡後の手続きまで比較することが重要です。

自宅で遺言書を保管するメリット

保管そのものに費用がかからない

自宅で遺言書を保管する大きなメリットは、保管費用がかからないことです。

自筆証書遺言を自分で作成し、自宅で保管するだけであれば、保管場所について公的機関へ手数料を支払う必要はありません。

一方、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する場合には、2026年8月現在、遺言書1通につき3,900円の保管申請手数料が必要です。この手数料は保管年数に応じて毎年発生するものではなく、保管申請時の定額となっています。

費用だけを比較すれば、自宅保管が最もシンプルです。

ただし、3,900円を節約することで紛失や未発見、検認などのリスクや手続きが増えるため、金額だけで保管方法を決めないことも大切です。

遺言書の現物を手元で管理できる

自宅保管であれば、遺言書の原本が自分の手元にあります。

そのため、どのような内容を書いたか確認したい、財産状況が変わったので見直したいという場合に、すぐ確認できます。

遺言書には一律の有効期限が設定されているわけではありませんが、作成後に、

不動産を売却した

新しい不動産を購入した

預金口座を解約した

家族が増えた

相続させる予定だった人が亡くなった

自分の考えが変わった

といった変化が起こることがあります。そのため、遺言書は一度作れば永久に放置してよいものではなく、生活や財産に大きな変化があったときには見直すことが重要です。

書き直しや撤回を検討しやすい

遺言者は、生前であれば遺言を撤回することができます。

また、前の遺言と後の遺言の内容が抵触する場合には、民法上、後の遺言によって前の遺言の抵触部分が撤回されたものとして扱われます。

自宅に原本があれば、内容を確認したうえで新しい遺言書を作成しやすいというメリットがあります。

ただし、自筆証書遺言をボールペンで自由に書き換えればよいわけではありません。

自筆証書遺言には訂正方法についても民法上の方式があります。

大きな変更をする場合には、古い遺言書へ何度も訂正を加えるより、新しい遺言書を適切な方式で作り直すほうがわかりやすい場合があります。

遺言書の存在や内容を秘密にしやすい

遺言内容によっては、生前は子どもたちに内容を知られたくないという方もいるでしょう。

たとえば、

特定の子に多く財産を残す

相続人以外の人へ遺贈する

寄付をする

家族には説明しにくい財産がある

といった場合です。

自宅に保管し、保管場所を他人へ伝えなければ、遺言内容を秘密にしやすいというメリットがあります。

ただし、このメリットはそのまま大きなデメリットにもなります。

誰にも遺言書の存在を知らせなければ、死亡後にも誰にも発見されない可能性があるからです。

そのため、遺言内容そのものは秘密にしながら、遺言書を作っていることやどこに保管しているかだけ信頼できる人へ伝えるという方法も検討するとよいでしょう。

自宅保管のデメリット

遺言書を紛失する可能性がある

自宅では、引っ越し、大掃除、家具の買い替え、書類整理、災害などによって、遺言書を紛失する可能性があります。

数十年前に作成した遺言書であれば、遺言者本人が保管場所を忘れてしまうことも考えられます。

法務省も、自筆証書遺言を自宅等で保管した場合には、紛失や、相続人に発見されないことなどが問題となり得ることから、自筆証書遺言書保管制度が設けられたと説明しています。

家族に捨てられる可能性がある

遺言書であることを誰にも伝えず、普通の封筒、古い書類のファイル、引き出しの奥などへ保管していると、家族が遺言書と気付かず処分してしまう可能性があります。

特に死亡後には遺品整理が行われるため、多数の書類が一度に処分されることがあります。

誰にも見つからない場所は、相続が始まっても見つけてもらえない場所でもあります。

故意に隠されたり破棄されたりする危険がある

遺言内容が一部の相続人にとって不利な場合には、遺言書を発見した人が、この遺言書がなければ自分の取り分が増えと考える可能性も否定できません。

民法第891条では、相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者について、相続欠格事由が定められています。

つまり、遺言書を故意に隠したり改ざんしたりすることは、単なる家族間のマナーの問題ではありません。

もっとも、具体的な事案で相続欠格に該当するかどうかについて争いが生じた場合には、事実関係や行為の内容を踏まえた法的判断が必要になります。

 死亡後に遺言書が発見されない

自宅保管で特に避けたいのがこのケースです。

有効な遺言書を作成していても、相続人がその存在を知らなければ、「遺言書はない」という前提で相続手続きを進めてしまう可能性があります。

その結果、法定相続人を調査し、遺産分割協議を行った後になって遺言書が発見されると、相続関係を改めて確認しなければならなくなることがあります。

遺言書は作ることだけでなく、死亡後に確実に存在を確認できる状態にすることまで考える必要があります。

原則として家庭裁判所の検認が必要

自宅保管した通常の自筆証書遺言では、相続開始後に「検認」が必要になります。

遺言書の保管者または発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく家庭裁判所に遺言書を提出して検認を請求します。

これに対して、公正証書遺言と法務局に保管された自筆証書遺言について交付される遺言書情報証明書については検認が不要です。

自宅保管と法務局保管を比較するときには、この死亡後の手続きの違いも大きなポイントです。

作成時に方式のチェックを受けられない

自宅保管そのものが問題なのではありませんが、自分一人で自筆証書遺言を作成し、そのまま自宅へ保管する場合には、作成時に誰からも形式を確認されないことがあります。

その結果、死亡後に、日付の書き方・本文の自書・署名・押印・財産目録の署名・押印・訂正方法などについて問題が発見される可能性があります。

本人が亡くなった後では書き直すことができません。

自宅保管を選択する場合でも、作成時には方式や内容を十分確認することが重要です。

法務局の自筆証書遺言書保管制度とは

自宅保管の問題を減らす方法として利用できるのが、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」です。

この制度は2020年7月10日に開始されました。法務局が自筆証書遺言の原本を保管することで、紛失、改ざん、死亡後に発見されないといった自宅保管の問題を軽減することを目的としています。

法務局保管の主なメリット

法務局へ預けると、

原本を法務局で保管できる

自宅での紛失や廃棄を防ぎやすい

改ざん・隠匿のリスクを抑えられる

死亡後の検認が不要

一定の死亡後通知制度を利用できる

というメリットがあります。

特に、自筆証書遺言の手軽さを残しながら保管上の弱点を補えることが大きな特徴です。

法務局は遺言内容の有効性まで保証してくれるわけではない

ただし、「法務局に預けたから、内容も完全に法的に有効」という意味ではありません。

遺言書保管官は、保管申請時に自筆証書遺言として定められた形式への適合を外形的に確認します。

しかし、法務局の保管制度は、遺言内容そのものについて法律相談を行ったり、将来すべての相続手続きで問題なく使用できることを保証したりする制度ではありません。

たとえば、

遺留分をどう考えるか

財産の分け方が適切か

不動産を十分に特定できているか

誰にどの財産を残すべきか

といった内容面については、別途検討が必要です。

公正証書遺言という選択肢もある

自宅保管と法務局保管だけでなく、公正証書遺言を作成する方法もあります。

公正証書遺言では、公証人が遺言者の意思を確認し、法律上の方式に従って公正証書を作成します。

遺言公正証書の原本は、公証役場または現在の電子公証制度に対応したシステムで保管されるため、自宅で原本を紛失したり家族に破棄されたりする心配を大幅に減らせます。

また、公正証書遺言についても家庭裁判所の検認は不要です。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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