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老老相続で発生しやすいトラブルやリスク

初めに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

「老老相続」とは、一般に高齢者が亡くなり、その財産を相続する配偶者や子どもなどもすでに高齢になっている相続を指す言葉です。

相続人が高齢だからといって、通常の相続とは別の法律が適用されるわけではありません。

しかし、相続人自身の判断能力や健康状態、移動の負担などによって手続きが進みにくくなったり、遺産分割が終わる前に別の相続が発生したりする可能性が高くなります。

相続人の判断能力が低下し、遺産分割を進められないことがある

老老相続で特に注意したいのが、相続人の中に認知症などによって判断能力が低下している人がいるケースです。遺産分割協議は、自分がどのような財産を取得するのか、その内容を理解したうえで意思表示をする法律行為であるため、本人に必要な判断能力がなければ、単に遺産分割協議書へ署名・押印してもらえばよいというものではありません。

ただし、「認知症と診断されたから遺産分割協議には一切参加できない」というわけでもありません。認知症には程度があり、本人が遺産分割の内容やその結果を理解して判断できる状態であれば、本人が協議に参加できる場合もあります。年齢や病名だけではなく、実際の判断能力を確認することが重要です。

一方、本人だけでは財産に関する重要な判断をすることが難しい状態であれば、成年後見制度などの利用を検討しなければならないことがあります。家庭裁判所によって成年後見人等が選任された場合には、その人が本人の利益を守りながら必要な財産管理や法律行為を行います。

相続手続きそのものが大きな負担になり、遺産分割が長期化しやすい

相続では、戸籍の収集、金融機関への問い合わせ、不動産の確認、遺産分割協議書への署名・押印、相続登記など、多くの手続きが必要になります。

相続人自身が高齢の場合には、役所や金融機関へ何度も足を運ぶことが難しかったり、大量の書類を確認すること自体が負担になったりすることがあります。

また、相続人がそれぞれ別の地域に住んでいる場合には、書類を郵送しながら進めなければならず、手続きにさらに時間がかかることもあります。

特に問題になるのが、相続人の中に入院中の人、施設へ入所している人、身体的な理由で外出が難しい人などがいるケースです。本人に判断能力があっても、書類のやり取りや本人確認、印鑑証明書などの取得が難しくなり、遺産分割協議がなかなか完成しないことがあります。

手続きが長引くほど、相続財産の管理や次の相続が発生するリスクも高くなります。そのため、相続が始まった段階で、誰が手続きの中心となるのか、どの財産があるのか、必要な戸籍や書類は何かを整理し、できるだけ早く準備を始めることが重要です。

遺産分割が終わる前に相続人が亡くなり「数次相続」になることがある

老老相続では、最初の相続手続きが終わる前に、相続人の一人が亡くなってしまうことがあります。このように、一つ目の相続について遺産分割が終わらないうちに相続人が亡くなり、その人についてさらに相続が発生する状態を一般に「数次相続」といいます。

さらに、亡くなった相続人の相続人が遺産分割に関係するようになるため、話し合いに参加する人が増える場合があります。その結果、最初は数人だけだった相続関係が時間の経過によって複雑になり、必要となる戸籍や遺産分割協議書の内容も増えていきます。

特に高齢の相続人が複数いる場合には、「まだ急がなくてもよい」と相続手続きを放置しているうちに次の死亡が発生する可能性を考えておく必要があります。

一次相続の直後に二次相続が発生することもある

最初の相続を無事に終えた場合でも、その直後に財産を取得した高齢の相続人が亡くなり、再び相続が発生することがあります。

税務上の説明などでは、最初の相続を「一次相続」、その後に配偶者などが亡くなって発生する相続を「二次相続」と呼ぶことがあります。

もっとも、短期間に相続が続いた場合には、一定の要件を満たせば「相次相続控除」を利用できることがあります。これは、今回の相続開始前10年以内に被相続人自身が相続によって財産を取得し、その際に相続税を負担していた場合に、今回の相続税から一定額を控除する制度です。前回の相続から1年経過するごとに控除対象額が一定割合ずつ減少します。

ただし、前回の相続で配偶者の税額軽減などによって被相続人自身に相続税が課されていなかった場合には、相次相続控除が生じないこともあります。したがって、「短期間に二度相続があれば必ず税金が安くなる」という制度ではありません。

不動産の相続手続きが後回しになり、さらに権利関係が複雑になる

高齢の相続人にとって大きな負担になりやすいのが、不動産の相続手続きです。実家を今後誰も使う予定がない場合などには、「とりあえずそのままにしておこう」と相続登記を後回しにしてしまうことがあります。

しかし、現在は相続登記が義務化されています。遺産分割によって取得者が決まった場合にも、その遺産分割の日から3年以内に分割内容に応じた登記を申請する必要があります。正当な理由なく義務に違反した場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

また、2024年4月1日より前に発生した相続についても義務化の対象です。すでに相続したことを知っていた不動産については、原則として2027年3月31日までが重要な期限となります。

相続財産を活用できないまま管理負担だけが続くことがある

遺産分割が長期間まとまらないと、不動産や預貯金などを円滑に利用できない状態が続くことがあります。

不動産であれば、誰が取得するのか決まらないまま建物が老朽化し、修繕や草木の管理が必要になることがあります。

また、預貯金についても、金融機関で正式な相続手続きを行わなければ、残高があるからといって相続人が自由に全額を引き出せるわけではありません。遺産分割協議がまとまらない場合には一定の仮払い制度などを利用できる場合もありますが、通常の相続手続きを完了した場合と同じように自由に利用できるわけではありません。

特に老老相続では、財産を取得する相続人自身がその財産を利用する期間も短くなる可能性があります。使う予定のない実家を高齢の相続人が取得し、その数年後に再び相続が発生すると、登記や遺産分割を短期間に繰り返すことにもなり得ます。

高齢の相続人同士では家族だけでの話し合いが難しくなることもある

老老相続では、財産そのものよりも、相続人同士の状況の違いがトラブルにつながることがあります。

また、同じ高齢者でも判断能力や生活環境には大きな差があります。本人に意思決定能力がある限り、その本人が相続人として意思を示す必要があります。

反対に、判断能力が十分でない人について家族だけで署名・押印を代行することも適切ではありません。必要であれば成年後見制度など正式な代理制度を検討する必要があります。

相続人が高齢であるほど、「家族だから分かっているはず」と考えるのではなく、各相続人の意思と判断能力を確認しながら、誰が何を取得するのかを書面で明確にしていくことが重要です。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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