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遺産分割協議書を作成するときの注意点

初めに

遺産分割協議書は、相続人同士で合意した内容を記録するための重要な書類です。単に形式を整えればよいというものではなく、相続人の確認や財産の特定、記載内容などに不備があると、不動産の相続登記や金融機関での手続きを進められなかったり、後になって相続人同士のトラブルにつながったりする可能性があります。

特に、自分で遺産分割協議書を作成する場合には、「誰が協議に参加しなければならないのか」「どの財産を誰が取得するのか」を明確にすることが重要です。また、未成年者や判断能力が十分でない相続人がいる場合など、通常とは異なる対応が必要になるケースもあります。

相続人全員が参加していることを確認する

遺産分割協議を成立させるためには、原則として相続人全員の合意が必要です。そのため、本来参加すべき相続人を一人でも除外したまま遺産分割を成立させることはできません。

また、相続人の一人がすでに亡くなっている場合には、代襲相続や数次相続によって、その人の子どもや配偶者などが協議に関係してくることもあります。相続関係が複雑な場合には、協議書を作成する前に相続関係図を作り、参加すべき人に漏れがないか確認するとよいでしょう。

財産は第三者が見ても特定できるように記載する

遺産分割協議書では、「誰が何を取得するのか」を明確にしなければなりません。そのため、単に「自宅は長男が相続する」「○○銀行の預金は長女が相続する」と記載するだけではなく、対象となる財産を具体的に特定できるように記載することが重要です。

不動産については、一般的な住所ではなく登記事項証明書を確認し、土地であれば所在、地番、地目、地積など、建物であれば所在、家屋番号、種類、構造、床面積などを登記記録に沿って記載します。預貯金についても、金融機関名、支店名、預金種別、口座番号などを記載して、どの口座を指しているのか分かるようにします。

財産の記載に誤りがあったり、どの財産を指しているのか判断できなかったりすると、相続登記や金融機関での手続きの際に訂正や協議書の作り直しを求められる可能性があります。協議書を完成させる前に、通帳や残高証明書、登記事項証明書などの資料と照合して確認しておくことが大切です。

誰が取得するのか分からない表現はできるだけ避ける

遺産分割協議書を作成するときは、後から複数の解釈ができるような表現を避けることも重要です。

一方、「本協議書に記載のない遺産については長男○○が取得する」といった、後から判明した財産の取得者を明確にした条項を設けること自体は可能です。

財産調査を行っても、協議書の作成後に新たな預貯金や株式などが判明することはあります。後から財産が見つかった場合に「その財産を誰が取得するのか」「改めて相続人全員で協議するのか」についてあらかじめ定めておけば、再び相続人全員で一から話し合う負担を減らせる場合があります。

実印と印鑑証明書が必要になる手続きを確認する

遺産分割協議書そのものについて、法律上必ず実印を押さなければ成立しないというわけではありません。しかし、実際の相続手続きでは、本人がその遺産分割に同意したことを確認するため、相続人全員が実印を押した遺産分割協議書と印鑑証明書を求められることが一般的です。

そのため、協議書を実際の相続手続きに使用するのであれば、相続人全員が内容を確認したうえで署名し、実印を押印して、それぞれの印鑑証明書も準備しておくと手続きが進めやすくなります。

借金などの債務は遺産分割だけでは処理できないことがある

相続財産を確認するときには、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借入金、未払金、保証債務などについても確認する必要があります。ただし、借金などの債務については、預貯金や不動産とまったく同じように遺産分割によって自由に振り分けられるわけではない点に注意が必要です。

被相続人に借金がある場合には、相続人間での負担方法だけではなく、債権者との関係も含めて検討する必要があります。また、多額の借金が判明した場合には、遺産分割を進める前に相続放棄や限定承認を検討すべきケースもあるため、相続開始後の早い段階で債務の状況を確認することが重要です。

未成年の相続人がいる場合は利益相反に注意する

相続人の中に未成年者がいる場合には、誰がその未成年者を代理して遺産分割協議を行うのかを確認する必要があります。通常、未成年者については親権者が法定代理人となりますが、親権者自身も同じ相続の相続人である場合には、親と子の利益が対立する「利益相反」の状態になることがあります。

ただし、未成年の相続人がいるからといって、必ず特別代理人が必要になるわけではありません。親権者と未成年者との間に利益相反があるかどうかによって対応が異なるため、相続人の構成を確認して判断することが大切です。

認知症の相続人がいる場合は慎重に対応する

遺産分割協議は財産に関する重要な法律行為であるため、相続人本人が協議内容を理解し、判断できることが前提となります。相続人が高齢であったとしても、それだけで遺産分割協議に参加できなくなるわけではありませんが、認知症などによって協議内容を理解して判断する能力が十分でない場合には、そのまま署名・押印をしてもらうだけでは問題が生じる可能性があります。

本人の判断能力の程度によっては、成年後見制度などの利用を検討し、選任された成年後見人等が本人のために手続きを行う必要が生じることがあります。

また、すでに成年後見人が選任されている場合でも、その成年後見人自身が共同相続人であるなど本人との利益相反が生じるケースでは、別途対応が必要になる場合があります。

作成後は相続人全員で最終確認を行う

遺産分割協議書は、形式が整っているだけでは十分ではありません。署名・押印する前に、相続人の氏名や住所、被相続人の情報、預貯金の口座情報、不動産の表示、財産を取得する人の氏名などに誤りがないかを確認する必要があります。

また、協議書を提出した後に財産の記載漏れや表記の間違いが判明すると、相続人全員から再び署名・押印をもらわなければならないこともあります。

特に相続人が遠方に住んでいる場合や人数が多い場合には、作り直しだけでも大きな負担になります。完成した協議書へすぐに押印するのではなく、最終版を相続人全員で確認し、第三者が読んでも「誰が、どの財産を、どのように取得するのか」が明確に分かる状態にしてから署名・押印することが大切です。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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