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内縁の配偶者に遺産を残す際の注意点

初めに

内縁関係にあるパートナーへ財産を残したい場合、遺言書を作成して遺贈する方法が有効です。法律上の婚姻関係がなくても、遺言書によって預貯金や不動産、株式などの財産を取得する人を指定できるため、亡くなった後の生活を支えるための準備につながります。

しかし、内縁の配偶者は法律上の配偶者とは異なり、法定相続人にはなりません。そのため、遺言書を作成する際には、ほかの相続人の権利や相続税の負担などを十分に考慮する必要があります。また、内縁の配偶者との間に子どもがいる場合には、法律上の親子関係についても確認しておくことが重要です。

ほかの相続人の遺留分を考慮して遺言書を作成する

内縁の配偶者に財産を残す際には、法律上の相続人に認められている「遺留分」に注意する必要があります。

遺留分とは、一定の法定相続人に対して、法律で保障されている最低限の遺産取得利益のことです。遺留分は、被相続人の配偶者や子ども、一定の場合の父母などに認められますが、兄弟姉妹には認められていません。

遺言書では、原則として財産を取得する人やその割合を自由に指定できます。しかし、内縁の配偶者に財産の大部分を遺贈した結果、ほかの相続人の遺留分を侵害すると、相続開始後に金銭の支払いを求められる可能性があります。

遺留分侵害額請求に備えた資金の確保も重要

遺留分侵害額請求は、原則として金銭の支払いを求める制度です。そのため、内縁の配偶者が不動産を遺贈された場合には、支払いのための資金が不足するおそれがあります。

遺言者としては、パートナーが亡くなった後も安心して自宅で暮らせるようにしたつもりでも、遺留分をめぐる問題によって、その住まいを維持することが難しくなる場合もあるのです。

このような事態を防ぐためには、内縁の配偶者に遺贈する財産を検討する段階で、法定相続人の範囲や遺留分の金額を確認しておくことが大切です。また、不動産だけでなく一定の預貯金を残すなど、相続開始後に必要となる資金についても配慮することが望ましいでしょう。

内縁の配偶者には相続税の優遇措置が適用されない場合がある

内縁の配偶者が遺言書によって財産を取得した場合でも、相続税の課税対象となることがあります。

特に注意したいのは、法律上の配偶者と内縁の配偶者とでは、相続税の取扱いが大きく異なる点です。内縁の配偶者は法定相続人ではないため、法律上の配偶者に認められる税額軽減などを利用できず、結果として相続税の負担が大きくなる可能性があります。

 配偶者の税額軽減を利用できない

相続税には、法律上の配偶者を対象とした「配偶者の税額軽減」という制度があります。

この制度では、配偶者が実際に取得した正味の遺産額が1億6,000万円、または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までであれば、原則として配偶者に相続税がかからない仕組みとなっています。

例えば、法律上の妻が夫から1億円の財産を相続した場合、一定の条件を満たせば、配偶者の税額軽減によって相続税がかからないことがあります。

一方、内縁の配偶者は、この制度の対象にはなりません。長年にわたり同居し、生活費を分担していたとしても、婚姻届を提出していなければ、相続税法上の配偶者として税額軽減を受けることはできません。

そのため、内縁の配偶者に多額の財産を遺贈する場合には、相続税がどの程度発生するかを事前に確認しておくことが重要です。

相続税額が2割加算される

相続税には、財産を取得した人と被相続人との関係によって、税額が加算される制度があります。

原則として、被相続人の配偶者および一親等の血族などに該当しない人が相続や遺贈によって財産を取得した場合、その人の相続税額には2割に相当する金額が加算されます。

内縁の配偶者は法律上の配偶者ではなく、一親等の血族にも該当しないため、相続税額の2割加算の対象となります。

例えば、通常の計算による相続税額が300万円となる場合、2割加算によって60万円が加算され、納付税額が360万円となることがあります。

内縁の配偶者に財産を残す場合には、単に取得する財産の評価額だけでなく、こうした税額の加算についても考慮する必要があります。

 小規模宅地等の特例を利用できない

相続財産に自宅の土地が含まれている場合には、「小規模宅地等の特例」が適用できるかどうかも重要です。

小規模宅地等の特例とは、一定の条件を満たす宅地等について、相続税の計算上、その評価額を減額できる制度です。

しかし、この特例は、原則として被相続人の配偶者や一定の親族などを対象としているため、法律上の親族に該当しない内縁の配偶者には適用されません。

土地の評価額が高い場合には、特例を利用できるかどうかによって相続税の負担が大きく変わる可能性があります。そのため、自宅を内縁の配偶者に残すことを検討している場合には、土地の評価額や相続税の納税資金についても事前に確認することが大切です。

内縁の配偶者との間に子どもがいる場合は認知を確認する

内縁の配偶者との間に子どもがいる場合には、財産の承継だけでなく、法律上の親子関係についても確認しておく必要があります。

法律上の婚姻関係がない男女の間に子どもが生まれた場合、母親と子どもの法律上の親子関係は原則として出生によって成立します。一方、父親と子どもの間では、原則として認知によって法律上の父子関係を成立させる必要があります。

そのため、内縁の夫が子どもを認知していない場合、その子どもは原則として父親の法定相続人になることができません。

認知によって子どもにも相続権が認められる

例えば、内縁の夫婦AとBの間に子どもCがいる場合を考えてみましょう。Aが父親、Bが母親であり、AがCを認知していなければ、原則としてAとCの間には法律上の父子関係が成立していません。

その状態でAが亡くなった場合、Cは父親Aの法定相続人として遺産を取得することができない可能性があります。

一方、Aが生前にCを認知していれば、Cは法律上の子どもとして相続権を取得します。また、認知された子どもと法律上の婚姻関係にある夫婦から生まれた子どもとの間で、法定相続分に違いはありません。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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