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特に、将来の相続について希望がある場合には、十分に自分の意思を判断して伝えられるうちに一度遺言書を作成し、その後必要に応じて見直していく方法も考えられます。
早いうちに遺言書を作成しておく主なメリットとして、遺言能力があるうちに意思を残せること、後から何度でも見直せること、将来の変化を想定した内容を定められること、そして遺言書を作成した後も自分の財産を使用・処分できることが挙げられます。
遺言書を有効に作成するためには、遺言をする時点で、自分がどのような財産を持ち、誰にどのように残すのかを理解して判断できるだけの遺言能力が必要です。そのため、病気などによって判断能力が大きく低下した後では、本人の希望があっても有効な遺言書を作成できない可能性があります。
ただし、「認知症と診断されたら遺言書は一切作成できない」というわけではありません。認知症の診断名だけで遺言能力の有無が決まるものではなく、実際に遺言を作成した時点の判断能力や、遺言内容の複雑さなどを踏まえて判断されます。軽度の認知症などで本人が遺言内容を十分に理解している場合には、遺言を作成できる可能性があります。
一方で、判断能力が大きく低下してから遺言を作成すると、相続開始後に「作成当時、本当に遺言内容を理解できていたのか」と争われる可能性も高くなります。公正証書遺言であっても、遺言能力に関する争いが完全になくなるわけではありません。
また、判断能力が低下すると、遺言だけでなく、生前贈与や家族信託など本人の意思に基づく契約を必要とする相続対策についても利用が難しくなる場合があります。
遺言書は、一度作成したらその内容を一生変更できないものではありません。遺言者は、遺言能力がある限り、遺言の全部または一部を後から撤回したり、別の内容の遺言を作成したりすることができます。
そのため、「まだ老後の財産状況が確定していない」「子どもたちの将来が分からない」という理由だけで、遺言書の作成を先延ばしにする必要はありません。まず現在の財産状況と希望をもとに遺言書を作成し、その後、家族関係や財産に大きな変化があった段階で見直すという方法もあります。
ただし、複数の遺言書を作成した場合に、「一番新しい遺言書だけが有効になり、それ以前の遺言はすべて無効になる」と単純に考えるのは正確ではありません。前の遺言と後の遺言の内容が抵触する場合には、その抵触する部分について前の遺言が撤回されたものとして扱われます。
遺言書は、現在所有している財産を一つずつ細かく指定する方法だけでなく、将来の財産変動をある程度想定した内容にすることもできます。
また、財産を取得する予定の人が遺言者より先に亡くなる可能性もあります。
たとえば、妻に全財産を相続させる遺言を作成していたところ、妻が先に亡くなった場合、妻の子どもが当然にその遺言上の地位を引き継ぐとは限りません。そこで、最初に指定した人が先に亡くなった場合の取得者まで定めておけば、本人の希望を実現しやすくなります。
もっとも、予備的な内容を定めておけば将来一切見直す必要がなくなるわけではありません。不動産を売却した、家族が増えた、相続させる予定だった人との関係が変わったなど、大きな事情の変化があった場合には、遺言書の内容も確認することが大切です。
遺言書を作成したからといって、そこに記載した財産が相続人のために固定され、本人が生前に使えなくなるわけではありません。遺言は原則として遺言者が亡くなったときに効力を生じるため、それまでは本人が自分の財産を管理し、生活費や医療費などに使用することができます。
ただし、特定の財産について遺言をしていた場合には注意が必要です。たとえば、「A土地を長男に相続させる」と遺言した後で、本人が生前にA土地を第三者へ売却した場合、その生前処分と遺言内容は両立しません。このような場合には、売却と抵触する部分について遺言を撤回したものとして扱われます。
したがって、「遺言書に記載した財産は何をしても遺言に影響しない」という意味ではありません。財産を大きく処分したり、遺言書に記載した不動産を売却したりした場合には、現在の財産状況に合わせて遺言書を見直しておくとよいでしょう。
老後には介護費や医療費がかかる可能性があるため、「最終的にどれだけ財産が残るか分からないので遺言書を書けない」と考える人もいます。しかし、遺言書を作成したからといって、その後の財産利用が制限されるわけではありません。
預貯金のように金額が変動する財産については、死亡時点で残っている財産を対象とする形で遺言を作成する方法もあります。また、個別の財産だけでなく「その他一切の財産」の取得者を定めておけば、遺言作成後に取得した財産についても対応しやすくなります。
一方、不動産を売却した場合や、特定の相続人に残す予定だった重要な財産がなくなった場合には、当初想定していた財産配分のバランスが崩れることがあります。
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