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ただし、自宅などで遺言書を保管する場合には、誰でも容易に内容を確認できる状態にしておくことで、改ざんや破棄、紛失などのリスクが高まることがあります。封筒に入れて保管することには一定の意味がありますが、より重要なのは、遺言書そのものを安全な場所で保管し、死亡後に確実に発見してもらえる状態を整えておくことです。
封筒に入れず、自宅の机や書類棚などにそのまま遺言書を置いていると、家族などが偶然発見し、内容を読む可能性があります。遺言内容によっては、特定の相続人に多く財産を残していることを生前に知られ、家族関係に影響が生じることも考えられます。
また、遺言書へ第三者が文字を書き加えたり、一部を書き換えたりするリスクも否定できません。自筆証書遺言には訂正方法について法律上のルールがあるため、第三者が勝手に変更した部分がそのまま有効になるわけではありませんが、どこまでが本人の記載だったのかをめぐって相続人間で争いになる可能性があります。
封筒に入れ、さらに封印しておけば、少なくとも一度開封されたかどうかを確認しやすくなります。ただし、封印されているからといって遺言書の真正や有効性が保証されるわけではなく、封筒ごと破棄されたり持ち去られたりするリスクまで防げるものではありません。
遺言内容を確認した相続人が、自分に不利な内容であることを理由として遺言書を破棄したり、ほかの相続人に見つからないよう隠したりする可能性もあります。もちろん、このような行為が法律上許されるわけではありません。
民法891条では、相続に関する被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄または隠匿した者について、相続人となることができない「相続欠格」の規定を設けています。したがって、相続人が意図的に遺言書を書き換えたり、破棄・隠匿した場合には、具体的な事情によって相続欠格が問題となる可能性があります。
もっとも、遺言書を処分した事実があれば、どのような場合でも自動的に相続欠格になるという単純なものではありません。実際に相続欠格に該当するかどうかは、その行為の内容や目的などを踏まえて個別に判断されます。
封筒に入れず、ほかの書類と一緒に遺言書を保管していると、本人が亡くなった後の遺品整理で不要な紙と間違えて処分される可能性があります。特に、メモ用紙や一般的なコピー用紙に作成し、重要書類と区別しにくい状態で保管している場合には注意が必要です。
自宅で保管するのであれば、遺言書を丈夫な封筒や専用のファイルなどに入れ、表面に「遺言書」と記載しておく方法があります。また、信頼できる家族などに、遺言書を作成していることや保管場所だけを伝えておくことも考えられます。
ただし、本人が保管場所を秘密にしたまま亡くなった場合には、封筒に入れていても誰にも発見されない可能性があります。そのため、「封をしているから安心」と考えるのではなく、死亡後に遺言書の存在をどのように伝えるかまで考えておくことが重要です。
自宅から封筒にも入っていない自筆証書遺言が突然見つかった場合、内容に不満を持つ相続人から「本当に本人が書いたものなのか」「死後に誰かが作ったのではないか」と疑われることがあります。
もっとも、封筒に入っているかどうかや、封印があるかどうかだけで遺言書の真正が決まるわけではありません。封印があっても、本人の筆跡ではない、作成当時に遺言能力がなかったなどの理由で有効性が争われることはあります。
そのため、相続トラブルを防止するうえでは、単に封をするだけではなく、遺言書の日付や財産の表示を明確にし、法律上の方式を守って作成することが重要です。争いが予想される場合には、公正証書遺言を利用する方法も考えられます。
自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、封をしているかどうかにかかわらず、遺言者が亡くなった後は原則として家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
検認は、遺言書の形状や日付、署名、加除訂正など、検認時点における状態を明確にし、その後の偽造や変造を防止するための手続きです。ただし、検認によって「この遺言書は真正であり、法律上有効である」と保証されるわけではありません。
また、封印のある遺言書については、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いのもとで開封する必要があります。そのため、自宅保管の自筆証書遺言を封印することは一定の安全対策になる一方、死亡後には家庭裁判所で開封するという手続きも必要になる点を理解しておく必要があります。
自筆証書遺言の紛失、破棄、改ざん、未発見などを防ぎたい場合には、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用する方法があります。
この制度を利用すると、遺言書の原本と画像データが法務局で長期間保管されるため、自宅で保管する場合と比べて第三者による破棄や改ざん、紛失などのリスクを大幅に抑えることができます。また、保管申請時には、自筆証書遺言として必要な方式について法務局による外形的な確認を受けられます。
さらに、法務局に保管された自筆証書遺言については、遺言者の死亡後に家庭裁判所の検認を受ける必要がありません。一定の条件のもとで、遺言者が指定した人などへ遺言書が保管されていることを知らせる通知制度も用意されています。
ただし、法務局が確認するのは主に形式面であり、遺言内容の法的な妥当性や遺言能力まで審査してもらえるわけではありません。「法務局に預けたから遺言書の有効性が完全に保証される」という意味ではない点には注意が必要です。
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