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遺産相続で特別代理人が必要になるケース

初めに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

相続人の中に未成年の子どもがいたり、認知症などによって判断能力が低下している方がいたりすると、本人の代わりに家族が遺産分割協議をすればよいのでは?」

と思われるかもしれません。

しかし、代理する人自身も同じ相続の相続人になっている場合には、代理人と本人の利益が対立する「利益相反」が生じることがあります。

このような場合に、本人の利益を守るため家庭裁判所が選任するのが特別代理人です。

相続における「特別代理人」とは

特別代理人とは、親権者や成年後見人など、本来本人を代理する立場にある人が本人と利益相反の関係になる場合に、特定の法律行為について本人を代理するため、家庭裁判所によって選任される人です。

たとえば、父が死亡し、母と未成年の子が相続人になり、母と子で遺産を分けるというケースを考えてみましょう。

通常、未成年者について法律行為をする場合には親権者である母が代理します。

しかし、遺産分割では、母の取得分が増えれば、子の取得分が減るという関係になる可能性があります。

母自身が相続人であるにもかかわらず、子の代理人としても遺産分割を行うと、母が自分自身と交渉するような状態になってしまいます。

そのため、母は子を代理することができず、家庭裁判所に申し立てて、子のための特別代理人を選任する必要があります。

特別代理人は「その手続きだけ」を代理する

特別代理人は、親権者や成年後見人の代わりとして長期間本人の財産を管理する人ではありません。

家庭裁判所の審判で指定された特定の行為についてのみ代理権を持ちます。

たとえば遺産分割のために選任された場合には、

遺産分割協議への参加

遺産分割内容の確認

遺産分割協議書への署名・押印

遺産分割に伴って必要となる手続き

などを、審判で認められた範囲内で本人に代わって行います。

そして、家庭裁判所が定めた行為が終了すれば、特別代理人の任務も終了します。

つまり、成年後見人は継続的に本人を支援・代理し、特別代理人は特定の利益相反行為について一時的に代理するという違いがあります。

特別代理人が必要になるケース1

親権者と未成年者がともに相続人になる

相続で特別代理人が必要になる代表的なケースが、親権者と未成年の子が同じ相続の共同相続人になる場合です。

現在、民法上の成年年齢は18歳であるため、原則として18歳未満の子が未成年者となります。成年年齢は2022年4月1日に20歳から18歳へ引き下げられました。

父が亡くなり、母と未成年の子が相続するケース

たとえば、父が亡くなり、相続人が母と15歳の長男だったとします。

父の遺産が、自宅3,000万円と預貯金1,000万円だった場合、母と長男はこれらの財産をどのように分けるか協議することになります。

しかし、母が自宅をすべて取得する場合、その分、長男が取得できる財産が少なくなるというように、母と長男は遺産の取得について利害が対立します。

このため、母は長男の親権者であっても、遺産分割協議について長男を代理することはできません。

家庭裁判所へ特別代理人選任の申立てを行い、選任された特別代理人が長男を代理して母と遺産分割協議を行います。

未成年者が相続人でも特別代理人が不要な場合がある

未成年者が相続人は必ず特別代理人になるではありません。

親権者が同じ相続の相続人ではなく、親権者と未成年者との間に利益相反がない場合には、通常どおり親権者が子を代理できるケースがあります。

子の母は、亡くなった父方の祖母の相続人ではありません。

そのため、母自身が祖母の遺産を取得する立場ではなく、子との間に通常は遺産取得をめぐる利益相反がありません。

このような場合には、母が未成年の子を代理して遺産分割協議を行える場合があり、単に子が未成年であるという理由だけで特別代理人を選任する必要はありません。

特別代理人が必要かどうかは、親権者と子の法律上の利害が衝突するかどうかによって判断します。裁判所も、親権者と子の間の「利益相反行為」がある場合に特別代理人が必要になると案内しています。

未成年の兄弟姉妹が複数いる場合にも注意

未成年の相続人が2人以上いる場合には、さらに注意が必要です。

たとえば、父が死亡して、母・15歳の長男・12歳の長女が相続人というケースです。

この場合、母と長男、母と長女、長男と長女それぞれについて遺産の取得額が増減する関係があります。

裁判所も、複数の未成年者について同じ法定代理人が遺産分割協議を行うことを利益相反行為の一例として挙げています。

そのため、未成年者が複数いる場合には、子ども同士の利益相反も考慮し、必要な人数の特別代理人を選任するなど、それぞれの利益を守れる代理体制を整える必要があります。

具体的に何人の特別代理人が必要になるかは、相続人の構成や誰が誰を代理するかによって異なるため、個別に確認することが大切です。

特別代理人が必要になるケース2

成年被後見人と成年後見人がともに相続人になる

もう一つの代表的なケースが、成年被後見人と成年後見人が同じ遺産の共同相続人になる場合です。

たとえば、父が死亡して、母と長男が相続人になります。は認知症などにより成年被後見人になり、長男が母の成年後見人になるというケースです。

この場合、長男には、父の遺産を相続する長男本人という立場と、母の財産を守り、母を代理する成年後見人という2つの立場があります。

長男が自分の取得分を増やせば、母の取得分が減る可能性があるため、両者は利益相反の関係になります。

そのため、長男は成年後見人として母を代理して遺産分割協議を行うことができません。

家庭裁判所が選任した特別代理人が母を代理して遺産分割協議を行うことになります。

成年後見監督人がいる場合は特別代理人が不要になることがある

成年被後見人と成年後見人が利益相反となる場合でも、成年後見監督人が選任されていれば、原則として改めて特別代理人を選任する必要はありません

成年後見監督人が成年後見人に代わって本人を代理するためです。

したがって、成年後見人と本人が共同相続人だから、必ず特別代理人を申し立てると考えるのではなく、まず成年後見監督人が選任されているかどうかを確認します。

特別代理人になれる人は?

特別代理人になるために、弁護士・司法書士・行政書士などの特別な国家資格が必要なわけではありません。裁判所も、資格は特に必要ないと案内しています。

ただし、誰でも無条件に選任されるわけではありません。特別代理人は本人の利益を守るために選任されるため、

本人との関係

相続との利害関係

特別代理人として適切に職務を行えるか

などを家庭裁判所が確認します。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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