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遺言執行者への就任は拒否できる

初めに

遺言執行者は、遺言書に記載された内容を実現するために、預貯金の解約や不動産の名義変更など、さまざまな手続きを進める重要な役割を担います。しかし、遺言執行者として指定された人が、必ずその役割を引き受けなければならないわけではありません。

遺言執行者には法律上の権限が与えられる一方、相続人への通知や相続財産の管理など、一定の義務も生じます。そのため、専門的な知識がないことや、仕事や家庭の事情などを理由に、就任をためらう方もいるでしょう。

また、一度就任したものの、病気や生活環境の変化によって業務を続けることが難しくなる場合も考えられます。このような場合には、就任前か就任後かによって対応方法が異なります。

遺言執行者に指定されても就任を断ることができる

遺言書で遺言執行者として指定されていたとしても、その人が必ず就任しなければならないわけではありません。遺言執行者になるかどうかは、指定された本人の意思によって決めることができます。

また、遺言執行者には、相続財産の調査や金融機関での手続きなど、一定の事務処理が求められます。そのため、相続に関する知識がなく、適切に業務を進められるか不安がある場合にも、無理に就任する必要はありません。

就任を断る場合は関係者へ意思を伝えておく

遺言執行者に指定された人が就任を希望しない場合には、相続人などの関係者に対して、その意思を明確に伝えておくことが重要です。

民法第1008条では、相続人その他の利害関係人が、遺言執行者に指定された人に対し、相当の期間を定めて就任を承諾するかどうか回答するよう催告できると定められています。そして、その期間内に回答しなかった場合には、就任を承諾しなかったものとみなされます。

このように、遺言執行者として指定されただけで当然に就任が成立するわけではなく、本人の承諾が必要となります。

ただし、就任を拒否した場合に、指定された人が必ず相続人へ通知しなければならないという一般的な法的義務があるわけではありません。それでも、関係者が次の手続きを進めやすくするためには、できるだけ早く辞退の意思を伝えることが望ましいでしょう。

なお、遺言執行者に指定された人が就任を断り、ほかに遺言執行者がいない場合には、必要に応じて利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます。

一度就任した遺言執行者が辞任するには正当な事由が必要

遺言執行者への就任を承諾した後は、就任前のように自由にその役割を辞退できるわけではありません。

民法第1007条では、遺言執行者が就任を承諾した場合、直ちに任務を行わなければならないと定められています。そのため、就任後は遺言の内容を実現するために、必要な手続きを適切に進める義務を負います。

しかし、就任後に健康状態が悪化したり、生活環境が大きく変化したりすることで、業務を続けることが困難になる場合もあります。

このような事情がある場合には、一定の条件のもとで遺言執行者を辞任することが認められています。

遺言執行者の辞任には家庭裁判所の許可が必要

民法第1019条第2項では、遺言執行者は正当な事由がある場合、家庭裁判所の許可を得て辞任できると定められています。

正当な事由に該当する可能性がある事情としては、次のようなものが考えられます。

長期間の病気や健康上の問題が生じた場合

遺言執行者が重い病気になり、入院や療養のために業務を続けられなくなった場合には、辞任が認められる可能性があります。特に、金融機関や法務局での手続き、相続人との連絡などを行うことが難しい状態であれば、業務の継続が困難な事情として考慮されることがあります。

転勤や長期の海外赴任などで業務を行うことが難しい場合

就任後に遠方への転勤や長期の海外赴任が決まり、相続財産の管理や必要な手続きを行うことが著しく困難になった場合も、辞任を検討する理由となります。ただし、遠方に住んでいるという事情だけで、必ず辞任が認められるわけではありません。

仕事や家庭の事情によって十分な時間を確保できない場合

業務が著しく多忙になったり、家族の介護などによって長期間にわたり遺言執行者としての職務を遂行できなくなったりした場合にも、辞任が認められる可能性があります。ただし、単に仕事が忙しいという理由だけでは、正当な事由として認められないこともあります。

このように、正当な事由に該当するかどうかは個別の事情によって異なり、最終的には家庭裁判所が判断します。

そのため、一度就任を承諾した遺言執行者が、相続人に辞任の意思を伝えただけで直ちに職務から離れられるわけではありません。業務の継続が難しくなった場合には、家庭裁判所への辞任許可の申立てを検討する必要があります。

また、辞任によって遺言執行者がいなくなった場合には、必要に応じて新たな遺言執行者を選任することになります。辞任までの間に管理していた財産や書類についても、適切な引継ぎが必要です。

遺言執行者の業務を第三者に任せることもできる

遺言執行者に就任したものの、専門的な知識が不足している場合や、手続きの負担が大きい場合には、第三者に業務を任せる方法もあります。

遺言執行者は、預貯金の解約や不動産の名義変更に関する手続き、相続財産の管理など、さまざまな業務を行うことがあります。遺産の種類が多い場合や、相続人が複数いる場合には、これらの業務を一人で進めることが難しいことも考えられます。

このような場合に利用できるのが、民法第1016条に定められている「遺言執行者の復任権」です。

復任権によって第三者に任務を行わせることができる

民法第1016条では、遺言執行者は、原則として自己の責任で第三者にその任務を行わせることができると定められています。ただし、遺言者が遺言書で別段の意思を示している場合には、その意思に従う必要があります。

このような場合には、必要に応じて専門家に相談し、法律上認められる範囲で手続きの一部または任務を第三者に行わせることが考えられます。

復任権を適切に行使する場合、原則として相続人や受遺者全員の同意を得ることまでは求められていません。ただし、遺言書に第三者への委任を制限する内容が記載されている場合には、その定めを確認する必要があります。

また、任務の内容によっては、専門家の資格や法律上の業務範囲に制限があるため、依頼する業務に応じた適切な専門家を選ぶことも大切です。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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