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そのため、「自分が亡くなったら財産は当然すべて配偶者のものになる」と考えていると、実際の相続では想定外の親族と遺産分割を行うことになる可能性があります。子供がいない夫婦が遺言書を作成する場合には、現在の相続人を確認したうえで、配偶者にどこまで財産を残したいのか、配偶者が先に亡くなった場合には誰に残したいのかまで考えておくことが重要です。
子供がいない夫婦が遺言書を作成する場合には、公正証書遺言を利用する方法があります。公正証書遺言は、公証人が遺言者本人の意思を確認しながら法律上の方式に従って作成するため、自分だけで自筆証書遺言を作成する場合と比べて、方式上の不備を防ぎやすいというメリットがあります。
また、公正証書遺言の原本は公証制度の中で保存されるため、自宅で保管している遺言書のように、紛失したり、相続人によって破棄・隠匿・改ざんされたりするリスクを抑えることができます。
ただし、公正証書遺言だからといって、どのような場合でも絶対に有効になるわけではありません。遺言作成時の遺言能力が後から争われる可能性などは残るため、「公正証書なら無効になることはない」と断定するのではなく、本人が十分に判断できる段階で作成しておくことが大切です。
夫婦がお互いに財産を残したい場合でも、2人の意思を1通の遺言書にまとめることはできません。
たとえば、1枚の遺言書に夫婦が連名で「夫が先に死亡した場合には妻が全財産を相続し、妻が先に死亡した場合には夫が全財産を相続する」と記載して署名した場合、共同遺言に該当し、遺言として認められない可能性があります。
そのため、夫は夫名義の遺言書、妻は妻名義の遺言書という形で、それぞれ独立した遺言を作成します。
また、遺言は本人が後から撤回・変更できるものです。夫婦で同じ時期に似た内容の遺言を作成した場合でも、一方が将来変更できないように互いを拘束するものではない点にも注意しましょう。
子供がいない夫婦が遺言書を作成するときには、配偶者以外に誰が相続人になるのかを確認することが重要です。
たとえば、夫に子供がおらず、夫の両親がすでに亡くなっていて兄弟姉妹がいる場合、夫が何も遺言を残さず亡くなると、原則として妻と夫の兄弟姉妹が相続人になります。妻に自宅を含む全財産を残したいのであれば、その旨を遺言書に定めておくことで、兄弟姉妹との遺産分割を避けやすくなります。
兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、兄弟姉妹が自分の遺留分を理由として金銭を請求することはできません。
一方、亡くなった人の父母や祖父母などの直系尊属が相続人になる場合には事情が異なります。直系尊属には遺留分が認められているため、配偶者に全財産を相続させる遺言があっても、直系尊属から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
したがって、「子供がいなければ配偶者に全財産を残す遺言を書けばすべて解決する」と考えるのではなく、現在の家族構成と遺留分まで確認して遺言内容を決める必要があります。
遺言書を作成するときには、遺言内容を実現するための遺言執行者を指定しておくことも検討できます。特に、残された配偶者が高齢になることが予想される場合や、不動産、預貯金、有価証券など複数の財産がある場合には、遺言執行者を指定しておくことで相続開始後の手続きを進めやすくなることがあります。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために相続財産を管理し、必要な手続きを行います。また、任務を開始した場合には、遅滞なく遺言の内容を相続人へ通知し、原則として相続財産の目録を作成して相続人へ交付する必要があります。
そのため、専門家を遺言執行者にしたからといって、夫の兄弟姉妹など他の相続人に遺言の存在を一切知らせずに手続きを終えられるわけではありません。
遺言執行者には、未成年者と破産者を除き、相続人や第三者を指定することができます。行政書士、司法書士、弁護士などの専門家を指定することも可能ですが、必要となる手続きによって適した専門家は異なります。
夫婦は年齢が近い場合も多く、必ず想定した順番で亡くなるとは限りません。そのため、「全財産を妻に相続させる」とだけ定めるのではなく、妻が夫より先に亡くなった場合や、夫婦が同時に亡くなった場合についても考えておくことが重要です。
たとえば、夫が「全財産を妻に相続させる」と遺言していても、妻が夫より先に亡くなっていた場合には、妻に相続させるという内容をそのまま実現することはできません。妻の兄弟姉妹などが当然にその遺言上の地位を引き継ぐわけでもありません。
そこで、「全財産を妻に相続させる。ただし、妻が遺言者より先に、または遺言者と同時に死亡した場合には、友人Aに遺贈する」といった予備的な内容を定めておく方法があります。このように、最初に財産を取得する予定だった人が先に死亡した場合の取得者まであらかじめ定めておくものを、一般に予備的な遺言と呼びます。
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