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相続放棄に影響する可能性がある遺品整理の例

初めに

ご家族間での話し合い、情報共有は重要

相続放棄を検討している場合、被相続人が残した家、預貯金、家財などを自己判断で売却したり、処分したりすることは避けたほうが安全です。

相続財産に対する行為の内容によっては、法律上「単純承認をした」とみなされ、その後の相続放棄に影響する可能性があるためです。

そのため、厳密には「相続放棄が受理された後に財産へ触れたら、放棄が自動的に無効になる」という仕組みではありません。

相続放棄の申述前に行った財産処分なのか、放棄後の隠匿・私的消費なのか、あるいは財産を守るために必要な保存行為なのかによって判断が変わります。

不動産を売却・解体したり、大規模に改修したりする

被相続人が所有していた土地や建物を売却する行為は、典型的な相続財産の処分です。

相続放棄をする前に自己判断で売却し、その代金を受け取った場合には、法定単純承認と判断される可能性が非常に高くなります。

建物を取り壊す場合も同様です。老朽化しているからといって相続人の判断だけで解体すると、財産そのものを消滅させることになるため、保存行為の範囲を超える可能性があります。間取りを変更する大規模リフォームや、建物の価値・性質を大きく変える工事についても慎重な判断が必要です。

一方、台風で壊れた窓を一時的にふさぐ、雨漏りによって建物がさらに傷むのを防ぐ、倒壊のおそれがある部分について最低限の安全措置を行うなど、財産の現状を維持し、損傷の拡大を防ぐために必要な行為であれば、保存行為と評価される可能性があります。

ただし、「修理ならすべて保存行為」というわけではありません。工事の規模、緊急性、費用、財産価値への影響などによって判断が変わるため、相続放棄を予定している場合には必要最小限にとどめることが重要です。

被相続人が借りていた賃貸住宅を自己判断で解約する

被相続人が賃貸マンションやアパートに住んでいた場合、亡くなった後も家賃が発生するため、遺族としてはすぐに解約したいと考えることがあります。

しかし、被相続人が持っていた賃借人としての地位も財産上の権利を含むため、相続放棄を検討している段階で相続人が自ら契約を解除すると、相続財産の処分に当たるのではないかという問題が生じます。

特に、敷金返還請求権が存在する場合や、室内の家財を処分して明渡しまで行う場合には、単なる契約停止以上に相続財産への関与が大きくなります。

そのため、「家賃が増えるから、とりあえず解約して部屋を空にしてしまおう」と判断するのは避けたほうがよいでしょう。相続放棄を予定していることを貸主や管理会社へ伝え、どのような処理が必要なのかを確認したうえで対応することが重要です。

家具・家電など経済的価値のある家財を売却・廃棄する

被相続人が残したテレビ、冷蔵庫、家具、パソコン、貴金属、ブランド品などについて、まだ経済的価値があるにもかかわらず売却したり、第三者へ譲ったりする行為も、相続財産の処分と評価される可能性があります。

一方、明らかな生ごみや使い切った日用品、交換価値がほとんどない廃棄物などを処分する行為については、経済的価値のある相続財産を処分する場合とは事情が異なります。

しかし、「古いから価値がない」と遺族だけで判断すると、実際には中古市場で価値がある品物だったということもあります。

相続放棄を予定している場合には、遺品整理業者へ一括して「全部捨ててください」と依頼するのではなく、価値がある可能性のある物を分けて保管し、必要最小限の整理にとどめるほうが安全です。

形見として遺品を持ち帰る

写真や手紙など、経済的価値がほとんどなく、純粋に思い出の品として扱われる物については、一般的な形見分けの範囲であれば直ちに法定単純承認となるとは限りません。

一方、腕時計、宝石、ブランド品、高価な衣類、美術品など、財産的価値のある物を「形見だから」という理由で持ち帰ることには注意が必要です。

したがって、「遺品を一つでも持ち帰れば相続放棄できない」というわけではありませんが、財産的価値のある物を大量に持ち帰ったり、自分の物として使用したり、他人から分からない場所へ移したりする行為は避けるべきです。

被相続人の預貯金から借金を返済する

被相続人に消費者金融、カードローン、未払金などの債務が残っている場合、「借金なのだから本人のお金から払ってしまおう」と考えることがあります。

しかし、被相続人の預金や現金を使って特定の債権者へ返済する行為は、相続財産を処分することになるため、相続放棄を検討している段階では注意が必要です。

一方、相続人が自分自身の財産から第三者として被相続人の債務を支払った場合には、被相続人の相続財産そのものを処分しているわけではないため、それだけで民法921条1号の「相続財産の処分」に該当するとは通常考えにくくなります。

入院費・介護費・公共料金などを遺産から支払う

被相続人の死亡後には、入院費、介護施設の利用料、電気・ガス・水道料金、家賃、クレジットカード利用代金など、さまざまな請求書が届くことがあります。

こうした支払いについても、被相続人名義の預金を解約したり、被相続人の現金を使ったりして支払うと、相続財産の処分と評価される可能性があります。

そのため、相続放棄を予定している場合には、「故人の請求だから故人のお金から払えばよい」と単純に考えないほうが安全です。

どうしても早急な対応が必要な場合には、自分自身の財産から支払う方法も考えられますが、そもそも自分に支払義務があるのかを確認する必要があります。自分の財産から支払ったからといって、その費用を後から当然に相続財産から取り戻せるわけでもありません。

被相続人名義の預金を引き出して使用する

被相続人名義の口座から預金を引き出し、相続人自身の生活費、買い物、旅行費などとして使用すれば、相続財産を自分のために処分・消費したものと評価される可能性が非常に高くなります。

また、相続放棄をする前に預金口座を解約して金銭を受け取ったり、自分名義の口座へ送金したりする行為についても慎重な対応が必要です。

一方、「預金を引き出した」という外形だけで、すべてのケースが同じ結果になるとは限りません。たとえば財産を散逸させないために分別管理しただけなのか、その後自分のために消費したのか、葬儀費用として社会的に相当な範囲で使用したのかなど、具体的な事情によって評価が変わる可能性があります。

そのため、相続放棄を予定している場合には、原則として被相続人名義の預金には手を付けず、口座情報や残高を確認する程度にとどめるのが安全です。

携帯電話は「回線の解約」と「端末の処分」を分けて考える

被相続人の携帯電話については、毎月の利用料金が発生するため、早く解約したいと考えることがあります。

携帯電話の通信回線を停止・解約する行為だけについては、新たな料金の発生を防ぐという性質があり、それだけで直ちに相続財産の処分に当たるとは限りません。

一方、相続放棄後は法律上初めから相続人ではなかったものとして扱われるため、そもそも契約を解除する権限があるのかという別の問題もあります。通信会社によって死亡時や相続放棄時の手続きも異なるため、自己判断で名義変更などを行うのではなく、死亡と相続放棄の予定を伝えて対応方法を確認するとよいでしょう。

特に注意したいのがスマートフォンなどの端末本体です。端末はそれ自体が財産であるため、中古ショップへ売却したり、下取りに出したり、代金を自分で受け取ったりすると、相続財産の処分が問題になります。

また、端末代金や未払い通信料を被相続人の預金から支払う行為についても同様に注意が必要です。回線を止めることと、端末を処分したり債務を相続財産から支払ったりすることは分けて考える必要があります。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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