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ただし、「借地権」と一口にいっても、法律上は建物所有を目的とする「地上権」と「土地の賃借権」が含まれます。借地借家法第2条も、借地権をこの二つに分けて定義しています。実際の住宅では土地賃貸借契約による借地権が多いものの、権利の種類によって譲渡時に地主の承諾が必要かどうかなどが変わるため、遺言書を作る前に現在の契約内容を確認する必要があります。
たとえば父親が地主から土地を借り、その上に自宅を所有しており、その自宅と借地権を長女に相続させたいとします。この場合、法定相続人である長女が相続によって借地権を承継するのであれば、通常の賃借権譲渡とは異なり、相続そのものについて地主の承諾を得る必要はありません。民法第896条では、相続人は相続開始時から、被相続人に属していた一身専属的なものを除く権利義務を承継するとされています。借地契約上の地位も原則としてこの相続の対象になります。
そのため、借地上の建物と借地権を特定の相続人に取得させたい場合には、「建物を相続させる」とだけ書くよりも、その建物の所有を目的とする借地権もあわせて相続させることを明確にしておく方が分かりやすいでしょう。
一方、相続人ではない友人や内縁のパートナーなどへ財産を残す場合には「相続させる」ことはできず、遺贈を利用することになります。この場合には別の注意が必要です。
土地の借地権が「土地賃借権」である場合、民法第612条は、賃借人が賃貸人の承諾なく賃借権を譲渡することを原則として認めていません。東京地方裁判所も、借地上の建物を第三者へ譲渡し、それに伴って土地賃借権を移転させる場合には、土地所有者の承諾が必要になると案内しています。
そのため、たとえば法定相続人ではない友人に借地上の建物と土地賃借権を特定遺贈する場合には、相続人への承継と同じようには考えられず、地主の承諾が問題になります。
ただし、ここで「遺贈と書けばすべて地主の承諾が必要」と一律に説明するのも正確ではありません。借地権には土地賃借権だけでなく地上権も含まれますし、「全財産の2分の1を遺贈する」といった包括遺贈では、民法第990条によって包括受遺者が相続人と同一の権利義務を有するという別のルールがあります。したがって、相続人ではない人へ借地権を残したい場合には、単純にひな形の「相続させる」を「遺贈する」に置き換えるのではなく、現在の借地権の種類と遺贈方法を確認する必要があります。
特に土地賃借権を第三者へ承継させたい場合には、遺言者が元気なうちに地主へ相談し、承諾の可否や必要となる条件について確認しておいた方が安全です。
長年借りている土地では、「契約書を紛失した」「親の代から借りていて、そもそも書面を作ったのか分からない」ということもあります。しかし、借地契約書が見つからないからといって、それだけで借地権が存在しないことになるわけではありません。
一般的な賃貸借について、民法第601条は当事者が物を使用収益させることと賃料の支払い等を約することで効力が生じるとしています。そのため、通常の土地賃貸借では、契約書がない場合でも、地主との合意、地代の支払状況、建物の所有状況などから契約関係が認められることがあります。
ただし、書面がないと、「どの範囲の土地を借りているのか」「地代はいくらか」「契約期間はいつまでか」「更新料や建替えについてどのような約束があるのか」を死亡後に確認することが難しくなります。地主と相続人の認識が違えば、相続後のトラブルにもつながります。そのため、契約書がない場合には、生前に地主と契約内容を確認し、可能であれば書面化しておくと安心です。
なお、定期借地権は別です。一般定期借地権では更新しない旨などの特約について書面等が要求され、事業用定期借地権等は公正証書によって設定しなければならないなど、借地借家法上の方式が定められています。したがって、「契約書がなくても借地権は問題ない」という説明をすべての借地権に当てはめることはできません。
第1条
遺言者は、下記1記載の建物及び同建物の所有を目的とする下記2記載の土地賃貸借契約に基づく借地権を、長女山田○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。
1 建物
所在 ○○市○○区○○町○丁目○番地
家屋番号 ○番○
種類 居宅
構造 木造瓦葺平家建
床面積 ○○平方メートル
2 借地権
賃貸人 ○○○○
契約日 令和○年○月○日
借地の所在 ○○市○○区○○町○丁目○番
借地面積 ○○.00平方メートル
前記建物の所有を目的とする土地賃貸借契約に基づく借地権
第1条
遺言者は、下記建物及び同建物の所有を目的として遺言者が有する敷地の借地権その他土地使用に関する権利を、長男山○○郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。
所在 ○○市○○区○○町○丁目○番地
家屋番号 ○番○
種類 居宅
構造 木造瓦葺平家建
床面積 ○○.00平方メートル
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大山悠太
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