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遺言書で遺贈をする際の注意点

初めに

遺贈は、遺言書によって自分の財産を希望する人や団体に引き継いでもらうための方法です。法定相続人以外にも財産を残せるというメリットがありますが、遺言書に記載すれば必ず希望どおりに財産が渡るとは限りません。

遺贈を受ける人の意思や財産の内容、ほかの相続人との関係によっては、遺贈が実現しなかったり、相続をめぐる争いが発生したりすることがあります。

遺贈を指定しても受け取りを拒否される場合がある

遺言書で財産を渡す相手を指定していても、その人が必ず財産を受け取るとは限りません。遺贈を受ける人を「受遺者」といいますが、受遺者には遺贈を放棄する権利が認められています。

遺贈は財産を無償で取得できる制度ですが、財産の種類や相続関係によっては、受遺者にとって負担となる場合もあります。特に、次のような事情がある場合には、遺贈を辞退される可能性が考えられます。

ほかの相続人との関係が悪化することを避けたい場合

相続人以外の人に多額の財産を遺贈すると、遺産を受け取ることになった人と相続人との間で対立が生じるおそれがあります。例えば、長年お世話になった知人に財産の大部分を残したいと考えていても、相続人がその内容に納得できず、受遺者に不満を抱く場合があります。

受遺者自身が相続人との争いに巻き込まれることを望まず、財産の取得を辞退する可能性もあります。こうした事態を防ぐためには、遺贈する相手との関係や相続人への影響を考慮し、必要に応じて遺言書とは別に自分の考えを伝えておくことが望ましいでしょう。

財産の維持や管理に費用がかかる場合

遺言者にとって価値のある財産であっても、受遺者が同じように必要としているとは限りません。特に、不動産を遺贈する場合には、取得後の管理費用や固定資産税、修繕費などが負担となる可能性があります。

例えば、遠方にある山林や農地、老朽化した空き家などは、管理に手間がかかるだけでなく、売却や活用が難しい場合があります。また、不動産の状況によっては、建物の解体費用や土地の整備費用などが必要になることもあります。

このような財産を一方的に遺贈すると、受遺者が取得後の負担を考えて放棄を選択することも考えられます。そのため、遺贈を検討する際は、財産の価値だけでなく、受け取る側にどのような負担が生じるかについても確認しておくことが重要です。

包括遺贈によって債務も引き継ぐことになる場合

遺贈には、特定の財産を指定する「特定遺贈」と、遺産の全部または一定の割合を引き継がせる「包括遺贈」があります。

包括遺贈では、受遺者は相続人と同様の権利義務を有するため、預貯金や不動産などの財産だけでなく、借入金などの債務も指定された割合に応じて承継することになります。したがって、遺産に多額の借金が含まれている場合、受遺者が債務の負担を避けるために遺贈を放棄する可能性があります。

また、包括遺贈と特定遺贈では、放棄の方法にも違いがあります。特定遺贈は原則として遺言者の死亡後に放棄できますが、包括遺贈を放棄する場合には、原則として自己に包括遺贈があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所で放棄の申述を行う必要があります。

そのため、包括遺贈を利用する際には、受遺者が承継する財産と債務の内容を十分に把握し、相手に過度な負担をかけないよう慎重に検討することが大切です。

遺言者より先に受遺者が亡くなると遺贈が効力を生じない

遺言書を作成した時点では受遺者が存命であっても、その後、遺言者より先に亡くなってしまうことがあります。この場合、原則として、その受遺者に対する遺贈は効力を生じません。

例えば、親しい友人に預貯金を遺贈する内容の遺言書を作成していても、その友人が遺言者より先に死亡した場合、指定した預貯金が当然に友人の配偶者や子どもへ引き継がれるわけではありません。

遺贈が効力を生じなくなった財産は、遺言書に別段の定めがない限り、原則として遺言者の相続人に帰属することになります。そのため、特定の人に確実に財産を引き継いでもらいたい場合には、受遺者が先に亡くなった場合の対応についても検討しておくことが重要です。

なお、受遺者が遺言者の死亡後に亡くなった場合は、状況によって取扱いが異なるため、死亡の前後関係も重要な確認事項となります。

遺留分を侵害すると相続人との争いにつながる可能性がある

遺言書を作成することで、原則として自分の希望に沿った財産の配分を指定できます。しかし、相続人の中には、法律によって最低限の遺産取得利益が保障されている人もいるため、遺贈の内容によっては相続トラブルが発生する可能性があります。

この法律上保障される一定の利益を「遺留分」といいます。遺留分は、配偶者や子どもなどの一定の相続人に認められるもので、兄弟姉妹には認められていません。

例えば、配偶者と子どもがいる人が、所有する財産のすべてを第三者に遺贈するという遺言書を作成した場合、配偶者や子どもの遺留分を侵害する可能性があります。

遺留分が侵害された相続人は、受遺者などに対して「遺留分侵害額請求」を行い、侵害された金額に相当する金銭の支払いを求めることができます。ただし、遺留分を侵害する遺贈が当然に無効になるわけではなく、権利者が請求を行うことによって金銭の支払義務が生じる仕組みとなっています。

こうした争いを避けるためには、遺贈する財産の金額や割合を決める際に、相続人の遺留分についても確認しておくことが大切です。また、特定の人に多くの財産を残したい事情がある場合には、遺言書とは別に付言事項を設け、財産の配分を決めた理由や家族への思いを伝えることも、相続人の理解を得るための一つの方法です。ただし、付言事項には原則として法的拘束力がないため、それだけで遺留分侵害額請求を防げるわけではありません。

遺贈を確実に実現するためには事前の準備が重要

遺贈は、相続人以外の人にも財産を残せる有効な手段ですが、遺言者の意思だけで必ず実現するものではありません。受遺者が財産を受け取る意思を持っているか、管理や債務の負担が生じないか、ほかの相続人の権利を侵害していないかなど、さまざまな事情を考慮する必要があります。

また、受遺者が先に亡くなった場合に備えて予備的な承継先を指定したり、遺言執行者を定めたりすることで、遺言内容の実現に向けた準備を整えることができます。

大切な財産を希望する相手に円滑に引き継いでもらうためにも、遺贈に伴う法律上の注意点を理解し、将来の状況の変化も見据えた遺言書を作成することが重要です。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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