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個人事業主が亡くなった場合に廃業届を出す前に確認すべきポイント

初めに

個人事業主が亡くなった場合には、税務署への廃業届の提出など、事業の終了に伴うさまざまな手続きが必要になります。

しかし、事業主が死亡したからといって、廃業届を提出するだけですべての手続きが完了するわけではありません。事業用の預貯金や売掛金、借入金などは相続財産や相続債務に関係するため、相続人がその内容を確認し、適切に対応する必要があります。

また、家族が事業を引き継ぐ予定である場合には、従前の契約や許認可を承継できるかどうかについても確認しなければなりません。

そのため、個人事業主が亡くなった場合には、廃業届の提出期限に注意しながら、事業の現状や相続財産の内容を整理することが重要です。

事業の運営状況や契約関係を確認する

個人事業主が亡くなった場合には、まず、死亡時点でどのような事業を行っていたのか、事業がどのような状況にあったのかを確認することが大切です。

例えば、店舗を経営していた場合には、店舗の賃貸借契約や設備のリース契約、仕入先との取引契約などが残っている可能性があります。また、商品やサービスの提供を継続していた場合には、納品前の商品や未完了の業務、顧客から受けている予約なども確認する必要があります。

こうした状況を把握しないまま廃業に関する手続きを進めると、取引先への連絡が遅れたり、契約上の義務について問題が生じたりするおそれがあります。

そのため、まずは契約書や請求書、取引履歴などを確認し、現在進行している業務や今後必要となる対応を整理しておきましょう。

店舗や事業所の賃貸借契約を確認する

店舗や事務所を借りて事業を行っていた場合には、賃貸借契約の内容を確認する必要があります。

事業を終了する場合には、契約の解約手続きや店舗の明渡し、原状回復などが必要になることがあります。また、解約の申出から契約終了までに一定の期間が設けられている場合には、その間の賃料についても確認しなければなりません。

一方、相続人が引き続き同じ店舗で事業を行う場合には、賃貸借契約をどのように取り扱うのか、貸主との確認や調整が必要になることがあります。

ただし、個人事業主が亡くなったことだけを理由に、賃貸借契約が当然に終了するとは限りません。契約上の地位が相続される場合もあるため、契約内容や法律上の取扱いを確認することが重要です。

特に、店舗の明渡しや契約解除を急ぐと、事業用財産の処分や相続人の権利関係に影響することがあります。そのため、相続人間で事業を継続するかどうかを確認したうえで、必要な対応を検討することが望ましいでしょう。

従業員がいる場合は雇用関係も確認する

亡くなった個人事業主が従業員を雇用していた場合には、給与や社会保険、雇用保険などに関する手続きも確認する必要があります。

例えば、死亡時点で未払いとなっている給与や残業代がある場合には、その金額や支払時期を把握しなければなりません。

また、事業を終了する場合と、相続人が事業を継続する場合では、従業員の雇用関係や必要な手続きが異なる可能性があります。

雇用契約は、個人事業主の死亡によって必ずしも当然に終了するわけではありません。そのため、従業員がいる場合には、契約関係を確認するとともに、必要に応じて社会保険労務士などの専門家に相談することも考えられます。

事業用口座の残高や入出金予定を把握する

個人事業主が亡くなった場合には、事業で利用していた銀行口座についても確認が必要です。

個人事業主は、事業用と私生活用の口座を分けて管理している場合があります。また、屋号を付けた銀行口座を利用していることもあるでしょう。

しかし、屋号付きの口座であっても、通常は事業主本人を名義人とする口座であるため、死亡後は相続手続きの対象となります。

金融機関が口座名義人の死亡を把握すると、一般的に口座の入出金などが制限されます。そのため、事業用口座から予定していた支払いができなくなる場合があります。

売掛金・未払金・借入金を整理する

個人事業主の相続では、預貯金や店舗設備などの財産だけでなく、事業に伴う債権や債務についても確認する必要があります。

例えば、亡くなった時点で取引先からまだ受け取っていない売上代金がある場合には、その売掛金が相続の対象となることがあります。

一方、仕入代金や外注費、借入金などの支払い義務が残っている場合には、それらの債務も相続に関係することがあります。

そのため、個人事業主が亡くなった場合には、事業に関するプラスの財産だけでなく、マイナスの財産についても整理しておくことが重要です。

売掛金や未収入金を確認する

売掛金とは、商品やサービスを提供したものの、まだ代金を受け取っていない債権のことです。

例えば、個人事業主が取引先に商品を納品していたものの、その代金が翌月払いとなっていた場合、死亡時点では売掛金が残っていることになります。

また、業務が完了していても、まだ請求書を発行していない場合や、請求済みであるものの入金が確認できていない場合もあります。

このような売掛金や未収入金は、原則として相続財産に含まれるため、誰が権利を承継するのか、取引先からどのように回収するのかを確認する必要があります。

そのため、請求書や契約書、売掛帳、入金履歴などを確認し、未回収となっている代金を一覧にまとめておくとよいでしょう。

未払金や借入金などの債務を確認する

事業を行っていた個人事業主には、死亡時点で未払いの経費や借入金などが残っている場合があります。

例えば、仕入先への買掛金、外注先への未払金、店舗の賃料、設備のリース料、金融機関からの借入金などが挙げられます。

これらの債務は、原則として相続人が承継する可能性があります。ただし、債務の性質や契約内容によって取扱いが異なる場合もあるため、個別に確認することが重要です。

また、事業用の借入金に保証人が付いている場合には、保証契約の内容についても確認する必要があります。

特に、事業の財産よりも債務の金額が大きい場合には、相続人が相続放棄や限定承認を検討することも考えられます。

相続放棄は、原則として、自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。

そのため、相続放棄を検討する場合には、廃業に関する手続きを進める前に、事業用財産や借入金などをできる限り把握し、相続財産の処分に当たる行為を慎重に判断することが大切です。

営業に必要な許認可を引き継げるか確認する

亡くなった個人事業主の事業を家族が引き継ぐ場合には、営業に必要な許認可についても確認する必要があります。

飲食店営業や建設業、古物営業、旅館業などでは、営業を行うために行政機関の許可や届出などが必要になる場合があります。

しかし、亡くなった方が取得していた許認可を、家族がそのまま利用できるとは限りません。

許認可によっては、相続による承継が認められていますが、所定の申請や届出が必要になります。また、相続による承継が認められず、後継者が新たに許可を取得しなければならない場合もあります。

そのため、相続人が事業を継続する予定である場合には、早めに許認可の種類と承継方法を確認することが重要です。

許認可の種類によって承継方法が異なる

例えば、飲食店営業では、一定の要件を満たす相続人が営業者の地位を承継する制度が設けられており、管轄の保健所への届出が必要になります。

一方、建設業では、個人事業主の死亡後、原則として30日以内に相続の認可申請を行う制度があります。

また、旅館業でも相続による営業者の地位の承継が認められる場合がありますが、所定の期間内に承継承認の申請を行う必要があります。

このように、許認可によって手続きの内容や期限が異なるため、事業主が死亡した場合には、管轄の行政機関へ早めに相談することが大切です。

許認可を確認せずに営業を続けないよう注意する

個人事業主が亡くなった後、家族が同じ店舗や設備を利用して事業を継続することがあります。

しかし、店舗や設備を相続したことだけで、営業に必要な許認可まで当然に引き継げるとは限りません。

例えば、事業を承継する人に必要な資格や経験が求められる場合には、後継者がその要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。

また、許認可の承継手続きに期限が設けられている場合には、その期限を過ぎることで、従前の許可を引き継ぐことが難しくなる可能性があります。

そのため、事業を継続する場合には、後継者を決めるだけでなく、必要な許認可を適法に承継できるかどうかを確認することが重要です。

一方、事業を終了する場合でも、許認可に関する廃止届や許可証の返納などが必要になる場合があります。

税務署への廃業届を提出しただけで、すべての行政機関への手続きが完了するわけではないため、許認可ごとに必要な対応を整理しておきましょう。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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