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お世話になった人に財産を残したい方の遺言書

初めに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

「長年自分を支えてくれた友人に財産を残したい」「親族ではないけれど、介護や生活の手助けをしてくれた人に感謝の気持ちとして財産を渡したい」と考える方もいるでしょう。法律上の相続人ではない友人や知人であっても、遺言書を作成して「遺贈する」と定めることで、自分の財産を残すことができます。遺言によって財産を渡すことを「遺贈」、遺贈を受ける人を「受遺者」といいます。

ただし、お世話になった人へ財産を残す遺言は、単に「全財産を友人Aに遺贈する」と書けば終わりというものではありません。法定相続人に遺留分がある場合には遺留分侵害額請求を受ける可能性がありますし、受遺者が遺言者より先に亡くなることや、遺贈を受けたくないと考えることもあります。

お世話になった友人や知人にも財産を遺贈できる

遺言書では、法定相続人だけでなく、友人、知人、内縁・事実婚のパートナー、長年介護してくれた人など、相続人ではない人にも財産を遺贈することができます。たとえば、「○○銀行の預貯金を友人Aに遺贈する」「自宅を長年身の回りの世話をしてくれたBさんに遺贈する」といった内容です。遺言は本人の死亡後に財産の帰属を決める重要な書類であるため、法律で定められた方式に従って作成する必要があります。

なお、「自宅をAさんに遺贈する」というように特定の財産を渡すものと、「全財産をAさんに遺贈する」「遺産の2分の1をAさんに遺贈する」というものでは法律上の扱いが異なります。後者のように遺産の全部または一定割合を包括的に遺贈された人は「包括受遺者」となり、民法第990条により相続人と同一の権利義務を有します。つまり、「全財産を友人に遺贈する」という遺言では、預貯金や不動産だけでなく、債務を含めた遺産全体との関係も考える必要があります。

そのため、お世話になった人へ財産を残したい場合でも、「全部あげる」と簡単に決めるのではなく、特定の預貯金や一定額の現金を遺贈するのか、特定の不動産を遺贈するのか、それとも遺産全体を包括的に遺贈するのかを整理しておくことが重要です。

法定相続人の遺留分には注意する

友人や知人への遺贈で最も注意したいのが、法定相続人の遺留分です。遺留分は兄弟姉妹以外の一定の相続人に認められている最低限の財産的利益であり、遺贈によって遺留分が侵害された場合には、遺留分権利者から受遺者に対して侵害額に相当する金銭の支払いを請求される可能性があります。

民法第1042条では、遺留分を算定するための財産全体に対する割合は、直系尊属だけが相続人の場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1とされ、各人の具体的な遺留分はさらに法定相続分に応じて計算します。また、兄弟姉妹には遺留分がありません。

たとえば、妻と子どもがいるにもかかわらず、「全財産を友人Aに遺贈する」という遺言書を作ること自体は可能です。その遺言が遺留分を侵害しているという理由だけで当然に無効になるわけでもありません。しかし、妻や子どもから遺留分侵害額請求を受ければ、Aさんが金銭を支払わなければならない可能性があります。裁判所も、遺留分を侵害された相続人は、贈与や遺贈を受けた者に対して侵害額に相当する金銭の支払いを請求できると案内しています。

したがって、「お世話になったAさんに迷惑をかけずに財産を残したい」という目的であれば、相続人の遺留分を考慮したうえで遺贈額を決める方法もあります。たとえば、配偶者や子には遺留分を満たす程度の財産を取得させ、それ以外の財産をAさんに遺贈するといった設計です。ただし、遺留分の計算には一定の生前贈与や債務なども関係するため、単純に死亡時の預貯金だけを見て判断しないことが大切です。

遺贈した理由は付言事項で伝えておく

お世話になった人へ財産を残す場合には、なぜその人に財産を残したのかを家族が理解できるよう、付言事項で理由を書いておく方法があります。たとえば、「Aさんには、私が病気になってから長年にわたり通院や日常生活を支えていただきました。その感謝の気持ちとして本遺言の財産を遺贈します。家族にも私の意思を理解してもらいたいと願っています」といった内容です。

付言事項に遺贈の理由を書いたからといって、相続人の遺留分侵害額請求権をなくすことはできません。しかし、何の説明もなく突然「全財産を知らない人に遺贈する」という遺言が出てきた場合と、本人が長年世話になった事情や感謝の気持ちを丁寧に説明している場合とでは、家族の受け止め方が異なる可能性があります。また、受遺者自身も「なぜ自分がこれほどの財産を受け取るのか」が分からないと戸惑うことがありますので、本人の意思を残しておくことには意味があります。

ただし、「相続人に罪悪感を持たせて遺留分請求をさせない」といった目的で付言事項を書くのはおすすめできません。相続人を強く非難したり、「絶対に請求するな」と書いたりすると、かえって感情的な対立を深めることもあります。

遺言執行者を指定しておくと手続きを進めやすい

相続人ではない友人や知人へ財産を遺贈する場合には、遺言執行者を指定しておくことを検討しましょう。民法第1012条では、遺言執行者は遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な行為をする権利義務を有するとされています。

特に、受遺者と相続人がほとんど面識のないケースでは、本人が亡くなった直後から受遺者自身が相続人と連絡を取り、戸籍や財産資料を確認し、不動産や預貯金の手続きを進めることは大きな負担になります。遺言執行者を指定しておけば、遺言内容を実現するための手続きを中心となって進めてもらうことができます。

お世話になった人へ財産を残す遺言書の文例

第1条

遺言者は、金500万円を、遺言者の友人山田花子(昭和○年○月○日生、住所○○県○○市○○)に遺贈する。

第2条

遺言者は、前条記載の財産を除くその他一切の財産を、長男山田一郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。

第3条

山田花子が遺言者より先に死亡していた場合、又は第1条の遺贈がその他の理由により効力を生じない場合には、同条記載の金500万円を長男山田一郎に相続させる。

第4条

遺言者は、本遺言の遺言執行者として○○○○を指定する。

 

さらに付言事項として、「山田花子さんには、私が病気になってから長年にわたり生活を支えていただきました。その感謝の気持ちとして500万円を遺贈することにしました。家族にも私の意思を理解してもらい、穏やかに本遺言を実現してもらうことを願っています」といった理由を残すこともできます。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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