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経営者が事業承継について十分な準備をしないまま亡くなった場合、自社株式や事業に関係する財産は相続の対象となります。遺言書がなく、複数の相続人がいる場合には、必要に応じて遺産分割協議を行い、財産の取得者を決めなければなりません。
また、自社株式が複数の相続人に分散すると、後継者が十分な議決権を確保できず、会社の重要事項を円滑に決定できなくなる可能性もあります。
ここでは、事業承継のために遺言書を作成する際に確認しておきたい3つの注意点について解説します。
事業承継を円滑に進めるためには、後継者が会社の経営に必要な株式や資産を確保できるよう、遺言書の内容を検討することが大切です。
特に、中小企業では経営者自身が自社株式の多くを所有していることがあり、その株式の承継先が会社の経営権に大きく関わります。
この場合、父親が遺言書を残していなければ、自社株式についても相続が発生し、相続人間で取得者を決める必要が生じることがあります。
会社の株式には、株主総会で議決権を行使する権利などが伴います。そのため、株式が複数の相続人に分散すると、後継者が会社の意思決定に必要な議決権を十分に確保できなくなるおそれがあります。
また、複数の相続人が株式を共同相続し、遺産分割が完了していない場合には、株式に関する権利をどのように行使するかについても問題が生じることがあります。
こうした状況を避けるためには、経営者が生前に後継者を決め、遺言書によって自社株式の承継先を明確にしておくことが重要です。
ただし、遺言書だけで会社の代表取締役の地位を当然に引き継がせることはできません。後継者の役員就任などについては、会社法や定款に従った別の手続きが必要になります。
事業承継を目的として遺言書を作成する場合には、公正証書遺言の利用を検討することが望ましいでしょう。
事業承継では、後継者に自社株式や事業用財産を集中して承継させることがあるため、ほかの相続人との間で財産の分配方法をめぐる意見の対立が生じる可能性があります。
また、遺言書の作成方法に不備があった場合には、形式的な要件を満たしていないことを理由に、遺言書の有効性が争われる可能性もあります。
こうしたリスクを減らすためには、法律で定められた方式に従い、遺言内容を明確にした遺言書を作成することが重要です。
公正証書遺言とは、法律の専門家である公証人が関与し、原則として2人以上の証人の立会いのもとで作成される遺言書です。
遺言者が公証人に遺言内容を伝え、公証人が法律上の方式に従って公正証書を作成します。
公正証書遺言では、公証人が遺言内容や作成手続きを確認するため、自分だけで作成する自筆証書遺言と比べて、形式上の不備が生じるリスクを減らしやすいというメリットがあります。
また、作成された遺言書の原本は公証役場で保管されるため、自宅で保管する場合と比べて、紛失や破棄、改ざんなどのリスクも軽減できます。
さらに、公正証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所での検認手続きを行う必要がありません。そのため、遺言書の確認から必要な相続手続きへ進みやすいという利点もあります。
ただし、公正証書遺言であっても、遺言書の有効性が絶対に保証されるわけではありません。遺言能力の有無や遺言内容の解釈などをめぐって、相続開始後に争いが生じる可能性はあります。
そのため、公正証書遺言を利用する場合でも、経営者自身の意思を明確にし、財産の承継先や事業承継の目的について十分に検討することが大切です。
遺言書には、公正証書遺言のほかに、自分で作成する自筆証書遺言という方法もあります。
自筆証書遺言は、公証人に依頼せずに作成できるため、比較的手軽に利用できることが特徴です。
また、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、遺言書の原本を法務局で保管してもらうことができ、相続開始後の家庭裁判所による検認も不要になります。
ただし、法務局の保管制度では、遺言書が民法で定められた形式に適合しているかについて外形的な確認が行われるものの、遺言内容の法的な有効性まで保証されるわけではありません。
そのため、会社の株式や事業用財産など、承継方法によって経営に大きな影響を及ぼす財産については、専門家と相談しながら遺言書の内容を検討することが望ましいでしょう。
特に、後継者への株式の集中や遺留分への対応など、複数の法律上の問題が関係する場合には、公正証書遺言を含めた適切な方法を選択することが重要です。
事業承継を目的とした遺言書では、後継者に経営に必要な財産を集中させることが重要ですが、その一方で、ほかの相続人に認められる遺留分にも配慮する必要があります。
遺留分とは、一定の法定相続人に対して保障されている最低限の遺産取得利益のことです。配偶者や子ども、一定の場合の父母などに認められますが、兄弟姉妹には遺留分がありません。
例えば、経営者が長男を後継者に指定し、自社株式や事業用財産の大部分を長男に相続させる遺言書を作成した場合、ほかの相続人の遺留分を侵害してしまう可能性があります。
遺留分を侵害する遺言書であっても、そのことだけを理由に当然に無効になるわけではありません。しかし、遺留分を侵害された相続人が遺留分侵害額請求を行った場合には、後継者が金銭の支払いを求められることがあります。
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