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そのため、受取人を変更したい意思がすでに固まっているのであれば、生前に保険会社で変更手続きを済ませておくことが最も分かりやすい方法です。
事情があって遺言による変更を利用する場合には、遺言書の作成だけでなく、対象となる保険契約の特定や死亡後の通知まで含めて準備しておくことが重要です。
保険契約者が生前に受取人を変更できるのであれば、まず保険会社所定の手続きによって変更しておく方法を検討しましょう。
保険法では、保険事故が発生するまでは保険契約者が保険金受取人を変更できるとされており、具体的な必要書類や手続方法については各保険会社へ確認することになります。死亡保険金受取人の変更には被保険者の同意も必要です。
生前に手続きを完了しておけば、契約上登録されている受取人そのものが変更されるため、死亡後に「遺言による変更を保険会社へ通知する」という手続きを必要とする場面を減らせます。
特に、現在の受取人と変更後の受取人の関係が良くない場合や、相続人以外の第三者を受取人にしたい場合には、生前変更のメリットは大きいでしょう。
ただし、受取人として指定できる人の範囲や必要書類などは保険会社や商品によって異なる場合があります。また、契約者と被保険者が別人である場合には、被保険者の同意が得られるかどうかも確認する必要があります。
遺言による受取人変更を利用する場合には、遺言執行者を指定しておき、死亡後に誰が遺言書を確認し、相続人や保険会社へ連絡するのかを明確にしておく方法があります。
遺言執行者がいることで、遺言書が見つかった後の手続きや関係者への連絡を進めやすくなります。
ただし、ここでは注意が必要です。保険法第44条第2項は、遺言による受取人変更について、遺言が効力を生じた後に「保険契約者の相続人」が保険会社へ通知しなければ、保険会社に対抗できないと定めています。
一方、保険会社の約款や実務では、遺言執行者からの通知を取り扱う場合もあり、生命保険業界の資料にも、約款上「法定相続人」に遺言執行者を含めている例があります。
したがって、「遺言執行者を指定すれば、必ず相続人に代わって通知できる」と一律に説明するのは避けた方が安全です。遺言による変更を予定している場合には、生前に保険会社へ問い合わせ、死亡後に誰から、どのような書類を提出すれば受取人変更の通知として取り扱われるのかを確認しておくことをおすすめします。
遺言による受取人変更は、有効な遺言によって行われていることが前提です。そのため、自筆証書遺言の方式に不備がある、遺言の内容が不明確であるといった問題があると、受取人変更そのものが争われる可能性があります。
こうしたリスクを減らす方法の一つが、公正証書遺言です。
公正証書遺言は公証人が遺言者の意思を確認しながら作成するため、自筆証書遺言と比べて方式上の不備が生じにくいというメリットがあります。また、原本は公証側で保管され、家庭裁判所の検認も必要ないため、紛失、隠匿、改ざんなどのリスクも抑えられます。
もっとも、公正証書遺言であれば絶対に無効にならないわけではありません。
遺言作成時の遺言能力などをめぐって後から争われる可能性は残ります。また、生命保険の受取人変更については、遺言自体が有効であっても、どの保険契約を変更するのか特定できなければ別の問題が生じます。
そのため、遺言書には「死亡保険金の受取人を○○から△△に変更する」という意思を明確にするとともに、保険会社名、保険証券番号、契約者、被保険者などを用いて対象となる契約を客観的に特定できるようにしておくことが重要です。
家族関係などから、生命保険の受取人そのものを変更すると大きな対立が予想される場合には、受取人は変更せず、遺言によって不動産や預貯金など他の財産の配分を調整する方法も検討できます。
ただし、生命保険金と相続財産は法律上同じものではありません。契約によって特定された死亡保険金受取人が取得する保険金請求権は、原則としてその受取人自身の権利となるため、遺言で預貯金や不動産を配分することと、保険金受取人を変更することは完全に同じ効果にはなりません。
また、他の相続財産を一人の相続人に集中させれば、遺留分の問題が生じる可能性もあります。そのため、「保険金を長男が受け取るから、遺産はすべて長女に残せばよい」と単純に決めるのではなく、保険金額と遺産全体の価値を確認したうえで配分を考えることが大切です。
遺言書を作成する前には、実際の保険証券や契約内容を確認しておきましょう。特に確認したいのは、保険会社名、保険証券番号、契約者、被保険者、現在の受取人、死亡保険金額、契約時期などです。
また、保険会社によっては受取人として指定できる人の範囲や、遺言による変更を通知するときに必要となる書類について独自の取扱いがあります。
遺言書を完成させてから問題に気付くのではなく、事前に保険会社へ「遺言による受取人変更を予定している」と相談し、約款と必要な手続きを確認しておくと安心です。
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