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現金・預貯金を遺言書に記載する際の注意点

初めに

遺言書を作成する際には、不動産や預貯金などの財産について、誰に何を相続させるのかを明確に記載することが重要です。しかし、財産の中でも見落としやすいのが、自宅の金庫や財布などに保管している現金です。

一般的には、現金も預貯金も同じお金として考えられていますが、法律上は異なる種類の財産として扱われます。そのため、遺言書に「預貯金をすべて妻に相続させる」と記載していても、自宅に保管している現金まで当然に含まれるとは限りません。

また、「金融資産」や「その他の財産」といった表現を使用する場合にも、記載方法によっては、どの財産が含まれるのかが不明確になることがあります。

遺言書の内容が曖昧だと、相続開始後に財産の承継先をめぐって相続人間で意見が対立し、遺産分割協議が必要になる可能性もあります。

「預貯金」と記載しただけでは手元の現金が含まれない

遺言書を作成する際にまず理解しておきたいのは、現金と預貯金は法律上異なる財産だという点です。

現金とは、紙幣や硬貨など、実際に手元に存在するお金を指します。

一方、預貯金は、銀行や信用金庫、ゆうちょ銀行などの金融機関に預けているお金について、金融機関に払戻しなどを求めることができる権利です。法律上は、金融機関に対する債権として扱われます。

そのため、遺言書に「私が所有するすべての預貯金を長男に相続させる」と記載した場合、通常は金融機関に預けている預貯金が対象となり、自宅などに保管している現金は含まれません。

現金と預貯金を明確に記載する方法

「遺言者は、遺言者の有する一切の現金および預貯金を、長男Aに相続させる。」このように「現金」と「預貯金」をそれぞれ明記しておけば、金融機関の口座にあるお金だけでなく、手元に保管している現金も対象とする意思を示しやすくなります。

ただし、特定の銀行口座だけを相続させたい場合には、金融機関名や支店名、預金の種類、口座番号などを記載して、対象となる預貯金を明確にする方法もあります。

また、自宅に保管している現金については、遺言書作成時と相続開始時で金額が変わることも考えられます。そのため、金額を固定して指定するのか、死亡時に所有している現金のすべてを対象とするのかについても検討しておくとよいでしょう。

「金融資産」という表現だけでは対象となる財産が曖昧になる可能性がある

遺言書では、預貯金や有価証券などをまとめて「金融資産」と表現することがあります。しかし、この言葉を使用する場合には、どの財産を含めるのかを明確にしておくことが重要です。

金融資産とは、一般的に現金や預貯金、株式、債券、投資信託などを広く指す言葉です。ただし、遺言書で「金融資産」と記載した場合、その言葉が具体的にどの範囲の財産を指すのかについて、解釈が問題となる可能性があります。

財産の範囲を具体的に示すことが重要

このように現金を明記しておけば、手元に保管されている現金も妻に承継させたいという意思が伝わりやすくなります。

一方、現金は別の相続人に残し、預貯金や有価証券だけを妻に相続させたい場合には、現金を除外することを明確にしたうえで、それぞれの承継先を指定する必要があります。

例えば、預貯金と有価証券を妻に、現金を長男に相続させるなど、財産の種類ごとに条項を分ける方法も考えられます。

ただし、金融資産にはさまざまな種類があり、財産の内容によって適切な特定方法が異なります。証券会社の口座で保有している株式や投資信託などについては、口座情報や銘柄などを確認し、承継する財産の範囲が分かるようにしておくことが大切です。

また、遺言書を作成した後に金融機関を変更したり、新たな投資商品を購入したりする可能性もあります。そのため、現在の財産を個別に指定する方法だけでなく、将来の財産の増減にも対応できる記載方法を検討することが望ましいでしょう。

「その他一切の財産」を指定して記載漏れに備える

現金や預貯金の記載漏れを防ぐ方法として、遺言書に「その他一切の財産」などの条項を設けることも考えられます。

遺言書では、不動産や預貯金などの主な財産について、それぞれ取得者を指定する方法が一般的です。しかし、すべての財産を個別に列挙しようとしても、本人が存在を忘れていた財産や、遺言書作成後に新たに取得した財産が残る可能性があります。

また、長年利用していない預金口座や、自宅に保管していた現金など、財産調査の段階で把握できなかった財産が相続開始後に見つかることもあるでしょう。

このような場合に備えて、個別に指定していない財産の承継先も遺言書で定めておくことが有効です。

残余財産を指定することで遺産分割協議を減らせる

「遺言者は、前各条に記載した財産を除く、その余の一切の財産を、妻Aに相続させる。」

このように記載することで、個別の条項で指定されていない現金や預貯金などについても、原則として妻に承継させる意思を示すことができます。

ただし、「その他の財産」と記載すれば、どのような場合でも必ずすべての財産が含まれるというわけではありません。実際には、遺言書全体の文言や内容、ほかの条項との関係などによって解釈が異なる場合があります。

そのため、残余財産の範囲をできる限り明確にし、ほかの条項と矛盾しないように記載することが重要です。

意図しない財産まで含まれないよう注意する

残余財産についての条項は記載漏れを防ぐために役立ちますが、指定した相続人が想定していなかった財産まで取得する可能性がある点には注意が必要です。

そのため、遺言書を作成する際には、預貯金や不動産だけでなく、その他の財産についてもできる限り調査し、承継先を適切に検討しておくことが望ましいでしょう。

また、残余財産を特定の相続人に相続させる場合でも、借入金などの債務については別の法律上の取扱いが問題となることがあります。「その他一切の財産」という文言によって、相続債務の負担関係まで当然に希望どおり変更できるわけではありません。

さらに、残余財産の取得者として指定された人が遺言者より先に亡くなった場合などには、予定していた承継が実現しなくなることもあります。そのような場合に備えて、予備的な承継先を指定しておく方法も考えられます。

残余財産についての条項を設ける際には、単に記載漏れを防ぐだけでなく、どのような財産が含まれる可能性があるのかを理解したうえで、慎重に内容を決めることが大切です。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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