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財産目録なしの遺言書のリスク

初めに

相続が発生すると、亡くなった方(被相続人)が所有していた預貯金や不動産、有価証券などの財産は、原則として相続人に引き継がれます。しかし、亡くなった方に関係する財産や権利のすべてが、遺産分割の対象になるわけではありません。

遺産の範囲を正しく把握していないと、本来は分割する必要のない財産を遺産分割協議に含めてしまったり、相続人同士で財産の取得をめぐる争いが生じたりするおそれがあります。

受取人が指定されている生命保険金

被相続人が生命保険に加入していた場合、死亡によって支払われる保険金は、原則として遺産分割の対象にはなりません。これは、死亡保険金が被相続人から相続によって引き継がれる財産ではなく、保険契約に基づいて受取人が取得する財産だからです。

ただし、受取人が指定されていない場合や、指定された受取人が被相続人より先に亡くなっている場合には注意が必要です。

受取人の指定がない場合は、保険約款などの契約内容によって、保険金を請求できる人が決まることがあります。また、指定された受取人が保険事故の発生前に死亡していた場合には、保険法第46条により、原則としてその受取人の相続人全員が新たな保険金受取人となります。

なお、死亡保険金が民法上の相続財産に含まれない場合でも、被相続人が保険料を負担していた保険金については、相続税法上の「みなし相続財産」として課税対象になることがあります。したがって、遺産分割の対象になるかどうかと、相続税が課されるかどうかは区別して考える必要があります。

遺族に支払われる死亡退職金

被相続人が会社などに勤務していた場合、死亡に伴って勤務先から死亡退職金が支払われることがあります。この死亡退職金についても、必ずしも遺産分割の対象になるわけではありません。

死亡退職金は、亡くなった従業員の勤務に対する報酬としての性質だけでなく、残された家族の生活を保障する目的を持つ場合があります。そのため、勤務先の就業規則や退職金規程などで受給権者が具体的に定められている場合、その人が固有の権利として死亡退職金を取得し、遺産分割の対象にならないことがあります。

一方、受取人に関する規定がない場合や、退職金の支給条件が明確でない場合には、その金銭が被相続人の相続財産に含まれるかどうかを個別に判断する必要があります。死亡退職金という名称だけで、遺産に含まれないと決めつけることはできません。

また、死亡退職金についても、一定の条件のもとで相続税の課税対象となることがあります。相続開始後に死亡退職金の支給が予定されている場合は、勤務先に退職金規程や支給条件、受取人の範囲などを確認しておくことが大切です。

相続開始後に遺産から生じた収益

被相続人が賃貸マンションやアパートなどの収益不動産を所有していた場合、亡くなった後も賃料収入が発生することがあります。このような収益については、不動産そのものとは区別して考える必要があります。

ただし、相続人全員で合意した場合には、賃料収入についてもまとめて精算することが考えられます。また、相続開始前に発生していた未収賃料については、死亡後に発生した賃料とは取扱いが異なるため、発生時期を確認することが重要です。

賃貸不動産が遺産に含まれる場合には、物件の所有権だけでなく、賃料収入や管理費用の負担についても相続人間で整理しておくことで、後のトラブルを防ぎやすくなります。

お墓や仏壇などの祭祀財産

お墓や仏壇、位牌など、祖先を供養するために使用する財産は「祭祀財産」と呼ばれ、通常の相続財産とは区別して取り扱われます。

祭祀財産には、家系図や過去帳などの「系譜」、仏壇や位牌などの「祭具」、墓石や墓地の使用権などの「墳墓」に関するものがあります。これらは一般的な預貯金や不動産とは性質が異なるため、相続人が法定相続分に従って分け合うものではありません。

お墓の管理や供養の方法をめぐって家族間で意見が分かれることもあるため、誰に引き継いでもらいたいのかを生前に明確にしておくことが大切です。

葬儀費用や香典

葬儀費用は原則として相続財産に含まれない

葬儀費用は、被相続人が亡くなった後に葬儀を行うために生じる支出です。そのため、被相続人が生前から負っていた債務とは異なり、当然に相続人全員が法定相続分に応じて負担するものではありません。

例えば、葬儀を主催した喪主が葬儀社と契約した場合、原則として契約内容に従って費用を支払うことになります。ただし、葬儀費用を誰が負担するかについて相続人間で合意している場合には、その合意に従って精算することも考えられます。

また、葬儀費用は民法上の遺産分割の対象とはなりませんが、一定の費用については相続税の計算上、遺産総額から控除できる場合があります。遺産分割と相続税では取扱いが異なるため、注意が必要です。

香典は原則として喪主などに帰属する

香典は、故人を悼む気持ちを表すとともに、遺族の葬儀費用などの負担を軽減するために渡される金銭です。一般的には喪主に対する贈与として扱われるため、被相続人の遺産には含まれません。

例えば、葬儀で受け取った香典が葬儀費用を上回った場合でも、残った金額を当然に相続人全員で分配しなければならないわけではありません。

ただし、香典の受領者や管理方法、残金の使い道について家族間で認識が異なると、後にトラブルにつながる可能性があります。葬儀費用の支出や香典の受領状況を記録し、必要に応じて関係者と確認しておくことが望ましいでしょう。

生活保護の受給権や公的年金に関する権利

生活保護を受ける権利

生活保護は、生活に困窮している人に対して、必要な保護を行う制度です。生活保護を受ける権利は本人に認められるものであり、相続によって家族がそのまま引き継げるものではありません。

例えば、父親が生活保護を受給していた場合でも、父親の死亡後に子どもが当然に同じ生活保護を受け続けられるわけではありません。残された家族が生活保護を必要とする場合には、世帯の状況などに応じて福祉事務所に確認する必要があります。

また、受給者が亡くなった後に、死亡後の期間に対応する生活保護費が誤って振り込まれた場合などには、返還が必要となることがあります。死亡後の振込金については、自己判断で使用せず、福祉事務所に確認することが重要です。

公的年金の受給権と未支給年金

老齢年金などの公的年金を受ける権利も、原則として受給者本人に帰属するため、死亡によって消滅します。ただし、死亡した時点でまだ支払われていない年金がある場合には、一定の遺族が「未支給年金」として請求できることがあります。

未支給年金を受け取ることができるのは、死亡した人と生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他の3親等内の親族で、法律上の優先順位に従って決まります。

未支給年金を受け取るためには所定の請求手続が必要となるため、年金事務所などに確認しましょう。また、一定の条件を満たす遺族には遺族年金が支給される場合がありますが、こちらも被相続人の年金受給権を相続するものではなく、遺族自身に認められる別の給付です。

この記事の監修者

行政書士法人クローバー法務事務所代表行政書士 大山悠太

監修者

行政書士法人クローバー法務事務所

代表行政書士

大山悠太

経歴

プロフィール
【経歴】
 
2016年4月:同志社大学法学部法律学科卒業後、新卒で不動産デベロッパーへ入社。入社後はマンション売買営業、人事部で新卒採用業務に従事。
 
2017年11月:行政書士試験合格
 
2019年5月:退職後、リンクス綜合法務行政書士オフィス開業
 
2023年1月:行政書士法人クローバー法務事務所へ法人化
 
【保有資格】
 
TOEIC745
 
宅地建物取引士
 
行政書士(申請取次)
 
ビジネス実務法務検定2級
 
【日本行政書士連合会登録番号】
第19261116号

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